まとめ読み その5
12月2日
ついに風邪ひきました。
訓練が終わって元の刑務所に帰るため、独居に移り、工場には出ず、舎房で嫌いな袋貼りをやらされる。
やっと帰れるっていうのに体調は絶不調だ。
12月14日
毎日のように俺を苦しめる夢。
近くに住む、ひとり人暮らしのばあちゃんは、夏の暑さにダウンしてた。
途中で何か遭ったら嫌なので、銭湯行くのに付き添ってくれないかと連絡があった。俺はすぐばあちゃんの家に行き、俺の部屋まで連れてくることにした.,
急いで風呂を沸かしてばーちゃんを入れ、クーラー全開にして、初めてばーちゃんの背中を流してやった。
湯上りに冷たい牛乳を出してやると、今まで見たことないほどの嬉しそうな顔をしてくれたので、少しだけ孝行ができた気しがした。
部屋にクーラーのないばあちゃんは、「気持ちいいねえ」を連発していた。
俺の大失敗はそのあとだ。
涼しい場所でくつろいでいるばあちゃんを、また、あの蒸し風呂のようなアパートに送って行ってしまったんだよ。
どうしてあの時ばあちゃんに、「涼しくなるまでここで寝泊りしなよ」って言えなかったのか。
これが今も深く、心に残る失敗なんだ。
ばあちゃんと生活するのは嫌なわけじゃない。大好きだったからね。 どうして、アパートにクーラーをつけてやるとか、そんなことも思いつかなかったのか。
年寄りはクーラーが嫌い。そんな風に思っていたのかも。
懲役に来るようになって、真夏の暑いなか、独居に閉じ込められたまま逃げ場もなく、自分が苦しめば苦しむほど、あの時のばあちゃんの苦しさが分かって胸が苦しくなる。
こんな風に後悔してもどうにもならないのに、それだけに申し訳なくて、かわいそうで苦しくなることってないか?
夏が来るたび、思い出して、一生苦しむんだろうな。
ああ、去年の夏、おふくろの壊れたクーラー、買い替えておいてよかった。
12月7日
弁論大会見せません
ここは弁論大会ってのがあるんだって。
出場すれば加点だし賞を取れたらビッグボーナス確定だからみんなこぞってエントリーしてたのに肝心の俺たちは見に行かれない。移送待ちの身分だからだ。
見たかったんだよね。
12月8日
ナチュラルなからだ
シャブも打たなきゃ葉っぱも決めない。酒も飲まなきゃたばこも吸わず、規則正しい睡眠とって飯は時間にちゃんと食う。刑務所のルールは俺の体をどんどん浄化する。
12月9日
起床点検シャリ三本
桜木町に留置されたとき、吉田さんが東京に再逮捕で移送されされる俺に向かって言った言葉だ。「起床点検シャリ三本。明ければ満期が早くなる。どこへ行ってもみんな一緒だ。がんばれよ。
12月10日
クリスマスって・・・あまりかんけいないです。
12月11日
調査ってなに?
今日も1名、元の施設に送られた。
朝からしとしと降る雨で、運動は中止。長い一日になった。
この袋貼りは、調査中のやつらと同じことやってんだから懲罰に匹敵する。
俺にとっては、この作業が一番苦手なのだ。
調査ってのは娑婆で言うなら逮捕だな。留置場、ここでいう「取り調べ房」に入れられて警察の取り調べの様に「調べ」があって、判決「言い渡し」となる。実刑「禁固刑」をうけて終了だが、考えてみるとしゃばのルールと同じだね。
月形編。このあたりから面白くなるよ。
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