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【Green Ponta MAGAZINE⑦】サステナブルなレストランが当たり前の時代がやってくる

※「GreenPontaMAGAZINE」からの再掲記事です。

2008年にイタリアンレストラン「REGALO」をオープンし、オーナーシェフとして店を切り盛りしてきた小倉 知巳さん。「おいしい」の先にある素材のこと、日本の飲食業とサステナビリティについて、お話を伺いました。

流行でなく、背景を知ることが大事

- 料理の道を志したのは?

大学生の時から調理のアルバイトをしていたので、よく友人に振る舞っていました。在学中に調理師免許を取得し、卒業してすぐ料理の道へ。7年ほどイタリアンレストランで働いて、2008年に「REGALO」をオープンしました。

- 普段、料理人としてSDGsを意識していますか?

できるだけ有機肥料で育ったものを使うようにしています。本当なら、枯葉や家畜の糞などを堆肥にして野菜を作り、収穫されない野菜が腐って肥料になり……というように循環していくのが理想ですよね。でも今は牛が畑を耕す時代ではないので、化学肥料に頼らざるを得ない面もあります。それに、レストランに来るお客様はまず、おいしいから感動してくれるんです。無農薬だからといって、クオリティが低いものは使いたくない。それでも、背景を知っているかどうかの差は大きいと思います。

- 知った上で選択をしていくことがまず第一歩ですね。

そうですね。例えばビオワインひとつとっても、遠くからはるばる日本まで運ぶだけでも、少なからず環境に影響を与えていますよね。その点に目を向けずに「ビオワインじゃないので要りません」と決めつけてしまうのは違うのではないかなと思っています。

日本のイタリア料理はおいしいけど・・・

- 日本とイタリアの飲食業で違う点はありますか?

日本ほど食文化に恵まれていて、安価に外食ができる国は他にありません。食産業は世界トップクラスですし、あらゆる場所に食材があり、深夜でも生鮮食品が買え、いつでも冷たい飲料水が手に入る国です。対して、イタリアでは買い物は朝にするもの。14時を越えたら生鮮食品は買えません。ショーケースが空の時も多いですし、魚も売り切ったら終わり。そういう意味では日本より不便かもしれないけど、廃棄食品や無駄な電力に関していえば、日本よりも少ないと思います。

- 食材に対する日本と海外との考え方の違いはありますか?

一概には言えませんが、フランスではワインのぶどうを育てるのに肥料も水もあげないことも多いんです。雨が少ない時には、少ないなりの味になります。それがヴィンテージの特色になるんですね。対して、日本はテクニックに長けています。和牛も、醤油も、技術でおいしいものを作ろうとします。醤油の裏を見ると、大豆などの主原料の他にアミノ酸など4、5種類が入っているものもありますよね。コストを意識しておいしいと感じるものを作ろうとすると、結果的に純粋な素材以外を使わなければいけなくなります。

飲食業界でもサステナブルは無視できない

- 飲食業界でもサステナブルへの取り組みは行われていますか?

そうですね。例えば牛肉は未経産牛を使うのが常識でした。経産牛は硬くなるからです。でも今は、経産牛を使おうという動きが広がっています。それはSDGsを意識した社会的なムーブメントだと思います。

- ミシュランガイドにも「ミシュラン グリーンスター」という基準が新設されました。

これからは、あらゆるレストランがサステナビリティへの配慮を公表するのが当たり前になると思います。「REGALO」もミシュラン一つ星をいただいていますが、もしもその先にある「Asia’s 50 Best Restaurants」やミシュラン二つ星を考えるとするならば、避けては通れない課題です。

- みんなが少しずつ意識することが、社会を変えるのですね。

自分の店を発展させながらも、食と関わることで少しずつ世界が変わっていくような考え方を、自分だけでなく、部下や家族、お客様にも広めていかなきゃいけない時期に来ているんですよね。「自分が引っ張っていかないといけない」と思い、部下を集めて勉強会を開いています。

- どんな勉強をするのですか?

例えば「茹できらないパスタを食べると、なぜお腹を壊すのか?」。大きくいうと、そこには植物の生命力が関係しています。レシピよりも、料理の成り立ちや素材の原理を教えることがすごく大事だと思っています。何となくおいしいものを作るのは簡単ですが、その先は、自然の素材を熟知し、料理より素材が前に来ないと、感動する料理にはなりません。

食品を選ぶときは、裏を見るクセをつける

- 料理人としてアドバイスできることはありますか?

誰でもできるエコ活動は、食材を買うときに、なるべく近くで作られたものを選ぶこと。東京在住なら関東近辺で作られた野菜を食べることで輸送時のCO2削減になります。そうやって意識して考えることは大事ですよね。

- お店で食品を選ぶときのコツを教えてください。

たとえば、漬物ひとつとっても、着色料や保存料が入っているものもあれば、そうでないのもあります。だから、裏側の表示を見て、なるべく無駄なものが入っていない商品を選ぶといいと思います。原材料は多いものから順番に書かれているので、僕は一番最初に書かれている原材料を見るようにしています。原産地もわかりますしね。裏を見るクセをつけるだけで、全然違うんじゃないかな。

インタビューを受けて

SDGsは社会のためじゃなくて、自分のため。誰かのためにやっていると思うと続かないと思います。「森林伐採は確かに良くないけど、森林を守るために我慢するのはいやじゃない?」って思うのは真っ当なことです。自分の利益になると思って続けていくことが大事だと思います。

小倉 知巳さん
イタリアンレストラン「REGALO」 オーナーシェフ
HP:https://www.regalo-ristorante.com/

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