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観測者SS番外編"DirtyWorker"その1

「ハァッ、ハァッ、クソッ!!なんでだよォ!!」
武装した警備兵が一目散に逃げてゆく
「なんで俺たちが『黒の傭兵』に狙われなきゃなんねぇんだよォォ!!」
「知るかッ!いいから別の部隊に合流するぞ!!」
3人の武装兵が味方がいるであろう場所に駆け込む
...が、そこにあったのは武装兵達の死体だった
「...オイオイ...嘘だろ...」
「残ってんのは俺たちだけなのかよ!?」
後ろから響く銃声 背後より接近する、灰色の髪、狐の獣人、黒い装甲を身に纏った傭兵がガンブレードで武装兵の1人を撃つ
「く、クソがァァァァ!!こっちに来るんじゃねェェェ!!!」
武装兵2人が軽機関銃で応戦するも、弾幕を掻い潜るかのように接近する黒の傭兵を止める事は叶わない
1人をガンブレードで斬り、もう1人をブレードを喉元目掛けて投げる
回転しながら勢いよく飛ぶブレードは、武装兵の首を跳ね飛ばす
「...俺たちが...何をしたって言うんだよ...」
息絶える寸前の武装兵がそう呟いた
「...お前達に恨みはない、だがお前達を恨んだ奴がいた
だから私が代わりに殺しに来た、それだけだ」
黒の傭兵がそう答える
かくして、戦闘はあっけなく終わった
「F、周囲の状況は?」
黒の傭兵が、自身の相棒である情報屋のFに通信を送る
「あいよ、スキャン完了っと...今の連中で最後だぜ」
「...なら、私らの仕事は終わりだな」
そう通信でやり取りすると、武装した企業のエージェント達が殺到してくる
「協力、感謝するぞ、黒の傭兵
非戦闘員の制圧は我々に任せておけ」
「ああ、元よりアンタらの仕事はそれだろ?私は戻る」
「報酬は今日中に送金されるだろう、ご苦労さん」
程なくして奥から聞こえてくる数発の銃声、怒号、悲鳴
何が行われているか想像に難くない
黒の傭兵は返り血を軽く拭うと、自らのアジトへと帰還していった

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惑星ヴィルーパ中層  セクター■■■■
街の一角にひっそりと佇む黒の傭兵と情報屋Fのアジト
個人営業の傭兵稼業
『DirtyWorker』"ダーティーワーカー"
金さえ払えばどんな依頼だってこなす
まさに汚れ仕事屋、と言った所だ
黒の傭兵は数多の戦場を渡り歩いた歴戦の傭兵
本名を知る者はおらず、いつしか付けられた二つ名がそのまま呼び名となっている
本名が知られぬ理由、それは彼女がかつての自分を許せないからであった
守るべき者を守れなかった過去と決別し、自分の名も捨てたのだ
一方、情報屋Fは類稀なるハッキング能力と独自の人脈を武器とする、所謂黒の傭兵のサポート役である
経歴、出身、その他諸々が謎に包まれている
何故、黒の傭兵と手を組んでいるのかさえも語られていない
情報収集能力も非常に高く、常にヴィルーパの情勢を網羅している
どうやってそんなに情報を集められるのかと聞くと、彼女は決まってドヤ顔で言い放つ
「知ってるから知ってるのさ、まあ私にだって知らないもの位ある
だからこそ、より多くを知りたくなるのさ」と

「しっかしよぉ、どいつもこいつも野心に溢れてばっかだなァ」
情報屋Fがコーヒーを淹れながらそう話す
「十三企業の連中の後釜を狙ってるかどうか知らねぇが、必死こいて潰し合ってやがる
...ま、そんな連中がいるからこそ、私らは飯にありつけるんだがね」
そういうと情報屋Fは、コーヒーにミルクと、これでもかという量の砂糖をぶち込む
「...F、相変わらずそんな変な飲み方するんだな」
「別にいいだろォ?どんなコーヒー飲んだってよォ」
「...もはや黒い砂糖水じゃねぇか、それ」
2人がそんなやり取りをしていると、ドアを叩く音が聞こえてくる
「はーいよ、今行くぜ」 情報屋Fがドアに向かった
ドアを開けるとそこには、頭に黒いビニール袋を被った男がいた
袋には半分づつ別々の不気味な笑顔が描かれていた
「...なんだそのナリは?何者だお前...」
「お初にお目にかかります、『スマイリー』が1人、『双面の男』でございます」
「...『スマイリー』ねぇ...悪いがオーパーツの押し売りは間に合ってるぜ」

スマイリー...「道具は人の為に使われてこそ、人々を笑顔にする為にある」を信条にオーパーツを蒐集、求める者に与える組織
その構成員の1人が、DirtyWorkerに訪ねて来たのだ
「押し売りだなんて心外ですねぇ、我々は求められているから差し出しているのですから」
「...で、何の用だ?」
「勿論、依頼を持ってきたのですよ」
「スマイリーが私らに依頼、ねぇ...嫌な予感しかしねぇな」
情報屋Fがスマイリーの男を応接間に通すと、早速依頼の話が始まった
「我々の同胞があるオーパーツを確保したのですが、ある連中に押収と称して奪われてしまったのです
アレを失うのは非常に悔やまれます...必ず必要とする者が居るはずですので」
スマイリーの話に、黒の傭兵が答える
「...要するにそのオーパーツを奪い返してこい、と?」
スマイリーの男が答える
「ええ、その通りです」
情報屋Fが顔をしかめながら続ける
「けどよぉ...アンタらはオーパーツを手に入れるんだったら手段は問わねぇんだよな?アンタらで取り返しに行かねぇのか?」
「我々もそうしたいのは山々なんですが、手が出せないのですよ
我々の同胞がいくら犠牲になろうと、取り返す事は叶わないでしょう」
「...だから、私らに依頼したって事か
んで、オーパーツを押収したってのは何処の組織だ?」
スマイリーの男が端末を取り出し、ある座標を見せた
「収容された位置は既に特定出来ています」
黒の傭兵と情報屋Fは、その座標を見て一瞬で察した
「...なあ、冗談だろ?」
「いいえ、彼らです、我々のオーパーツを奪ったのは」
示された座標は、ヴィルーパ下層

...観測者の保有する、オーパーツ保管庫であった

「手が出せない理由って...相手が観測者だからかよ...!?」


to be continued...

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