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金沢ライフマップ Vol.29『まちのり-レンタル自転車でめぐる金沢』

ライター:3号(ゲームデザイナー)

「金沢ライフマップ」では金沢のゲームメーカー・グランゼーラ(自称:グランゼーラ革命軍)が、グランゼーラならではの解釈と切り口で、石川県の良さや金沢での生活の魅力を不定期で紹介しています。

過去の記事はWebサイト・金沢ライフマップ↓にて

今回の金沢ライフマップ第29号は、「まちのり-レンタル自転車でめぐる金沢」です。

主役は自転車。これは、和歌山県からグランゼーラのある石川県にやってきたばかりの新入社員・3号氏が金沢を走破(?)する物語。


プロローグ 犀川さいがわのほとりにて

私は悩んでいた。平日の昼間から何をしているんだ、と。
入隊一年目、同期は早々にして大きな任務「金沢ライフマップ」を任されていた。一方私はというと…。

平和な金沢を流れる犀川。流れは非常に穏やかだが、気のせいか少し淀んで見えてしまう。

平和な金沢を自転車で見回っているだけだった。これでは、のんびりサイクリングしているだけになってしまう。そんなある日のことだった。

「お兄ちゃん、もしかして”カクメイグン”の人?」

目をキラキラさせた少年が横に座っていた。いつの間に…
「僕、大人になったら”カクメイグン”に入って、金沢を守るんだ!」

その一言にハッとした。私もかつて、少年のように憧れを持ち、高い志を抱いて入隊したはずだった。見回りだって重要な任務じゃないか!

大切なことを思い出させてくれた少年に、見回りの仕事をみせてあげよう。これもきっと任務のひとつだ。ただ、見回りルートは極秘であるため、かわりに金沢の自転車散策ルートを伝授しよう!

便利な移動手段「まちのり」

「なんだ、自転車持ってないし関係ないか」と思ったそこの諸君!バスの時間を確認するのは少し待っていただきたい。
金沢には「まちのり」という公共シェアサイクルサービスがあり、電動アシスト自転車をレンタルすることができる。自転車を持っていない人でも散策ができるということだ。冒頭の自転車もレンタルしたものである。

おしゃれなデザインで写真映えも良い。 金沢市公共シェアサイクル「まちのり」 より

"誰でも気軽に利用できる公共シェアサイクル「まちのり」"と紹介されている通り、街中にあるサイクルポートのどこからでも借りられて、どこへでも返せるというサービスだ。

「まちのり」サイクルポート設置箇所 「まちのり」公式サイト より

金沢を網羅!?張り巡らされたサイクルポート

移動の要となるサイクルポートだが、2023年6月現在で76箇所も設置されている。金沢駅前や兼六園といった観光エリアはもちろん、県庁や図書館など、生活するうえで利用する施設周辺にも設置されている。

市民に自転車に乗ってもらい、運動不足を解消させるという金沢市の策略だろうか。

目指せ、金沢走破!

さて、自転車もレンタルできたところで、お待ちかねのサイクリングの時間だ!大きく分けて、西側エリア、東側エリア、港エリアの3つを順番に紹介しよう。サイクルポートも近くにあるので、気軽に散策できるぞ!

紹介にあたって今回レンタルしたのは、まちのり事務局で貸出、返却を行うタイプのものだ。1000円で一日(9:00~18:00)借りることができ、4時間以内の利用であれば700円となる。エリア紹介を行うので長引くと予想し、各エリア全て1000円で借りたのだが、実際はどのエリアも4時間以内に返却することとなった。(金額は2023/06時点のものです)

乗る前は、4時間なんて短すぎる!と思ったものの、町中は信号なども多いので疲れが溜まりやすい。2~3時間程度に留めておくのが良いと感じた。

記事冒頭では「伝授しよう!」と言ったものの、実際は初めて訪れる場所が大半だったので、それぞれのエリアで気になったところを順に紹介していこう。それでは出発だ!

西エリア ~寺院の並ぶ閑静なまち~

「静音の小径(しずねのこみち)」と呼ばれる、寺院めぐりルートの一角。車では入れないような、細い裏路地へ入っていく瞬間が一番わくわくするのではないだろうか?

まずは西エリア、金沢駅から自転車で15分ほど、犀川を渡った先に寺院群が広がるエリアだ。
このあたりは町に溶け込むように寺院が並んでおり、その数なんと60以上。寺町という名前が付くのも納得できる。

「寺院群」と聞いて自転車で走れるのか?と疑問に思ったが、問題なく走ることができた。中に立ち入る際は自転車を降りて参拝しよう。

こちらも「静音の小径」の一角。生活感のある下町に寺院がうまく溶け込んでいるのか、はたまた寺院群に下町が馴染んでいるのだろうか?

