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【場末のアートコラム】乱高下する若手アーティストの価格形成について

若手アーティスト作品の値動きはIPO株に似ている

ここ最近、SBIアートオークションやヤフオク!やメルカリ、フリマなどのセカンダリーでの若手アーティスト作品の落札価格を見ていると、さながらバブルのような値動きをしています。例えば数年前、下手すれば数ヶ月前まではプライマリーで数万円で購入できた作品が百万円を超える価格で取引されることも珍しくなくなってきました。

このような値動きをする作品は決まって若手アーティストによるものです。代表的なアーティストとしてKYNEやBackside works.、conixなどのイラスト系の方達が挙げられます。

これらの値動きを見ていて、まるで新規上場株(IPO)のようだなと思い、分析してみると色々と面白い共通点が見つかりました。

共通点1:ボラティリティが大きい

まず1つ目の共通点はボラティリティが大きいことです。ボラティリティとは価格変動度合いのことで、これが大きいと言うことは値動きが激しいことを意味します。一般に上場したての株価は短期間で倍になったり、逆に半値になったりすることが良くあります。また、株の世界では株価が10倍になりそうな銘柄のことをテンバガーと表現したりしますが、実際にこれを達成するほとんどは新規上場株です。これを踏まえて、先に挙げたアーティスト達の作品の値動きを見てみると本当に動きが激しいです。

例えば、2020年の夏に販売されたconixの『LET’S GET NAKED』展の作品。

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プライマリー価格は60,000円でしたが、直後のフリマサイトでは400,000円ほどで取引されていました。しかし、2021年2月現在では70,000円程度の価格に落ち着いています。このように短期間で激しい値動きをするのが若手アーティストの特徴であると思います。当たり前なのですが、必ずしも右肩上がりに価格が変動する訳ではないので購入の際には高値掴みしないように気をつけた方が良いと思います。ポイントとしては、セカンダリーマーケットに作品が出始めてから数ヶ月もすると価格が安定しはじめて来るので、その時の値段でも納得できれば買うのもありだと思います。

共通点2:需要と供給のバランスが極端に悪い

2つ目の特徴は需要と供給のバランスの悪さです。人気のあるIPO株は抽選に応募してもほとんどの場合買えません。これは若手アーティストの作品においてもそうだと思います。この需給のバランスの悪さがセカンダリーマーケットで一気に価格が噴き上がる原因だと思いますが、最近ではそれを狙った転売ヤーと呼ばれる人達が人海戦術で抽選に応募してプライマリーで全てかっさらう、なんて光景も珍しく無くなりました。

IPO株の場合は証券会社と懇意にしていると営業マンの采配で優先的に株を割り当てて貰えることがあります。私はそこまで懇意にしているギャラリーは無いので分かりませんが、お得意様であれば若手アーティストの新作であっても優先的に購入させて貰えるなんてこともあると思います。もちろん、普段からそれ以外に沢山の作品を定期的に購入していることが必須条件にはなると思います。また、多くのギャラリーにはウェイティングリストがあるので本当に欲しいアーティストがいる場合は予めそのリストに載せて貰うように交渉するのが良いでしょう。当然、人気作家であれば数年待ちとかになってきますので気長に待てる忍耐が必要です。

共通点3:上昇の大部分は数年以内に達成されてしまうことが多い

IPO株について最近、面白い記事が出ていました。

リンク先の記事を要約すると、ある上場企業の株価上昇の大部分は、IPOしてから数年以内に達成されてしまうことが多いと言う内容です。

これを若手アーティストの作品に置き換えて考えると、投資的にアートを購入し何倍もの値上がりを期待するのであれば、世に出てから間もないアーティストにフォーカスしたほうが良いということになります。いくら人気の若手アーティストであっても世間に認知されてから数年もすればプライマリーの価格が定まってきて、買った直後にセカンダリーで何十倍にもなると言う現象は起こりづらいでしょう。

KYNEなどの作家も「あのとき買っておけば、、」と言う後悔を何度か聞いたことがあります。一度、プライマリーが高値で定まってしまえば中々簡単には手を出せなくなると思いますので、もし皆さんの中に注目している若手アーティストがいるのであれば今のうちに購入しておくことをオススメします。

最後に

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