花火に使われる酸化剤(燃やすもの)

花火は酸素がない雰囲気でも燃え続けます。

また、燃焼途中で水中に沈めても(注意深く、静かに行う)燃え続けることができます。これは、花火が酸化剤を含むためであり、固体成分中に燃やすための酸素が含まれています。酸化剤は花火の最も重要な原料です。

現在、用いられている酸化剤は主に硝酸カリウム、過塩素酸カリウム、および過塩素酸アンモニウムの3種類です。

硝酸カリウム(KNO3)は最も古くから用いられてきた酸化剤です。融点(334℃)が低いため、容易に着火します。しかし、燃焼温度が低いため、明るい炎色がでません。

歴史的には、塩素酸カリウム(KClO3)が硝酸カリウムの次に酸化剤として使われました。我が国に登場したのは、明治の初期です。塩素酸カリウムは燃焼温度が高く、明るい炎色を出すことができるため、盛んに用いられました。

しかし、その組成物は爆発感度が高く、偶発的な発火を起こしやすい。このため、数多くの爆発事故を起こしました。そして、平成4年に起きた茨城県の煙火工場の爆発事故を契機に、経済産業省では輸入製品も含めて使用しないよう指導しています。花火を実験的に作るというWeb企画で塩素酸カリウムを使った例が紹介されているのを見たことがありますが、上記の理由でお勧めしません。

過塩素酸カリウム(KClO4)は、現在、最も良く用いられている酸化剤です。融点(610℃)が高いため、その分、安全に取り扱うことができます。燃焼温度が高く、明るい炎色を出すことができます。

過塩素酸アンモニウム(NH4ClO4)も花火の酸化剤として使うことがありますが、爆発威力は過塩素酸カリウムよりも大きい。しかし、燃焼時にガス化するために煙を減らすことができるという長所があります。

この他、硝酸塩として、硝酸バリウムおよび硝酸ナトリウムが使われることもあります。

酸化鉛(Pb3O4、鉛丹)は少し前までは使われていたが、鉛の毒性が問題となり、今では使われていない。代替物質として酸化ビスマス(Bi2O3)が使われることがあります。

グリーン・パイロラント社長 工学博士
松永猛裕



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