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ローリン・ヒル入門


音楽界の伝説、ローリン・ヒルについて詳しくお話しします。ローリン・ヒルはやたらと名前は聞くものの何者か分かっていない人が多い気がします。最近アップルミュージックが選んだ名盤ランキングではファーストアルバムが一位を獲得しました。この機会にローリン・ヒルをもっと知ってほしいです。


1. 初期のキャリアとフージーズ時代

ローリン・ノエル・ヒルは1975年5月26日にニュージャージー州サウスオレンジで生まれました。幼少期から音楽に囲まれた環境で育ち、13歳でアポロシアターでパフォーマンスを行いました。高校時代にプラカズレル「プラス」ミシェルとワイクリフ・ジョンに出会い、フージーズを結成。最初はTranzlator Crewという名前で活動し、地元のクラブで演奏していました。1993年、Columbia Universityに進学しましたが、音楽の道を追求するために1年で中退しました。

フージーズは1994年にデビューアルバム『Blunted on Reality』をリリースしましたが、商業的には成功しませんでした。しかし、彼らのセカンドアルバム『The Score』は1996年にリリースされ、大ヒットを記録しました。このアルバムは特に「Killing Me Softly」が注目を浴び、フージーズを世界的なスターに押し上げました。具体的には以下のようなポイントがあります。

アルバム『Blunted on Reality』

  • リリース日: 1994年2月1日

  • プロデューサー: Ronald "Khalis" Bell, Kool & The Gangなど

  • セールス: アメリカ国内で約12万枚の売り上げ

  • 評価: 批評家からの評価はまちまちで、特にプロダクションの質については賛否が分かれましたが、メンバーの才能は評価されました。

アルバム『The Score』

  • リリース日: 1996年2月13日

  • プロデューサー: フージーズ(ローリン・ヒル、プラカズレル、ワイクリフ・ジョン)、Jerry Duplessis、ダイアモンドDなど

  • セールス: 全世界で1700万枚以上の売り上げを記録。アメリカでは7×プラチナに認定され、ビルボード200で1位を獲得。

  • 評価: 批評家からの絶賛を受け、多くのメディアで「ベストアルバム」に選ばれました。グラミー賞では「最優秀ラップアルバム」を受賞し、さらに「Killing Me Softly」で「最優秀R&Bパフォーマンス・デュオ/グループ賞」を獲得。


収録曲の特徴

  • 「Killing Me Softly」: ロバータ・フラックの同名曲をカバーし、ローリン・ヒルの感情豊かなボーカルが際立つこの曲は、フージーズの代表曲となりました。シングルとしてリリースされ、世界中でチャートのトップに立ちました。

  • 「Ready or Not」: エンヤの曲「Boadicea」をサンプリングしたこの曲は、独特の雰囲気と力強いリリックで、フージーズの創造力を示しています。

  • 「Fu-Gee-La」: アルバムの先行シングルで、スリリングなビートとキャッチーなフックが特徴。成功の一因となりました。


2. ソロキャリアの始まり

1998年、ローリン・ヒルはデビューソロアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』をリリースしました。このアルバムはヒップホップ、ソウル、R&Bを融合させた革新的な作品で、批評家から絶賛され、商業的にも大成功を収めました。リードシングル「Doo Wop (That Thing)」はビルボードホット100で1位を獲得し、グラミー賞で史上初の5部門を受賞しました。


3. 『The Miseducation of Lauryn Hill』による革命

アルバム全体を通して、ヒルは愛、自己発見、女性のエンパワーメントといったテーマを深く掘り下げています。以下は、アルバムの代表的な曲とその内容についての詳細です。

  • 「Doo Wop (That Thing)」: 女性の自尊心と自己価値をテーマにした曲。ヒップホップとソウルの融合が特徴です。

  • 「Ex-Factor」: 別れの痛みと自己発見の旅を描いた曲。多くのリスナーにとって感情的な共感を呼び起こす一曲となっています。

  • 「To Zion」: 息子を妊娠した時の心情を描いた曲で、母親としての道を選んだことを歌っています。

  • 「Everything Is Everything」: 社会的な不正義と自己の成長について語り、彼女の社会的意識と個人的な成長の両方を反映しています。

  • 「Lost Ones」: 元フージーズのメンバーであったワイクリフ・ジョンとの関係に言及し、彼の裏切りを批判しています。

  • 「Final Hour」: 聖書の詩篇73篇を引用し、金銭や権力に溺れる人々への警告を発しています。

4. 盗作疑惑

『The Miseducation of Lauryn Hill』はその革新的な音楽スタイルと深いメッセージで称賛されましたが、同時に盗作疑惑にも見舞われました。ニューアーク出身のミュージシャンたちが、彼らの貢献が適切にクレジットされていないとしてヒルを訴えました。この訴訟は2001年に和解し、ヒルは彼らに支払いを行うことになりました。

5. 女性アーティストへの影響

ローリン・ヒルは、特に女性アーティストに対して絶大な影響力を持っています。彼女の音楽とメッセージは、多くの女性アーティストにインスピレーションを与え、彼女らが自身の声を見つけ、自己表現を追求する手助けをしてきました。ヒルの成功は、女性アーティストが音楽業界で成功するための道を切り開きました。

6. セカンドアルバムの制作と精神的な苦悩

『The Miseducation of Lauryn Hill』の成功後、ローリン・ヒルはセカンドアルバムの制作に取り掛かりましたが、精神的なプレッシャーと自身の完璧主義が重なり、制作は難航しました。彼女は音楽業界のプレッシャーや個人的な問題から、精神的に不安定な状態に陥り、一時期はメディアからも遠ざかりました。この間、彼女はスピリチュアルな探求と自己発見に没頭しました。

7. 近年の活動

その後もローリン・ヒルは時折ライブパフォーマンスを行い、2013年には脱税の罪で短期間服役しましたが、その後も音楽活動を続けています。2023年には、フージーズと再結成し、グローバルシチズンフェスティバルでパフォーマンスを行いました。


ローリン・ヒルは、その独自の音楽スタイルと深いメッセージで、今も多くの人々に影響を与え続けています。でもできることならセカンド・アルバムも聴いてみたい気がします。まあとりあえず『The Miseducation of Lauryn Hill』から聞いておけば間違いないと思います。


参考文献




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