正常と異常の間で

2014/11/30 記
 続いて今日は後遺症についての話だ。
 シャブでぶっ飛んでしまって、現実の世界に戻ってはこれたものの、まだ完全に戻りきれていないようで不安だという人は結構いる。
 甲府に務めた時のヒデさんは、拘置所から来たのではなくて病院から来たという珍しい人だ。
 逮捕されてから病院に送られ、こっちの世界に戻ってくるまで様子を見られていたんだろうね。
 シャブを使用すると、止まってる車に人影が見えるらしい。
 ある時は車の中から男たちが指差して笑っているのに腹を立て、近づいて怒鳴っても開けないことに怒りは爆発。散々蹴飛ばしてみたものの無人だった。持ち主に目撃され、しこたま修理代を払って和解した。
 そしてある時はワゴンの中で数人の男たちに連れ込まれた女性が泣きながら助けを求めていぬのに遭遇。
 これは大変だ。「何やってんだ」と、大騒ぎしながら窓を叩くが開けないので、石を拾って窓を叩き割るがこれまた誰も乗ってない。
 これで逮捕だ。

そんなヒデさんと運動へ行く際に外で整列していると、外部から来た一般の業者のワゴンが止まっていた。
 配達してるのか車は無人だった。

 その時俺の隣に並んでいたヒデさんが悲しげに俺に言ってくる。


「なあユタカ、俺はもうああいう誰も乗ってない車を見ても何だか人が乗ってるように見えちゃうんだよなぁ」

だから俺、試しに言ってみた。

「ああ、乗ってますよね」

そしたらヒデさん驚いて

「なに!ほんとか!じゃあ錯覚じゃないのかよ!…ええ?運転席側か…」

とか何とかいって、車が気になって仕方がない。オヤジの気をつけー、前へ進めーの声も耳に入らないようで、

「おい、ほんとか?乗ってるか」

と、キョロキョロしてるうちオヤジに
「どこ見てんだ!」って連れてかれちゃったよ。
自分が正常だってこと確信してもらおうと思ってのことだったんだけど、悪いことしちゃったな。
 その後ヒデさんが罰明けで行った工場に追っかけて行ったけど、あの時ほんとに乗ってたかどうかは言えないままだ。(笑)

PS
現在保護会で共に生活している藤田さんは、俺が絵日記の公開をたまにサボってる原因が、ノートの文章をスマホで打つというこの上ないめんどくささにあると理解してくれた。
 だからノートを全部渡して文字打ちしてもらい、LINEでおくってもらことにした。
 なんと勝手なお願いか、しかし嫌な顔ひとつせず受け入れてくれる人の良さに甘えて、悪いねと言いながら全部預けた。
これでこの公開のプレッシャーから解放される。(笑)

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