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読書感想 「勇者殺しの花嫁1」




ネタバレなし感想


百合味の少ない、ガール・ミーツ・ガールのダークファンタジー作品でした!

この作品の良さは、なんと言っても世界観でしょう。
大切なものを奪われないために、命を奪い、潰す。
そんな理不尽な世界で行われる、異種族同士の正義のぶつけ合いは心にクるものがありました。

セリフの書き方が少し特徴的でしたが、それを抜きにしても良い作品だったと思います。

主人公はミッションをどうするのか、人間と魔王軍の争いは終わらないのか。
続刊が決まっているようで、とても楽しみです。

葵依幸先生、Enji先生、ありがとうございました。


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ネタバレあり感想


中々残酷な世界観でしたね。
人間が無力であるから生まれる非道さ。
神という虚構の存在を盾にして、自由に好き勝手振る舞う教会。
そして、本質的には同じはずなのに、違う種族であるが故に起こる悪意の連鎖。
ほとんど読んだことのないジャンルだったので、「これがダークファンタジーなのか……」と驚きました。


ヒロインの考え方が、本当に少しずつ変化していってるのが印象的でした。
神など存在しないことを理解していながらも、自分の保身のため、神の下僕として生きていた主人公が、勇者であるヒロインに触発されつつある様子がとても良かったです。

戦闘面では、個人の戦績が悪かったのが気になりましたけれど、サポート役として非常にいい動きをしていたと思います。
にしても、一応可憐な少女である主人公の武器が鈍器(経典)って笑


あと、私的にはカーム執行官をもっと見たいですね笑
あの、神を崇拝しているが故の最高にイカれた狂人っぷりがたまらなかったです。
果たして彼は、敵なのか味方なのか。
これこそ、全ては神のみぞ知る。


魔王軍が不憫で仕方がないですね、これ。
本当かどうか定かではありませんが、友好関係を築きたいと思っていた矢先に君主が暗殺され、そして部下や家族といった大事な者たちも続々と消えていって。
何もしていないというのに、平穏を壊された天牙将軍に同情せざるを得ませんでした。

人間から見たら、そもそものスペックの違う魔王軍は畏怖の対象であり、悪として滅ぼしたい存在である。
しかし、魔王軍から見てもまた、人間は恵まれた環境にいるにも関わらず、己の欲がために命を奪う悪の存在である。
「正義の反対は、もう一つの正義である」という言葉が自然と脳に浮かびました。


Enji先生のイラストも作風に合ってましたね。
挿絵の数が多くて嬉しかったです。
好きなイラストはp.261の戦闘中のワンシーンを描いたイラスト。
自分の身を顧みず、接近してシオンに術式を起動させたアリシアが微笑んでいるのが素敵でした。


人と魔族のこれから。そして、アリシアとシオンのこれから。
今後どうなってしまうのか、まだまだ気になる点は多いですね。
また、アリシアにもシオンにもさらなる秘密が隠されていそうで、続く2巻が楽しみです。
(個人的には、もっと2人を百合百合させてくれると嬉しかったり)


BGM

目黒将司「The Genesis」


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