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【場末のアートコラム】"お金が儲かるから"アートを買うことについて

昔からあるアートの投資・投機性

かつて、安田火災(現在の損保ジャパン日本興亜)がゴッホの「ひまわり」を53億円で落札した時代がありました。1987年当時の53億円なので、現在の金額換算するととんでもない価格になると思います。この「ひまわり」は今でも損保ジャパン日本興亜美術館に常設されているようですが当時のアート市場はバブル時代の背景もあり、間違いなく過熱していました。

時は変わって、現在のアートオークションでは現代アートの高額な落札価格が話題になっています。サザビーズやクリスティーズのオークションで何十億円で売られていく作品も珍しくありません。日本人アーティストでは、2008年に村上隆のマイ・ロンサム・カウボーイと言う等身大フィギュアがサザビーズのオークションで16億円の落札額を記録したことも話題になりました。ちなみに、このマイ・ロンサム・カウボーイは販売当時の価格(プライマリー価格)は500万円程度だったそうです。つまり、この作品を販売時に買っていた人は15億9500万円もの売買差益が出たことになります。

このようにアートとお金の関係は切ってもきれない関係であることは間違い無いのですが、最近ではあまりにその投資・投機性ばかりがフォーカスされ過ぎてうんざりしているコレクターも少なからずいることも事実だと思います。なぜ一般のコレクターまでもがうんざりする程の自体になってしまったのか。それを分析していきたいと思います。

裾野まで広がるアートの投資性

かつてはアート作品がオークションに出て高額落札されると言うニュースはサザビーズなど海外オークションの物に限られていました。基本的には価格も億円を超えるものばかりで、これらのオークションで扱われる日本人アーティストは極々一部でしょう。当時からヤフオク!などのフリマサイトはあったとは言え、数万円から数十万円の作品を収集する人にとって"お金が儲かるから"と言う理由でアートを買う人はほとんどいなかったと思います。

しかし、今では人気のアーティストが新作を出すとなれば毎回行列ができ、その中には転売ヤーと呼ばれるアートの投機性のみに興味を持つ人達も多くなってきました。また作品の良し悪しも、セカンダリーでの価格の上昇率など如何に儲かるか?にフォーカスされ過ぎています。例えどんなに素晴らしい作品であっても売れなければ価値がないと言った具合です。

このアートの投資ブームに乗ってギャラリー側もアートの投資・投機性を煽りだす事態にまでなっています。有名なギャラリスト達が出版する下記の書籍たちを見てみればその傾向は明らかです。

(※村上隆や奈良美智を発掘したとも言われるギャラリスト小山登美夫の著書)

(※オンラインアート販売を行うTAGBOATの代表徳光健治の著書)

例えば、村上隆さんは割と当初からアートとお金の関係には積極的に言及しており、そのあたりの話を自身の著書(芸術起業論)の中でも赤裸々に語っています。

このようにアートとお金の関係は否応なく一般の個人コレクターにも意識させられる状況です。

フリマアプリと小規模オークションがアートの投資性を加速させる

これらの状況を加速させる一つの要因としては、メルカリやヤフオク!に代表されるフリマアプリの台頭が挙げられると思います。KYNEや村上隆など比較的リリースも多く、人気のアーティストであれば販売したその日にフリマサイトで2次流通していますし、リアルタイムで自分が保有している作品のセカンダリーでの動向を掴むことが出来てしまいます。

また最近ではSBIアートオークションなど、比較的に低価格な作品(数万円から数十万円くらいが中心)の個人コレクター向けのアートオークションが人気になっており、アートの価値が金額換算されやすい土台が出来てしまっています。

これに引きづられて"お金が儲かるから"と言った理由で作品を買う方も少なくはないでしょう。確かにそのような見方も間違っておらず、アートの入り口として推奨すらしている場合もあります。

しかし、保有の目的が金銭価値だけであると言うのはいささか危険な状態でもあると思います。それは、価格の下落と共に保有するモチベーション自体がなくなってしまうことにもなりかねないからです。少なくとも作家や作品のバックグランドを調べて自身にとって共感を得られるものが、価格の下落時にも作品を保有する目的になってくれると思います。

これは実は株式投資でも同じで、投機的に買われた株は価格下落時に投げ売られることが多いです(※最近では投機目的の個人投資家達の過度な売買で乱高下したGME株など)。つまり多くの人が投機目的だけで保持しているアート作品は実は資産としても結構危ういのではないでしょうか。

今の相場が一過性のバブルなのかどうかは弾けてみないと誰にもわかりません。今後も、一弱小コレクターとしてアート相場の動向を見守りたいと思います。

最後に

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