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「トラベルミステリー」って何だろう問題 1

『少女トラベルミステリ』を書くに当たって絶対に調べておかなければいけないことがひとつありました。
「えーと、トラベルミステリって単語、どこから来た?」
ワタシが小娘の頃にはもうある程度トラベルミステリという単語が一般化していたような体感があったので、あまり意識していませんでしたが、検索してみると『西村京太郎トラベルミステリー』という単語がわんさか出ます。そして検索を進めてみるとテレビ朝日・土曜ワイド劇場で放映開始した十津川警部シリーズの二時間ドラマのシリーズタイトルとして「トラベルミステリー」という単語が使われていて、第14作目『愛と死の飯田線 高原列車殺人事件! 天竜峡に哀歌が流れる(1989/01/14放映)』で初出、その次の『アルプス誘拐ルート 新宿-松本-沖縄 パノラマ急行殺人事件 展望車から消えた女(1989/04/01放映)』からシリーズタイトルが正式に使われるようになったそうです。

ただし『春の名作推理第2弾!西村京太郎のトラベルミステリー 北帰行殺人事件(1982/04/17放映)』で『西村京太郎トラベルミステリー(太字指定館山)』というシリーズタイトルが初出になっています。この時点ではシリーズタイトルが確定だった訳ではなく、シリーズタイトルがついたりつかなかったり『西村京太郎スペシャル』というタイトルが使われたりしていますが、1982年(昭和57年)時点でテレビドラマのシリーズタイトルにトラベルミステリーという単語は使われています。

この時点では多分「トラベルミステリー=西村京太郎作品」という定義だっただろうと思います。

では、単語が一般化したのはいつか?

西村京太郎作品と無関係の箇所、作品でトラベルミステリーという単語が使われたものを探してみました。

館山の自力チェックなのでもっと早いものがあるかもしれませんが、とりあえず1983/1/1初版の『鉄路のオベリスト―長編本格トラベル・ミステリー (カッパ・ノベルス)』が一番早いのではないかと思いました。鮎川哲也先生翻訳の作品です。

ただし正確には『トラベル・ミステリー』と中黒が入っています。

鮎川先生関係では他にも『シグナルは消えた(1983/2/1初版)』『犯罪交叉点(1983/3/1初版)』『殺しのダイヤグラム(1983/4/1初版)』『殺人列車は走る(1983/5/1初版)』『レールは囁く(1983/6/1初版)』『殺意の終着点(1983/7/1初版)』の六作に『トラベル・ミステリー』というシリーズ名がついています。

このあたりはまだ特定の作家、シリーズで「他の作品で使われた=一般化した」とまでは言いづらいところがあるかもしれません。

その後、ドラマではない西村京太郎作品『急行奥只見殺人事件(1985/11/1初版)』でトラベルミステリーというジャンル名がついています。

個人的にはこのあたりからジャンル名として広まっていったんじゃないかと思っています。

井口民樹先生の『さいはて特急おおぞら殺人事件(1987/5/1初版)』でもトラベルミステリーというジャンル名が使われています。

他にもNTV火曜サスペンス劇場でも1988/08/30に『高林鮎子トラベルミステリー4 信州飯田線殺意の天竜峡・女弁護士高林鮎子、横浜名物シューマイに守られた男のアリバイを崩せ!!』が使われているようなので、他局の番組でもトラベルミステリーの名前を見ることができました。

(このあたり、もう少し調べられたら追記します)

他局でも名前を使ってもいい、西村京太郎作品以外でも使ってもいいという感じになってきたあたりで、もう一般化はある程度進んだのではないかと思います。
『高林鮎子トラベルミステリー4 信州飯田線殺意の天竜峡・女弁護士高林鮎子、横浜名物シューマイに守られた男のアリバイを崩せ!!』は『西村京太郎トラベルミステリー』よりも前、『西村京太郎のトラベルミステリー』より後に使われています。

その後に1989/01/14に『西村京太郎トラベルミステリー 愛と死の飯田線(テレビ朝日・朝日放送/土曜ワイド劇場)』が公開され、トラベルミステリーという名前が西村京太郎作品とがっちり結びついたタイミングです。

ただ、もう既によそでも広まってしまっているので、十津川警部人気がトラベルミステリーという単語を囲い込んでしまうこともなく「観光地などの旅先で起こる事件を扱った作品」を定義する言葉として定着していったのではないでしょうか。

現時点ではこのように考えています。

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