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〜heldioガイド〜【J】Jun Terasawa(寺澤盾)先生

heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ

・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/


寺澤盾先生(青山学院大学文学部英米文学科/東京大学名誉教授)

英語史と言ったら寺澤先生、寺澤先生と言ったら英語史…そんなビッグゲストがご登場くださるなんて、やはりheldioを聴かない手はない
寺澤先生ご出演回もまた、以下の本の内容を基にした対談形式となっている。

#423. 寺澤盾先生との対談 英語の標準化の歴史と未来を考える
高田博行・田中牧郎・堀田隆一(編著) 2022. 『言語の標準化を考える 日中英独仏「対照言語史」の試み』大修館書店.

本のタイトルにある「対照言語史」という用語はあまり聞き馴染みがないかもしれないが、同書が独自に提供する研究上の新しい視点・アプローチ方法である。heldioでは主に英語の歴史=英語史を扱っているが、他の言語、例えば日本語やドイツ語にもそれぞれの歴史がある。対照言語史とはつまり、英語史・日本語史・ドイツ語史といった個別の言語史を比較対照する研究を指す。それにより、各言語史の「個別性」や複数言語史に共通する「普遍性」が見えてくるという。
比較対照のためのポイントはいくつもあると思うが、同書では「言語の標準化」をテーマとし、日本語・中国語・英語・ドイツ語・フランス語という5言語の標準化の歴史が対照されている。
英語について書かれた章のタイトルを見てみると…

第7章 英語標準化の諸相―20世紀以降を中心に(寺澤先生執筆)

「20世紀以降」とあるではないか。英語「史」と聞くと過去=古い時代の英語を研究するというイメージを持ちがちだ。しかし1,000年以上前の古英語と呼ばれる時代が英語史であるのと同様、私たちの生きる21世紀(例えば母語としてだけでなく第二言語・外国語として英語を用いる人がますます増加し、世界各地の英語変種が独自に変化を遂げている様子が観察される)の英語もまた英語史の一部なのだ。こうして身近に感じられると、関心が一層高まるのではないか。

さて標準化というと、何か一つの方向にまとまっていく過程を思い浮かべるが、英語の歴史においては収斂と拡散のサイクルが繰り返されており、その内実は「統一化」「規範化」「通用化」という3つの異なる側面があるという。
これは普遍的なことなのか?と思ったあなたは、既に対照言語史マインドが身についている!
ドイツ語ではサイクルの繰り返しや「通用化」は見られないそうだが、このように紙面上で他の執筆者からの「突っ込み」コメントが挿入されているのもまた、同書の斬新さの一つだ。ぜひご一読を。

なお、同書については寺澤先生との対談以外にも、堀田先生による紹介や編者鼎談回もあるので併せて聴きたい。

#361. 『言語の標準化を考える --- 日中英独仏「対照言語史」の試み』の読みどころ

#404. 編者鼎談『言語の標準化を考える ― 日中英独仏「対照言語史」の試み』

「対照言語史」というアプローチは面白くないわけがない。ということで先生方、別テーマでの続刊を期待しています!

現代英語以外を読んでみたくなったら…

heldioを毎日聴き、英語はあんな変化やこんな変化を経て来たということを知ると、「現代英語以外を読んでみたい!」という衝動に駆られる。
本当は大学等で講読の授業を受けてみたいところだが、寺澤先生のご著書『聖書でたどる英語の歴史』を基に個人で学習することも可能だ。

寺澤 盾. 2013.『聖書でたどる英語の歴史』大修館書店.

聖書は内容が同じであるため、異なる時代の英訳聖書を比較することで、英語に起こった変化を見るのに有用であるという。
古英語と中英語訳聖書にはグロッサリーが付いており、文法解説もあるため、それらを頼りに読み進めることができる。
しかし、現代英語に起こっている変化もやはり見逃せない。同書では20世紀以降に出版された現代英訳聖書、具体的には障がい者・性差別的な表現を排除した聖書が紹介されている。
社会の変容や人々の意識の変化がどのように言葉に反映されるのか、その一面を窺い知ることができ、大変興味深い。

NHKカルチャー講座

英語史のマイブーム到来中!という方には、寺澤先生がNHKカルチャーにて講座を担当されているのでチャンスだ。
タイトルは
「世界の英語 その多様性と拡大の歴史」

世界の英語の多様性とのことだが、ブリテン諸島内の英語変種(スコットランドウェールズアイルランド英語)から始め、オセアニアアジアアフリカで話されている英語変種にも注目するという。

・1回90分の全5回シリーズ(初回は5/18)
・リアルタイムオンライン講義形式
・「見逃し配信」あり

と受講しやすいスタイルのため、英語史の学びをまた一歩深めてみてはいかがだろうか。


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