(2/4) 「 #KuToo (クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム」への批判点の整理

前記事

批判点2.「引用」が全文掲載でないことに対する批判

 出版社である現代書館の見解を下記に引用する。
 なお、書籍内には「全文を引用していない場合がある」旨の注記は無い。

 本書におきまして、特にその「2 #KuTooバックラッシュ実録 140字の闘い」は、#KuTooの趣旨に賛同していない投稿、石川優実さんを批判する投稿について批評し考察する章となっておりますため、著作権法第32条の規定に従いまして投稿発言(リプライ以外も含む)を原文のまま引用し(割愛する場合は[…]を表記しております。著作物の中〈投稿内〉にリンクを貼った記事の見出しなどが含まれている場合は引用をしておりません。)、同第48条の規定に従いまして投稿者のアカウント名、URLを記載いたしました。

 また、上記の見解と異なり、記事の見出しとURLが掲載されているページも存在する。

例:P.66(記事タイトル、URLいずれも掲載されている)

神楽坂優二(ばかぐら) @kagura0
朝日が煽って国会質疑という「#KuToo」運動への溜息 https://www.dailyshincho.jp/article/2019/06280558/#デイリー新潮
◆>> 女の敵は女。しかし、それでは「運動」が成り立たないのだ。
辛辣w

実際のツイート

 批判については下記にて個別にまとめる。

2.(1) ニュース等へのツイートについて、見出しとURLが削られているものがある

例:P.76に掲載されている文章

ichi @ibaichi10
冠婚葬祭業でお客さんから「正装でないのは失礼だ」とクレーム来たら退職して職業変えるしかない。訴える前に転職の発想は無いのかな。自分で起業するてもある。楽して儲ける事はできない。

実際のツイート(批判1.(3)も参照)

批判:
ニュース記事に対する感想ツイートであるにもかかわらず、石川氏に話しかけたかのように「リプライ」と名付けるのは不当ではないか。
また、上述の通り、書籍内には「全文を引用していない場合がある」旨の注記が無いため、ツイートの一部を掲載されているケースがあることが、書籍を読んだだけでは分からない。

2.(2) 2.(1)に当てはまらないが、ツイートが削られているものがある

例:P.70に掲載

みやびmama @miyabi39mama
[…]それにしても、いまだに、性差別だという主張を下げないんですね
慰安婦のイベントに参加するし、本丸は靴ではなくて、性差別をなくすことですね

実際のツイート

 なお、石川氏はツイートで「Twitter内容は、誤字も含めてそのまま」と主張している。

批判:
引用ならば全文を掲載すべきではないか。
また、上述の通り、書籍内には「全文を引用していない場合がある」旨の注記が無いため、ツイートの一部を掲載されているケースがあることが、書籍を読んだだけでは分からない。

2.(3) 石川氏の反論部分が実際にツイートされたものと異なるものがある

例:P.114に掲載されている石川氏の反論

石川優実
私ずっと、「男性の履いているような革靴を選択肢に入れてください」っていってます
「本題」と偉そうに議論ぽくしてるけど、「何も調べずに発言してます」って言ってるみたいですごくユニーク。もはやコント。「単なるポリコレこじらせ人間」とまで言ったくせに……笑。

ツイートされている文章

※詳細はsushikennsyou氏によるTogetterを参照

 これについて、石川氏は「自分のツイートは出典元を表記しておらず、引用ではない」と主張している。

批判①:
P.58(編集部による2章前書き)に下記のように表記されていること、

 しかし、石川は怖めず臆せず、それらひとつひとつに平静に、真っ当に、あざやかにリプライしていく。

また、ページ上部に「Tweets」と表記されており、Twitterにおけるスレッドのような線のデザインがある(詳細は4.デザインへの批判を参照)ことから、ごく普通に読めば石川氏によるリプライだと考えられる。
しかし実際には石川氏のツイートした文章から修正がなされており、これは捏造と呼べるのではないか。

批判②:(批判①からの派生)
対向ページにて丸々1ページ、石川氏による「研究」がなされているのだから、書き足すのであればそちらにすればいいのであって、なぜ石川氏がツイートしたように誤認させるデザインとしているのか。上記引用部のように、「石川氏があざやかにリプライをした」と誤認させたいがためではないのか。

出版社の現代書館の抗議文において、この点への批判を「著作者人格権侵害だ」という批判だと誤認しているような文章が見受けられる(下記に引用)。

石川さんが「他人の著作物」に手を加えた部分はなく、自己の著作物を補充したに過ぎないのであるから、そもそも同一性保持権侵害の問題ではない。何故なら、同一性保持権侵害とは、引用その他において、「他人の著作物」に手を加えることだからである。反論すら不要と判断して無視した理由はここにある。

 しかし、批判はおもに「石川氏の反論がツイートから書き換えられているのは捏造ではないか」というものであり(吉峯弁護士のTogetter、およびsushikennsyou氏のTogetterを参照)、「石川氏の反論がツイートから書き換えられているのは著作者人格権侵害だ」という主張をしている人物は(少なくとも目立ったところには)存在しないと思われる。

※『図書新聞』2月8日号に掲載された書評(下記に引用)では、「一種のパロディ」という擁護がなされた(おそらく、「Twitterのデザインのパロディ」という意味であろうと思われる)。詳細はsushikennsyou氏によるTogetterを参照。

そして、これらの下部に位置する石川の応答は実際にTwitterで行ったリプライも含め出典なしに記載され、本書の地の文として読めるかたちで提示されている(研究者であれば自身の過去の論文に対しても出典を示すが、本書は学術書ではなく一般書であるため、こうしたことは新書と同様に煩雑さの観点から許容されうるだろう)。そのため、引用された者と著者が実際のTwitterで直接的なやりとりをしていない場合、「やりとりをしていないのに事実を歪曲している」と思い込んでしまうひとがいるようだ。このようにして、一種のパロディをパロディとして理解できなかったり、引用文とそれ以外の文の差異を識別することに慣れていなかったりするひとびとによって本書は誤読されている。


続き