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赤いシャツの女

 ある時、ソウルに旅したときのできごとです。母がそこそこ高齢なので、いつもは泊まらない高級なホテルに泊まることにしたのですが、そこの朝食がなんと6000円でした。6000円あれば、豪華な夕食が食べられというものです。で、朝食なしの素泊まりプランにしておきました。

 ところが、母が6000円の朝食を食べたいと言うのです。姉とパリに旅行に行ったときに、節約して朝食をホテルで食べなかったけれども、その後しばらくして姉が亡くなってしまったので、なぜあの時にホテルで朝食を食べなかったのかと激しく後悔したそうです。自分もいつまで生きられるかわからないから、高くてもなんでも食べておくというわけです。

 生まれて初めてものすごく高級な朝食を食べました。韓国料理はもちろん、和食も西洋料理も中華料理もなんでもありました。大満足で朝食会場を後にしたのですが、ちょうど入ってくるおかっぱ頭の年配の女性とすれちがいました。夏だというのに真っ赤なシャツに黒いジャケット黒いスカートをはいていたので、ものすごく目立っていました。後ろにだんなさんなのか、白人男性がついて歩いていました。やはり高級ホテルで高級な朝食を食べる人は違うなあ。セレブの人ってこうじゃなくちゃ。

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