ヘッジ会計
ヘッジ会計は、企業がリスク管理戦略の一環として行うデリバティブ取引を、財務諸表上でどのように処理するかを定めた会計手法です。会計基準によってヘッジ会計の適用方法は異なります。ここでは、いくつかの主要な会計基準(IFRS、US GAAP、および日本の会計基準)におけるヘッジ会計の要点と、それぞれのケーススタディを紹介します。
IFRS(国際財務報告基準)
IFRS 9「金融商品」は、ヘッジ会計を規定しています。
要点:
ヘッジ関係は正式に指定され、文書化されなければならない。
ヘッジの効果は、効果的であることが求められる。
ヘッジ会計の3つのタイプ:
公正価値ヘッジ
キャッシュフローヘッジ
ネット投資ヘッジ
ケーススタディ:
キャッシュフローヘッジの例:
企業Aは、2023年12月に予定される原材料の購入契約を結んでおり、その支払いは米ドルで行われる。
企業Aは、為替リスクをヘッジするために、2023年12月に満期が来るドル買いのフォワード契約を締結。
企業Aは、このフォワード契約をキャッシュフローヘッジとして指定し、文書化。
会計処理:
ヘッジ対象の取引が影響する損益と同時に、ヘッジ手段の公正価値変動をその他の包括利益に計上。
US GAAP(米国会計基準)
US GAAPのヘッジ会計は、ASC 815「デリバティブおよびヘッジ」に規定されています。
要点:
ヘッジ関係は文書化されなければならない。
ヘッジの有効性の評価が必要。
ヘッジ会計の3つのタイプ:
公正価値ヘッジ
キャッシュフローヘッジ
外貨ヘッジ
ケーススタディ:
公正価値ヘッジの例:
企業Bは、固定金利債務を負っており、金利リスクをヘッジするために、変動金利受取・固定金利支払の金利スワップを締結。
企業Bは、この金利スワップを公正価値ヘッジとして指定し、文書化。
会計処理:
ヘッジ対象の負債の帳簿価額を、公正価値変動を反映させて調整。
ヘッジ手段の公正価値変動を損益計算書に計上。
日本の会計基準
日本の会計基準では、金融商品会計基準および実務指針でヘッジ会計が規定されています。
要点:
ヘッジ対象とヘッジ手段の関係が明確にされ、文書化されることが必要。
ヘッジの有効性の評価が求められる。
ヘッジ会計の2つのタイプ:
繰延ヘッジ
特定ヘッジ
ケーススタディ:
繰延ヘッジの例:
企業Cは、1年後に予定される設備購入のために、外貨建ての支払いが発生する予定。
企業Cは、為替リスクをヘッジするために、1年後に満期が来るドル買いのフォワード契約を締結。
企業Cは、このフォワード契約を繰延ヘッジとして指定し、文書化。
会計処理:
ヘッジ手段の評価損益を繰延ヘッジ損益として計上し、支払いが発生した時点で費用として認識。
まとめ
ヘッジ会計の処理方法は会計基準ごとに異なりますが、共通するポイントとして、ヘッジ関係の文書化と有効性評価が必要です。具体的な会計処理はヘッジのタイプや企業のリスク管理戦略によって異なります。各基準に従ったケーススタディを通じて、実務でのヘッジ会計の適用方法を理解することが重要です。
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