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〜heldioガイド〜【K-2】菊地翔太先生

heldioとは?
・慶應義塾大学文学部の堀田隆一先生が「英語史をお茶の間に」をモットーにVoicyで毎朝6時に配信されているラジオ

・このガイドは、heldioを楽しむための道案内となることを願い、お茶の間の住人が作成しているものです。
・アルファベットのAから順にheldioにまつわるキーパーソンやキーワードを紹介します。
\今日からあなたもheldioリスナーに/


菊地翔太先生(専修大学文学部英語英米文学科)

菊地先生と言えば、毎日朝夜の複数回heldioを聴いていらっしゃるとのことで、リスナーの鑑!であり、同じリスナーとして勝手ながら親近感も湧く。そんな菊地先生は〜heldioガイド〜【E】英語史新聞、英語史コンテンツで紹介したkhelf発行『英語史新聞』第4号と5号の英語史ラウンジでフォーカスされているので、まずはそちらを読んでみよう。

『英語史新聞』第4号
『英語史新聞』第5号

第4号ダイジェスト
まずは英語との関わり方について、小学4年生頃に英語に興味を持ったきっかけから、中学・高校生時代に「コミュニケーション」と「受験英語」のどちらに重きを置くかで揺れ動きながらも、英語に夢中になった過程が語られている。いわゆる「会話力」と「文法」の狭間で同じような行き来を経験した人も多いのではないか。
さて続いては、ご専門につながるお話。大学入学時には英語という言語そのものに強い関心を持っていた菊地先生は、シェイクスピア講読の授業である衝撃を受ける。現代英語では主格関係代名詞の省略は「非標準」とされるが、約400年前には一般的に用いられていたことを知り、「受験英語」で習った文法が全てでは無いことを悟ったのだ。その後、シェイクスピアを中心とした初期近代英語の戯曲における関係代名詞研究を進められることとなった。
また、スコットランド留学時にさまざまな出身地の人の異なる英語に触れ、英語の多様性への関心が高まったことから、現在はWorld Englishesも研究テーマの一つとされている。このように研究者として複数の軸を持つことを意識したのは恩師(寺澤盾先生)の影響によると言うが、先生方の哲学にも触れることができるのは英語史ラウンジならではだ。

第5号ダイジェスト
英語史の魅力について。堀田先生も常々発信されている「英語に関する素朴な疑問」への一つの答えが見つかるだけでなく、英語史の観点から英語を見ていると、英語への愛着が深まり、単語や綴字といった構成要素が愛すべき生き物のように思えてくるという。うむ、ビギナーはすぐには共感できないかもしれないが、菊地先生がおっしゃる「今後の活躍を見守りたくなる『推し』が見つかる」よう、英語史に浸かってみてはいかがだろうか。
(このあたりのくだりを読んで、筆者の第一「推し」先生は菊地先生になったのだった。)

スペースの都合上、『英語史新聞』の紙面には記載することのできなかったインタビュー全文はこちらから読むことができる。
khelfホームページ「英語史ラウンジ」

関係代名詞、World Englishes

英語学習者にとって、いろいろな種類がある関係代名詞はその使い分け等が悩みのタネになりがちだ。専門家のお話を聞いてみたい人は多いと思うが、残念ながらheldioでの対談回はまだ実施されていないようなので、Kikuchi (2022) を読んでみた。
取り分け面白いなと思ったのは、関係代名詞という文法の使い方には個人差が見られること。そのため合作(この論文ではシェイクスピアとフレッチャーに注目)と言われている作品において関係代名詞がどのように現れているかを見ることは、執筆分担を特定する際の一つの証拠として用いることができるという点だ。
私たちは話し言葉、書き言葉を問わず他者との日々のコミュニケーションの中で、みんなが全く同じように言葉を使っているわけではないことに何となく気付いている。各人の「声」、その差を「実態」として示すことのできる言語学への興味は尽きない
ぜひheldio上で対談が実現されることを願っている。

Kikuchi, Shota. 2022. "Wh To-Infinitive Constructions in Early Modern English Drama with Special Reference to Shakespeare." In Yoko Iyeiri, Hiroshi Yadomi, David Selfe, and Jeremy Smith, eds. Variational Studies on Pronominal Forms in the History of English. Tokyo: Kaitakusha. 37-62. 

なお、関係代名詞発達の概要については、heldioの以下の回で取り上げられている。
#258. 近代まで使われていた関係代名詞 the which
#485. 関係代名詞の歴史 ー 意外と遅かった who

現在はwhich, who, thatなどのバリエーションがあり、統語環境や文体等により一定の使い分けがなされているが、それぞれの語が関係代名詞として機能するようになった時代が異なるとのこと。
また、which thatやthe whichといった現在では見られない関係代名詞が使われていた時代もあるとのことで、現代英語のルール=文法は歴史の過程で生じてきた相対的なものであることがよくわかる。

またWorld Englishes(世界英語)関連の論文で、オンライン上で読めるものがあるのでリンクを貼っておく。
菊地翔太. 2022.「世界英語における2人称代名詞の多様性と変化―eWAVEを活用した英語史的な思考法への誘い―」『専修人文論集』第111号: 1-29.

菊地先生のホームページ

菊地先生も英語史関連のホームページを運営されているので、ぜひ訪問してみよう。
菊地翔太(Shota Kikuchi)のHP

主に先生がご担当の授業履修者向けであるが、参考文献やツール等が詳しく記載されているため、それらの情報を基に一般人も勉強できる。
heldioやhellogへのリンクも多いところが嬉しい。

heldioの菊地先生関連回

#603. 菊地翔太先生ご提案の通時的パラダイムがズルい件について
何とも気になるタイトルであるが、コメント欄での菊地先生からの話題提供が基になっている。

#780. なぜ英語史研究者はその時代を選んだのか? --- 福元広二先生と菊地翔太先生との鼎談
ご専門の初期近代英語について、どこに惹かれたのかを語られている。

#967. 菊地翔太ゼミでの「英語史コンテンツマラソン」企画,ありがとう!
2021年度以降、khelfメンバーが年度始めに執筆している「英語史コンテンツ」であるが、2024年度は「英語コンテンツ50+」として、専修大学ほかいくつかの大学の有志メンバーも加わるとのこと。コンテンツは毎日(休日を除く)1つずつ以下のページにアップされるので、ぜひ定期的に閲覧したい。
「英語史コンテンツ50+」

菊地先生、今後益々のご活躍をお祈りしています!


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