観測者SS番外編"DirtyWorker"その2

「観測者が脅威である事は、あなた方でもご存知でしょう?我々は武装集団ではないのですよ」
スマイリーの男はそう語った
「っつったってよぉ、いくらなんでも私らだって無敵って訳じゃねぇんだぜ?あんなの事実上不死身の軍隊じゃねぇか!」
情報屋Fが狼狽える 無理もない、相手はあの企業十三連合に名を連ねる観測者だ
個人が挑みかかっても到底敵うはずもない
「...まあ、一応詳しい依頼内容を聞いておこうか、まず、押収されたオーパーツってのはどんなやつだ?」
情報屋Fの話を聞いたスマイリーの男は端末の画面を切り替える
映っていた画像は、古びた王冠のような形をしたオーパーツだった
「登録名は『狂王の頭冠』、被った者の身体能力を飛躍的に上昇させますが、オーパーツに選ばれた者でないと狂ってしまう、そんな記録が残されてますね」
「...殆どいわく付きの品じゃねぇか、そりゃ押収されるわ...
まあ、もし依頼を受けるとなれば、このサイズなら運搬には困らねぇな」
情報屋Fが続けて話す
「次に、期限だ いつまで待てる?」
「我々の手に戻るのならいつまでも待ちましょう、早く手に戻る事に越したことはありませんがね」
「...なるほど、で、次だ  次がいちばん重要だ...」

「報酬はいくら出る?」
それを聞いたスマイリーの男は、傍らに置いてあったアタッシュケースを机の上に出し、中身を見せた
...中身は言わずもがな、ぎっしりと詰まった札束だ
「ざっと1000万はあります」
「よし乗った」
「おいF」
あまりの掌返しに黒の傭兵が制止に入る
「手に入るかもわからねぇ金の為に私を地獄に送るつもりか?」
「だってよォ~こんなに羽振りのいい客は久々じゃねぇかよォ~」
黒の傭兵がため息をつく
「あのなぁ...」
「まあ落ち着けって、こうなりゃ本気出して準備するしかなさそうだな」
「策はあるのか...?」
「まあな、任せとけって  天下の情報屋F様の本領発揮ってね!!」
スマイリーの男は依頼成立を喜ぶかのように話す
「素晴らしい!では、期待していますよ 御二方
必ず我々の元に狂王の頭冠を届けてくださいね」

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依頼を受けてから数日後
「...なあF、いくつか質問がある」
情報屋Fが忙しなくキーボートを打ちながら答える
「んー?なんだ?」
「まず1つ、ガレージにあったトラックはなんだ?」
「ああ、アレか  だいぶ古いヤツでスクラップにされる寸前だったから、格安で買ったのさ
元は貨物輸送用だったから、それなりのモンは運べるぜ」
「なるほどな、で、次だ
お前の傍にあるそのガラクタはなんだ?」
「ああ、コイツらか  ちょいと前の暴走アンドロイド殲滅の依頼の際に知り合いのツテがあってな、数機ほど鹵獲しておいて貰ったのさ
既に型落ちしたモンだが、戦闘できるように調整はしてある」
「ほう...で、最後にもう1つだ
...まさかこいつら全部、今回の依頼で使うんじゃないだろうな?」
情報屋Fがキーボートを叩く手を止め、渾身のドヤ顔をかましながら振り向く
「ご名答ッ!さっすが相棒、察しが早いなァ!!」
「...作戦の内容を話せ、不安になってきた」

情報屋Fが作戦の説明を始める
「まず、あのトラックは自動運転できるようプログラムを組んでおいた
観測者の保管庫近くを通るようにな
んで、保管庫近くまで来たらドカン!運んでたアンドロイド達が突然暴走するってワケだ」
「アンドロイドの兵隊達と一緒に観測者相手に戦争ごっこでもしろって事か?」
「いいや、奴らはあくまで陽動だ
保管庫の連中がアンドロイドの対応に追われてる隙に内部に侵入、オーパーツをかっさらってトンズラ!って感じだ
内部のセキュリティに関してはいつも通り私が対処するから安心しな」
そう言うと情報屋Fは懐から何かの装置を取り出す
「んで、コイツが今回の目玉商品、ステルスクロークだ
コイツを起動すると熱光学迷彩によって姿が消える
聞いた通り"熱光学迷彩"だ、熱まで遮断する優れ物だ
まあ、欠点があるとすればバッテリーの容量と消費電力が全然釣り合ってないらしくて30秒程度しか使えん
...あと結構高かったんだぞ」
「コイツで誰にも気付かれず素早く侵入しろと、なんというか、作戦と言えば聞こえはいいが、要するに火事場泥棒みたいなもんじゃねぇか」
「ああそうだが?何なら作戦名は『火事場泥棒作戦』にでもしようか?」
「...まあ、連中と真正面から戦うハメにならないなら上等な作戦だな」
「だろ?準備は順調だ、2日後には決行できるぜ」
「ああ、私も万が一に備えて武器は万全の状態にしておこう...」

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数日後 ヴィルーパ下層 セクター■■■■
観測者 オーパーツ保管庫付近

「て、敵襲だぁぁぁ!!」
「なんだこのアンドロイド、突然出てきやがった!」
「執行部への連絡急げ!!戦闘が可能な者は加勢しろ!!」
情報屋Fの作戦通り、暴走したアンドロイドは保管庫周辺で警備の局員達と戦闘を開始していた
「...っと、ここまでは順調だな、相棒」
「ああ、もうすぐ内部も手薄になる頃合だろう」
「頼むぜ相棒、こっからはアンタに懸かってる」
「任せろF、ステルスクローク起動」
黒の傭兵の姿が一瞬にして消える
「...作戦開始」


to be continued...

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