覚えのある顔

12月24日
 工場の班長の顔は見たことがある。やっと思い出した。府中時代の仲間の舎弟だ。配食やってたその舎弟のおかげで、兄貴がいた俺たちの部屋はいっつも大盛りだったな。
 するともう一人見覚えのある顔が。どこだろう。府中の17か?15か?いや違う駄目だ。思い出せない。
 だから聞いてみた。向こうも同じこと思ってたらしい。互いの経歴からすぐに判明。甲府の8工場だ。俺が来てすぐ出所した人だが記憶には残っていた。話したこともなかったのにね。
 しかし娑婆ならともかく再びこんなところで出会ってしまうのは情けない。刑務所という最低最悪の場所にいる自分を見せてたわけだから、娑婆に出て、少しはましな人間になっての再会なら、かっこつくけど、  こんなところでの再会は、人生逆転どころか一歩も前に進んでないじゃんか。
 13年前と何も変わっちゃいない馬鹿な自分を見られて恥ずかしいよ。
 受刑生活。知ってる顔を絶対に見たくないのが本音だな。
 ところで13年ぶりの彼は老けて見えたが、彼が言うには俺は13年前と全く変わってないという。この辺は喜んでいいのかな前田英夫君。

若いころは老けて見られたのになあ

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