観測者SS番外編"Blackout"

---これは、現在より数年前の
                            ヴィルーパの片隅の物語---

惑星ヴィルーパ 上層 
青髪の少女が空を見上げる
天蓋に映し出される偽の夜空を見て、ため息をつく
「...今日も見れないのね」
そんな少女に1人の人物が近寄る
灰色の髪に狐耳、帯刀した人物
少女は、何者かが近寄る事に気づきもせず、空を見つめている
「...またこんなところにいたのか、『フィオナ』」
「あら『グレイ』、またあなたが1番乗りね」
少女の名はフィオナ、上層企業の1つ、セカンドファンタジアの社長の娘である
灰色の髪の人物の名はグレイ、セカンドファンタジア所属のヴィジランテの1人だ
度々フィオナが屋敷から抜け出しては1人で空を見上げ、こうしてヴィジランテに連れ戻される
そんな日々を繰り返していた
「ったく...なんでそんな空ばっか見てんだ?屋敷からでも見れるだろ...?」
「いつも同じ窓から見る同じ空なんて飽きちゃったの、それにほら、ここからなら天蓋が開いた時に見える『本物の空』も綺麗に見えそうじゃない?」
「...とは言っても天蓋なんていつ開くかわかったモンじゃねぇだろ...?まあいい、さあ帰るぞ『お嬢様』」
「もう!お嬢様呼びはやめてって言ったじゃない!もー...」
フィオナを連れて戻るグレイ
ヴィジランテにしては平和な日常だ

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セカンドファンタジア本社 ヴィジランテ詰所
「お疲れさんグレイ、お嬢様のお気に入りは楽じゃないねぇ」
休憩していたヴィジランテのニックがグレイを茶化す
「お気に入りって...私は別にそんなんじゃないぞ...」
「前に何度か他の警備員やヴィジランテが向かってもなかなか連れ戻せないらしかったんでな、お気に入り以外の何者でもないだろ」
「そうかぁ...?」
「っと、通信が入った
こちらニック...はぁ?迷子ぉ?会社内でかぁ?」
「迷子だと?何かの間違いじゃないか?」
「...まあとにかく対処する...どういうこっちゃ...」
「待てニック、お前はまだ休憩中だろ?私が行ってくる」
「戻ってきたばっかなのに悪いなグレイ、今度奢るぞ」

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「確かこの辺りに居るって聞いたが...ホントに迷子なんて会社に...」
「びぇえええええええええん!!レオナァァァァ!!隊長ぉぉぉぉぉぉぉ!!どこ行っちゃったンスかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「...マジでいた」
ニックが受けた通信の通り、会社の敷地内に迷子がいた
「お、おい、大丈夫か?名前は?」
「グスッ...『アッシュ』...ッス...」
「アッシュ...か...他の連れは?」
「自分...『猟犬』ってとこの新入りで...オーパーツを届けに...グスッ...隊長と、レオナっていう同期と一緒に...うぅぅ...ここに来たッスけど...こんな広いとこ初めて来て...はしゃいでたら、気が付けば1人で...グスッ...」
「猟犬ね...確かに来客リストに入っているな...
こんな小さな奴も雇われ部隊の一員になってるなんてな...」
グレイは社内のフロント係に通信を入れる
「こちらグレイ、迷子を確保した
猟犬の連れの2人は今どこにいる?」
「はい、今猟犬のお二人もオーパーツの受け渡しを終えてちょうどこちらにいらっしゃいます」
「ならそこで待機するよう言ってくれ、今連れてくる」
「グスッ...見つかったんスか...?」
「ああ、ほら行くぞ」

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「アッシュ!!はぐれないようにってあれほど!!」
「レ"オ"ナ"ァァァァァァァ!!!!」
アッシュはレオナを見つけるやいなや駆け寄っていく
「いや済まない、うちの新入りがご迷惑を...」
「あんたが、猟犬の隊長さんで?」
「ああ、申し遅れた、私は猟犬の隊長『レイチェル』だ」
「私はここの会社に所属するヴィジランテのグレイだ
ところで1つ気になる事があるんだが...」
「おや、なんだろうか」
「どうしてあのような小さな連中を雇われ部隊の新入りに?」
「...ああ、彼らは元々、下層出身でな
私らが運搬していたオーパーツを盗み出そうとしていた
1度は出し抜かれてオーパーツを持ち逃げされたが、私が2人とも捕らえた
だが、この2人の身体能力は下層で腐らせておくにはあまりにも惜しかった
だから、うちに新入りとして雇ったって事さ」
「なるほどな、将来有望株ってことか」
「さて、私らはこれにて
グレイ、だったっけか?縁があればまた会おう」
「ああ、今度ははぐれないようにしてくれよ?」
レイチェルが2人を連れて去っていく
「ヴィジランテさーん!!ありがとうッスー!!!!」
アッシュが手をブンブンと振る
「ほーらアッシュ!はぐれないように手繋ぐよ!!ほら!!」
「あ、ちょ、レオナぁ!!引っ張らないでくれッスー!!」
遠ざかっていく3人の背中を、グレイは見送った
「...やれやれ...ま、今日も平和って事で...」

to be continued...

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