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Principle 4: リスク集団をみる

Principle 4
家庭医は自分の診療対象を「リスク集団 (population at risk)」とみなし、個々の患者と集団の両方のことを考えなければならない。予防接種やチェックアップに来ている人たちと同じように、来ていない人のことも考えなければならない。

McWhinney, I. and Freeman, T., 2016. Mcwhinney's Textbook Of Family Medicine. Oxford: Oxford University Press.

例えばUKなどは、地域住民はそれぞれかかりつけのGeneral Practitioner (GP)を登録することになっている。GPのクリニックは、この登録者数に基づいて報酬を受ける。この人々の健康を守ることがGPの役割・使命ということになる。集団のことを考えるのに適したシステムと言えよう。

一方、日本のヘルスケアシステムは出来高払いであり、予防医療に保険診療は適用されてない。集団のことを考えてもそのことについて報酬がつくわけではない。集団の健康維持は癌検診や特定健診という形で行政管轄ということになるが、ケアの連続性を保つ上では不便な点があることも否めない。

さて、そうした中で日本の家庭医が必然的に集団のことを考える機会として、2つの切り口がある。1つは、感染症の把握という観点である。集団に伝播しうる感染症をみつけることは家庭医の外来でも珍しくない。例えば、成人発症の伝染性紅斑は、他に小児の伝染性紅斑などがクリニックに受診していてこそ発見しやすくなる。集団を考えることが個々の診療に影響する1例と言える。

もう1つは、ケアが必要なのに受診できていない患者に気づくときである。ケアへのアクセスの障害として下記のようなものがあると言われている。例えば地理的、ジェンダー的、併存疾病的な理由で在宅医療の要請を受けるとき、地域の中にケアへのアクセス障害を抱えた人がどれくらいいるのか思いを馳せることになる。こちらは先ほどと反対で、個々の診療が集団を考えることに影響する1例とも言えるだろう。

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他にも、例えば日本語学校の周辺にもケアへのアクセス障害を抱えた人がいることが予想される。ケアへの近接性(Access to Care)を考えることは、プライマリ・ケアにとって非常に重要なことなのである。

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