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Principle 7: 患者を家で診る

Principle 7
家庭医は患者を患者自身の家で診る。様々なライフイベントが生じる場所が家である。出産、死、闘病。こうしたイベントに家族とともにそこに居合わせることは、患者とその家族についての深い理解を身につけることに繋がる。家を知ることは、患者のillnessがなぜ・どのように生まれているかについての繊細なニュアンスを知ることに繋がる。近年の病院医療は技術面や効率面での利点があるものの、こうした経験を減らしている側面もある。病院の役割を見直すことは、この側面に再びバランスをもたらすことに繋がる。家で患者を診るという能力は、家庭医に必須の能力なのである。

McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxford: Oxford University Press.

在宅医療は家庭医にとってどのようなものなのだろうか?ここではTheileら (2011) がドイツのGeneral Practitioner (GP)を対象として行なった、在宅医療の持続可能性、負担、将来の見通しなどに関する質的研究の一部を紹介したい。若干意訳してある点はご容赦いただきたい。

Theile, G., Kruschinski, C., Buck, M., Müller, C. A., & Hummers-Pradier, E. (2011). Home visits - central to primary care, tradition or an obligation? A qualitative study. BMC family practice, 12, 24. https://doi.org/10.1186/1471-2296-12-24
"在宅医療では時に混沌の中に身を置くことになる。母親と二人のこどもがいて、そこには騒がしい犬と2匹の猫がいる。今やどうしてこのこどもたちが喘息なのかは明らかだ。医師は問診によって病歴を得ることができるが、それだけでは実態を知ることや実感を得ることが難しいものごとがある。しかし、在宅医療はそれを可能にしてくれる。"

"And you have a peek on this chaos, a mum with her two kids - there is also a dog bustling around and two cats. Then it's quite clear why these kids have asthma. Father is a smoker. These are things you don't quite realise in your practice, although you can enquire about. But by conducting a home visit you see this at a glance and that's great."
"患者の家というのは、病院やクリニックとは勝手がまるで違う。そこでは患者が主人であり、全てを管理する権限がある。医師が病院やクリニックが診療をしていると、そこには決まった手順があり、患者はそれに従うことになる。しかし、患者の家では患者は全く違った振る舞いをする。そこでは誰にも、何にも縛られないのだ。"

"This is a completely different situation. It's the patient's home. He is the boss and controls the situation. Here in my practice, I do things a certain way and the patient is often very meek. But in his home, he acts completely differently, more independent, and more self-sufficient."

この質的研究から抽出された在宅医療の良い側面は下記のようなものであった。

在宅医療の良い側面
ルーチン業務から抜け出せる
専門家としての好奇心を満たしてくれる
薬剤のコントロールがしやすくなる
入院を回避することができる
精神的に危機的な状況に直ちに支援を提供できる
家庭医診療の市場価値を高めてくれる
患者に喜んでもらうことができる

一方で、「負担が大きい」とか「制約が大きい」といった負の側面についても触れられていた。将来的な在宅医療のあり方は、家庭医による在宅医療から、さらに拡張性のある仕組みが求められていくのかもしれない。

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