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あの子から血の臭いがする。 そう思ったのは多分、僕の勘違いだった。 何故ならそもそもあの日、あの場所で吐きそうなほど血の臭いを撒き散らしていたのは、彼女ではなく僕自身だったのだから。 その時の僕は横たわる死体――しかも刺されて死んだ死体の傷口に手をついて、大泣きしながらもどうしたらいいのか解らず、まともに身動きできなかったのだ。 血まみれの死体の上に手をついて立ち上がろうとするのは難しかった。掌がぬるぬるで、体のバランスが崩れてしまう。動転しているせいもあって、僕は