観測者SS番外編"Blackout"その2

--セカンドファンタジア--
ヴィルーパ上層に本社を構える企業の1つ
発掘、または買収したオーパーツを解析し、それらを元に技術を応用し様々な製品を開発する企業である
だが、ヴィルーパには似たような企業が複数存在する為、当然他企業との競合は避けられない
業績は決して悪くは無いものの頭一つ抜けるものが無い為、いまいち伸び悩んでいるのが現実であった
...なお、現在のヴィルーパでは無期限の業務停止状態にある
一般的には倒産したと言われているが、公式の発表は未だされていない為、真相は不明である

セカンドファンタジア ヴィジランテ詰所
「で、次のデカい仕事だが...新プロジェクトの発表会の会場警備だ
結構な規模だ、ここ最近下層のテロ集団の活動も活発化してるらしいから厳戒態勢を敷く必要がありそうだ」
ヴィジランテチームが、次の仕事の警備計画について話し合っていた
「んで、新プロジェクトってのは?確か下層に採掘基地兼オーパーツ研究施設を建てるって話だっけか?それも大規模の...」
チームの一員のメイソンが、同じくチームの一員のジョシュアに話しかける
「ああ、そうらしいな
それに、このプロジェクトの為に対象セクターの住民を強制退去させたって話だ
公には出てないが、これが警備を厳重にする理由らしい...下層民の反発が予測されるからな...全く、随分ド派手にやるもんだなぁウチの会社も...」
「そこまで必死になって上を目指す必要でもあんのか...?」
「社長もゆくゆくは十三連合の仲間入りを企んでたりするかもな...ん?なあヘンリック、その資料は?」
「ああ、発表会期間中のセーフハウスとして使うホテルの間取り図だ、こっちの警備も考えておかなきゃなと思ってな」
「確かにな...こりゃ外注の警備員も導入しねぇと足りねぇかもな...」
「まあこんなところか?当日までに必要な装備、備品を揃えるようにしなきゃな」
「あぁそうだグレイ、今日は企業十三連合結成の■■■周年記念で、どうやら『天蓋』が開くそうだ」
「ああ...それを私に言ったところで一体何に...」
その時、グレイの端末に通信が入る
「こちらグレイ...どうしたんだセバスチャン」
「ええ、フィオナお嬢様がまた屋敷を抜け出しまして...じいやの心配などよそ目に...またお嬢様を連れてきていただけないかと...」
「...了解、すぐ行く」
「お、いつもの仕事だなグレイ、行ってらっしゃい」
「ハイハイ...そうか、今日は天蓋が開く...だから...」

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ヴィルーパ上層 とある高台

「...まだかしら...」
青髪の少女は空を見る
屋敷の侍女達の噂話から、天蓋が開くという話を聞いてから、居ても立ってもいられなくなってしまったフィオナは、またいつものように屋敷を抜け出し、自分の知る中で最も見晴らしのいい高台に来ていた
「やっと...やっと『空』を...」
コツコツ、と足音が聞こえる
いつものように『お迎え』がやってきた
「今日はここか...空がよーく見えるだろうよ...」
「...見つかっちゃった...」
グレイの手にはホットココアの缶が二つ握られていた
「ほら、冷えるだろ?」
グレイがホットココアをフィオナに手渡す
「...連れてかないの?」
「見るんだろ?『空』をさ
セバスチャンには時間がかかるって言っておいたからさ」
「...ありがとう、グレイ」
フィオナがにっこりと微笑み、ホットココアをちびちびと飲み始める
「お、そろそろ始まるみたいだぞ」
「...!空が開いて...!わあ...!」
映し出された偽物の空が裂け、その奥の暗く冷たい空...本物の星空、『宇宙』が、そこには広がっていた
「わあ...見て見てグレイ!こんなにも綺麗だったのね...『空』って...!
あっちもこっちも...モニターの空よりもずっとキラキラしてて...」
「...正直、私には大して違いがわからんがな
そんなに変わるもんかぁ?」
「ぜーんぜん違うわよ!もう!ほら、どこ見ても同じ並びの星なんて無いし、その奥のほんの微かな光の星だって、目をよーく凝らせば見えるのよ!普段から空を見てない証拠ね、フフン♪」
「へー...言われてみりゃ確かに...綺麗、かもな...」
「でしょ?素敵ね...ずっと見れればいいのに...」
フィオナはじっと、星空に見とれている
目をキラキラと輝かせたフィオナを、グレイが隣で見守る
「ねぇ、グレイ」
「ん、どうした?」
「私ね、いつかあの空の向こうにね、行ってみたいの」
「空の向こう?宇宙にか?」
「ええ、きっと見た事の無い景色がたっくさんあると思うの!次はねー...地平線の彼方まで広がる、花の溢れる草原とか...」
「花畑ねぇ...この星じゃあ地平線まで伸びるくらいのは無いだろうしな...別の星に行かないとな...
...まさか1人で行く気じゃないだろうな?」
「さすがに行けないわよー、あのね、グレイ」
「なんだ?」
「...私をあの空の向こうに連れていって欲しいの」
「...私にか?」
「グレイはいつも私を見つけ出して連れて帰ってくれるし、こうやって一緒に空も見てくれるし、それに...私、知ってるもの、グレイが誰よりも優しいこと」
「やさ、しい...そ、そうか?そうなのか...」
「ええ、そうよ!きっとお父様もきっと許可してくれるはず!ね、いいわよね?」
「...ああ、連れて行ってやるさ
何処へでも行きたい所にさ」
「やったぁ!...グレイ、約束よ?」
「ああ、約束だ」
夜空の下、交わされたほんの小さな約束
ささやかだが、きっとそれはかけがえのないもの
確かに刻まれた、大切な約束だった
「...こりゃ旅費も2人分キッチリ稼いどかないとな...」
「ふふっ、楽しみにしておくわねっ」


to be continued...

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