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幸せのレンタルおじさんです。デザインで人を幸せに。


こんにちは辻野です。
デザインの世界で長く仕事をしていると、当たり前に思っている事が他業種の方々からは重宝される情報だったり、発見だったりするお話や気づきをお伝えしていきたいと思っています。

今回は私が趣味で行っている「幸せのレンタルおじさん」というサービスでの出来事をnoteにまとめようかと思います。

幸せのレンタルおじさん

https://xn--t8jwa5bzm5hvjf0d.com/hp/archives/9632
は日本全国からおじさんたちが登録されており1時間1000円の報酬でおじさんの得意な分野の能力や人生経験からくるアドバイスなどで世の中の困っている方たちを幸せにするサービスです。

私は当然デザインのお話で人助けをする事が多いのですが、業界ではない人等と我々では少し認識にズレがある事に気づいたので、体験談からお話を共有できればと思います。


1人目の依頼者:某ネット通販化粧品会社の広報担当の方

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銀座でお会いしたその方は最近デザインに興味を持ち、自分でもWEBデザインを少し勉強して一通り見た目はデザインができるようになったとの事。webなどで開催されているデザインコンペなどで自分のデザインで仕事を獲得したいのだがいっこうに選ばれないのは何故なのか?もしデザインのスキルでコツのようなものが有るなら教えて欲しい。というようなご依頼でした。

この話をお伺いした時、この方はアプリケーションの習得スキルや技術的な事を聞きたいのだなと理解したのですが、本質的に課題の解決にならないだろうと思い、まずは自分たちが今までやって来た色々な仕事をもとにデザインとは表面上の美しさだけではなく、アイデアや企画のもとに表現として昇華する事によって人を感動させたり喜ばせるものになるということをお話しさせていただきました。

技術的な事や表面上のデザインテイストの引き出しをたくさん持つことは、デザイナーとして非常に重要なことなのですが、その先にある見る人への配慮や課題を解決するための、企画やアイデアの上にそれらのデザインが、うまくマッチしないといつまで経っても練習の様な作業になってしまいます。デザインのコンペであれば尚のこと見た目だけではなく、課題をクリアできる企画とデザインアイデアが必要になって来るのです。

我々はデザインの競合コンペで仕事をとる事も多いので、人と同じ事をやっても勝てないという事が体に染み付いているので、アイデアを絞り出す作業に一番時間をかけるのですが、その様な事は業界の人以外ではあまり知られていない事実なのかも知れないなと感じました。


デザインが広告やブランディングの一環として使われる以上商材が売れなければ話になりません。アイデアの出し方としては課題を見つける事から始めるのが良いかと思うので、クライアントの課題を抽出しその商品が最も幸せに選ばれるストーリーをイメージして仮説を立ててデザインに取り組んでみてくださいとお伝えしたら、まるで占い師の方に話を聞いた後みたいに目の前が明るくなりましたと喜んでおられました。


2人目の依頼者:弁護士を夫にもつ御婦人

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その方は非常に気さくで話しやすい方でした。自己紹介をしてしばらくお話ししていると、今回の依頼内容を少し恥ずかしそうに話始められました。その方がおっしゃるには昔海外で生活していた時に趣味でやっていたシャドーボックスアートをもう一度始めようかと思っているのだが、既存の写真や風景の模写では満足できないので、デザイン的な要素でシャドーボックスアートを作りたいのだが、オリジナルで描いた絵を見て欲しいと言う内容でした。


シャドーボックスアートとは箱庭の様な額の中にミルフィーユのように幾層ものレイヤーを作ってモチーフを描いていくといったアートで、箱の中に落ちる陰影によって表情や立体感や奥行きなども変わる非常によく出来たアートです。


モチーフが立体的に見えるので写実的な表現をする方がシャドーボックスアートの特徴が出しやすい様に思うのですが依頼者の方はそこに平面的でグラフィカルな物で作品作りを試したい様でした。風景写真を見たまま写したのではつまらないから一度デザイン的に加工したモチーフで、シャドーボックスアートに昇華するといった行為は非常に良いことだと思ったので、一緒にどの様な表現が素敵になりそうかPinterestなどを一緒に見ながら検討していきました。


依頼者が言うにはデッサンや色彩の絵の勉強をしていたわけではないので、描いた絵が良いのか悪いのかの判断がつかないからプロのデザインの人に見て欲しいといって、スケッチブックに描かれたたくさんの風景画を見せていただきました。描きたいという気持ちで描かれた絵は時に理屈抜きで人の心を打つ物です。そのままでも悪くはないけど、描きたいイメージの目標を持ってそれに近づけることでさらによくなることもあるかと思ったので、
参考になる様なイメージを探してそれを目標に写すのではなく自分で描く事をお勧めしました。

趣味の世界の話は好みで良いし、本人が描きたい物を情熱的に描くというので良いかと思います。その情熱が人に伝われば感動を呼ぶしファンもできるかも知れません。今回はただ作りたい、といったモチベーションが原動力となっていたので、デザインにおいてはそれほど大きなお役に立てるかわからなかったのですが、制作への取り組み方や考え方を共有する事で作者の制作モチベーションが上がったので良かったかなと思いました。


幸せのレンタルおじさんをやってみて思う事

最初にも話しましたが当たり前に思っている事が他の人たちにとってはすごく価値のある情報だったり、人のことを前向きに変えて行けたりする力があるのだと強く感じました。
たった1杯のコーヒーと1時間1000円の報酬なのですが、依頼者が喜んで前向きな笑顔になられて帰る姿を見る事で、人の役に立てることの喜びを感じる事ができるのと、いつもなら絶対出会えない方々と1時間以上お話しすることの価値はこのサービスが続いている理由なのかなと感じました。

いくつか依頼を受けて見て、一般の人がデザイナーに聞きたいことって案外あるんだなと気付きました。顔の見えない相手と待ち合わせて出会うのはいつもドキドキしてしまうのですが、これからも依頼があれば続けて行こうかと思います。

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