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模倣と創造の間

先日東京銀座の蔦屋書店で行われたAKI INOMATAさんの作品集『生きものと私が出会うとき』出版記念のトークショーに参加して来ました。対談の相手は港千尋さん。

INOMATAさんは、生き物との協同作品で有名な現代アーティストで、これまでにもヤドカリやインコ、犬、タコ、ビーバーなどと作品を創ってきていますが、今回の作品集でそれらがすべて紹介されています。

湊さんの話で面白かったのは、洞窟壁画がクマの引っ掻いた跡を人間が何かに見立てて模倣したのが、始まりではという点です。これはINOMATAさんのビーバーとの協同作品から話が拡がったのですが、INOMATAさんのビーバーの作品では、ビーバーが作った彫刻?作品を人間がそのまま模倣して彫刻作品ができるというものです。ここでの共通点として、湊さんは人間の創造は模倣から始まったのではないかと言われていました。

このビーバーの作品に限らず、INOMATAさんの作品は、共同制作している生きもの達から、逆に人間に色々教えてくれる作品が多いです。例えばヤドカリの作品。いくつかシリーズがありますが、ヤドカリが世界のいろいろな都市のやどを背負うBorderシリーズでは、ヤドカリは、国を越境していくイメージですが、背負うやどによって、ヤドカリのイメージが変わるので、あたかも越境することで、アイデンティティが変わるかのように見えます。人も国境というか、住む場所を変えることで、その場所との関係性から新しいアイデンティティを得ることがあるのか?そもそもアイデンティティはやど(住む場所)を変えることで変わるのか?とか色々考えさせられます。一方、アンモナイトの殻にタコが入る映像作品(Think Evolution #1 )では、タコは遠い祖先であるアンモナイトの殻に入っていくんですが、進化の過程で、タコは殻を捨ててその知性に生存を賭けたわけで、人も人生の転機には何か殻を捨てて、新しい挑戦をしなければということを考えさせてくれたりします。こんな考えは作者の意図とは違うかもしれませんが、作者の意図を超えて色々考えさせてくれることが、作品の豊饒さを表しているのではと思ったりもします。

ちょっと話がトークショーからずれましたが、トークショーの質問コーナーで、失敗談について聞かれたINOMATAさんは、インコの作品を例に出して、インコをフランス語のレッスンに連れて行っても初めは半分寝ていたりで、全然学ぼうとせず、一度諦めかけてたが、続けていくと急にしゃべりだして、良くしらべるとインコにも幼児と同じように学習期間があって、その間はただ聴いていて、咀嚼している時間があることがわかったという話は、作品集に載っていなくて面白かったです。そんなメイキングの際の話をいつか纏めて話を聞くか、読みたいと思ったのは私だけでしょうか。

話を模倣と創造という点に戻すと、ミノムシの作品が一番面白くて、この作品はミノムシにファッションブランドの服の切れ端を与えて、ミノムシにミノをコーディネートさせるという作品ですが、逆にデザイナーがミノムシのコーディネートからインスピレーションを得て、服を作るというようなことが起これば面白いと思ったりもしました。INOMATAさんの作品集からインスピレーションを得て、色々なクリエイター達が新たな創造をしていくということになっていけば面白いなと思います。

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