終わりに演出からの挨拶

昨日、3カ月の稽古期間を経た戯曲「喫茶 サンセットビレッジ -Once upon a coffee time -」の本番が終わりました。

まずは今回の本番を一緒に見届けてくださった方、本番は見れなくても気にかけてくださった方、ありがとうございました。
初めて人前で演技をする人や、配信で公演をするという今までとは違う環境の中で、舞台の幕が下りるまで全員がしっかり立ち続けられたのは、反応してくださるあなたが確かにそこにいてくださったからにほかありません。
あらためて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

お芝居を作る時はいつも、どこかの、誰かの切実に触れられたらいいなと思っています。
その人が持つ、その人の芯となる部分。
そこに触れられて初めて、人は今の自分の形を知ることができる。
「今の自分はこう思っていて、こんなことを感じたのか」
それを誰かに共有したりして、人との違いを知ることができる。

そういう波紋が生まれたらいいなと思いながら、作品を作ってきました。

でも困ったことに、誰かの切実に触れるのはなかなか大変なんですよね。
ちょっとでも「知ったようなふり」をすると、誰の切実にも届きません。
薄っぺらい、嘘くさい、「あ~よかったねめでたしめでたし」で終わるような、そんなお話しか出てこない。

だから、作品を描くときは、僕自身の切実にいつも手を突っ込みます。
これが結構しんどいんです。
今の自分を作ってきた過去の色んな事に対して今どう思うかをひたすら対話し続ける作業。
でもしかたない。僕はこれしか方法を知りません。
そうやってずっと、誰かの切実と話をしてきましたから。

そして今回の作品にも、そういう切実が詰め込まれています。
出演した役者の皆さんの、スタッフとしてかかわってくれた人の、そしてこの作品を観劇してくれた人の。
いろいろな人の、どこかの切実に触れ、なにかの波紋が生まれていたらいいな。
そんなことをぼんやり思いながら、本番が終わった今、一人で酒を呑んでいます。

余韻に浸るのも悪くないですが、僕は演劇人です。
舞台の幕が下りれば、また次の幕開けを迎えに生きます。

ちなみに僕は今、とてもとても長いお話を書いています。
自分達の切実に体ごと突っ込んでいくような、そんなお話。

さぁ、皆さんはどうしますか。
昨日とは違う日常の中で、あなたの切実はどう輝きますか。

いつか、何かの形になって、僕がそれと出会えることを。

とてもとても楽しみにしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?