静音の小径しずねのこみち」以外にも気になるスポットがありそうなので、ルートからそれて走っていたところ、大通り沿いに「寺町鐘声園てらまちしょうせいえん」という小さな庭園を見つけた。

どうやら自由に入れるみたいだったので、ここで一休みといこう。

「ご自由にお立ち入りください」とは書かれているが、ごめん下さいと言わんばかりに周りを確認しながら入っていく。
入ってしまえばこっちのもので、中には庭園と休憩所があった。小さいながらも本格的な庭園で、しっかりと手入れが行き届いているようだ。

実はここ寺町は小高い丘になっており、犀川や香林坊を一望できる場所があるのではないか?と考えていた。しかし、大きな建物や木々も多く、そう簡単にいい場所は見つからなかった。

そんな中見つけた「寺町5丁目緑地」。小さな公園だが、写真中央にある東屋あずまやの奥がひらけているように見えたので、もしかしたら!と思い、進んでみることに。

この日は平日であったため貸し切り状態だ。ふとここから見て、東屋の奥がひらけていることに気付く。
向かってみると、そこは視界を遮るもののない見晴らしの良いスペースで、ここから犀川や香林坊を見渡すことができたのだ!見回り任務でも役に立つこと間違いなし!

すっきりした青空のもと、見たかった景色を無事見ることができた。この調子で残りのエリアも散策しようと思う。それでは次のエリアへ出発だ!

東エリア ~歴史を感じる山麓のまち~

休日は観光客でにぎわう「ひがし茶屋街」。観光用に造られた町という感じはせず、当時の建物がそのまま残っているといった印象だ。

続いては東エリア。金沢駅から自転車でおよそ10分、浅野川を渡った先にある「ひがし茶屋街」を主体とするエリアだ。近代的な中心街とはうってかわって、歴史的な風情を感じる街並みが広がっている。
時には自転車を押して、ゆっくり歩いてみるのもいいかもしれない。

川沿いの通り道。左右で景色が違うので、行きと帰りの両方で楽しむことができる。

建物が今もなお残っているのは、大きな災禍に見舞われることなく今日まで平和に過ごせたからであろう。きっと我々の大先輩たちが身を挺して金沢を守ってきたからに違いない。

こうして最新の自転車で、昔ながらの町を走れること自体がすごいことなのかもしれない。

浅野川にかかる「梅ノ橋」。少し古びた感じだが、それも町並みと調和している。自転車でも渡れる丈夫な橋なので、安心して渡ることができる。
「ひがし茶屋街」の一角。ゆっくり進むもよし、一気に駆け抜けるもよし、自転車なら好きな速さで進むことができる。

茶屋街から少し離れると寺院群がみられる。先ほどの寺町とは違い、より下町らしさがある印象だ。複雑に入り組んだ町並みを走るのが好きな私のような人には、こちらをおすすめしたい。

町の一角にたたずむ「西養寺」。周りの家々より高い位置にあるように見える。ということは…
門の前までお邪魔して景色を眺めてみたところ、金沢駅のある方向を見渡すことができた。手前の電柱が、ノスタルジックな景観をより際立たせているのだろう。

東エリアも、西エリアと同じく寺院が並ぶ町並みではあるが、それぞれ景観が異なりどちらも魅力的であった。それでは3つ目のエリアへ向かうとしよう。

港エリア ~日本海を臨む港町~

金沢港で運よく大型客船を見ることができ、ここへ来るまでの疲れも一気に吹き飛んだ。自転車を降りて道なりに進むと、もっと近くで船を見ることができるぞ!

金沢駅から自転車で30分ほどと、少し遠い位置にある「金沢港」。海、船、そして港と見どころも多く、潮風にふかれてのサイクリングは夏の暑さも忘れられるほど心地よいものなので、ぜひ一度は訪れてみてほしい。

海と並走できる道を発見できた。ここを走るために来たといっても過言ではない。

船も見られて、海沿いも走ることができて十分満足なのだが、ここまで来たのであれば日本海を一望できる場所を見つけたい。

地図も確認しつつ、海岸のほうへと漕ぎ進めることにした。

港の端にある、釣りができるエリア。海は見えているが、日本海を見渡せるようなところへ行きたいと感じたため、別の場所をさがすことに。
港から少し離れた海岸沿いの道路。すぐ右に海があるのに、なかなか見せてくれない。どうやらこの辺りは海岸の整備が行われているらしい。

しばらく走ってみたものの…

海が見たい!!

