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担当交代セレモニー

2014、4、11
連休がやっと終わってホッとしているが、今日も何も変わり映えのない一日だったので、昨日の話の続きでもしようかな。
 今でも納得いかない行事ってのが府中にはあってさ、この時期、新入りの刑務官と同時に、古い職員の転勤や移動の時期でもあるわけだ。
 本当なら工場の担当が変わるなんてことは極秘の事であって、ある朝突然変わってるものなんだけど俺がいたころの府中17工場はちょっと異常だった。
 本担当や、副担当が移動なんて事は話しちゃまずいとされてるだろうに、平気で言ってくるどころか、色紙を出して、「後藤、副担当は今度18工場の本担当になるから今日で終わりなんだよ、これにみんなで寄せ書きしてくれ」って本担当が言ってくる。
「休憩時間にですよね」というと、「今日はもう時間ないから今回せ」って作業中だろ。
変なのにパチられて連れてかれんのは俺たちなのに勝手なこと言ってるよ。
 そして時間がないという意味は、作業を早めに終了して、副担の栄転さよならセレモニーがあるからだ。全員整列させると本担当が副担が今日で終わりということを告げ、これまでの経歴を話し出す。そんな事どーでもいいよって感じなのは俺だけか?
 そして工場の総班長がいつの間に頼まれていたのか名前を呼ばれると模範的な返事で前に出て、「感謝の言葉」なんてのを長ーく読み出す。それもどーでもいいっつーんだよ。
 どこからやって来たのか見知らぬオヤジがデジカメもって、その場面を写真に収めている。おいおい、刑務所の中で写真なんかとって言いのかよ。俺の顔なんかとんじゃねーぞ。

最期にこのセレモニーの主人公である副担が一言。べシャリのうまいおやじだと結構引きこまれるんだろうね、泣いてんのがいるよ懲役には。昨日まで何人も懲罰に送られてるってのにお別れがさみしいっていうのかよ。人見なんて若いのは号泣してたよ。
 なんかおかしくないか、このシチュエーションは?昨日までうるさく言われて何人も懲罰に飛ばされ、どっちかって言うと俺にとっては刑務官は敵だけどなあ。
 まあ、これは俺が東京拘置所に勤めたときの最悪なオヤジと接してた経験からトラウマになってて異常だといわれても仕方ないけど。
 最後には通路に懲役が花道を作る。そこを渡された花束と色紙を持った副担が皆に声を掛けながら退出するって行事だ。
 馬鹿らしくてやってられないからしかとしてんだけど、人見とチラッと目が合うとまだ号泣してやがる。すごい感受性だ。そして近づいてきた副担に手を伸ばして握手を求め「あざーす」を繰り返してはなかなか手を離さない。宗教入ったらのめりこむタイプ間違いなし。
 まあ、東京拘置所のオヤジと違って俺だって会話することは一つ二つあったし、助けてもらったこともあったよ。それでもこのセレモニーは大げさすぎて、「寒!」って感じ。

ほんとに良く泣いてたよ。

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