理想の海が見られないまま数十分、最後に立ち寄ったのは「かないわ海浜広場」。海沿いにある大きな広場で、この日は少年野球やサッカーの練習が行われていた。

散策当日は7月だが、とはいえとても暑く、体力的にもこれ以上の散策はやや危険といったところだ。そこでこの広場に最後の望みをかけることにした。

広場から限界まで進んでみたが、海岸は立ち入り禁止となっており、これ以上近づくことは出来なかった。理想の海は見られなかった。何事もうまくいくとは限らないのを身に染みて感じることとなった。

広場から見た海岸。どうやらここは護岸工事が行われるらしく、立ち入り禁止となっている。もちろん人の気配もない。

とぼとぼ自転車のもとへ戻る途中、立っている看板に「見晴し台」の文字を見つけた。疲れからなのか、半ば気乗りしないが向かってみることに…。

「見晴し台」が示していたあたりまで来ると、なにやらそれっぽい道が用意されていた。
登ってみると、いかにも見晴しが良さそうな所だ。ところで、左側に見えているのはもしかして…


大きく広がる日本海!!

そう!これが見たかったのだ!澄みわたる空と海、どこまでも続く水平線!
手前がやや殺風景だが、ここまで来られたのなら些細な問題だろう。

こうして金沢の散策は幕を閉じたのであった。他にも魅力的な場所はたくさんあるので、皆もぜひとも金沢の町を散策してみて欲しい。

自転車といえば河川敷!

金沢を悠々と流れる犀川。どのような魅力があるのかが楽しみだ。

さて、これで記事を終わっても問題なさそうなのだが、何を隠そうこの私、「河川敷マスター」を自称する者として、犀川を紹介しない訳にはいかない。そうと決まればすぐ出発だ!

犀川は石川県が指定する二級河川である。この二級や一級というのは、川の大きさで分けられている訳ではない。国が指定したものが一級、都道府県が指定したものが二級となり、どちらも公共の利害に重要な河川であることに変わりはない。

さっそく気になったのが犀川に架かるこちらの「上菊橋かみきくばし」。歩道に花壇があるおしゃれな橋だ。橋を渡ろうとしたその時、

"上菊"といいながら菊の花が無いんじゃないか?

心の悪魔がふとささやいた。こうなった以上は仕方がないので、花壇を見てみることにしよう。

川にかかる橋も川の魅力といえるだろう。なお、下流へ行くと「下菊橋」もある。
菊と思われる花を発見。すかさず画像検索で確認してみることに。一度は「センジュギク」と表示され安心するも…

なんとこの花、画像検索で調べてみると映し方によって「センジュギク」「マリーゴールド」と表記がコロコロと変わってしまう。このままでは「上菊橋」改め「上マリーゴールド橋」になってしまうかもしれない!

その後改めて調べたところこの花、英名を「アフリカンマリーゴールド」、和名を「センジュギク」といいどちらも正しいのだそうだ。ややこしい内容だったが、ひとまず「上菊橋」を守ることができて良かった。


河川敷にポツンと立っている木々。何か隠されているような気がしてならないのは私だけだろうか?
カモが泳ぐ姿も見ることができた。炎天下で暑いのは皆同じということだろう。
カモのように川に飛び込む訳にはいかなかったので、代わりに木陰で休むことに。建物の影より木陰のほうが涼しく感じるのは、風鈴と同じく風の音を感じ取れるからだろうか?

下流へ向かう途中に「わんぱく昆虫王国」というエリアがあった。草木の一部を刈り、迷路のようなつくりになっている。小さい子供の目線(右側写真)だと本当に迷路のようだ。

実際は大人のひざ上くらいの背丈程度だが…
目線を下げてみると、それこそ迷路のようだ。草木をかき分け、野山を駆け回った少年時代を思い出させてくれる風景だ。


そうして下流へ差しかかり、川幅が広くなってきたところでふと見渡すと…

川が、無くなってる!?

なんと川が無くなっているではないか!?いやいやここは冷静になろう。確かに私は犀川を下ってきた。この方向に川が見えるはずなのだ。

よく見ると、中央やや右上にうっすらと川が見える。犀川は無事だった!

この写真のように、何気ないところで意外な景色が見られるのも、自転車散策の醍醐味といえるだろう。

エピローグ やっぱり犀川のほとりにて

少年と出会ってから数週間が経ったが、私は特に変わらず見回りを続けていた。しかし、一つ変化があった。少年との一幕がライフマップの記事として掲載されることとなった。きっと街の人は見ていてくれたのだろう。

諸君がこの記事を読んでいる今も、私は金沢の街を自転車で走っていることだろう。

まちのり - 金沢公共シェアサイクル https://www.machi-nori.jp/ 

過去の記事はWebサイト・金沢ライフマップ↓にて

 

<企画・制作・文責>3号
<撮影>3号
<サイトデザイン>2J、しょう、はし
<キャラクターデザイン>ザシャ
<監修>よしぞう、菅次郎、ヒラ、ネコスケ
<校正・広報>まゆみん、アーリー
<発行者>九条
<参考文献>
パンフレット:静音の小径 寺町寺院群  金沢市観光政策課
https://digilib.city.kanazawa.ishikawa.jp/doc/116/

パンフレット:心の道 卯辰山山麓寺院群  金沢市観光政策課
https://digilib.city.kanazawa.ishikawa.jp/doc/115/

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