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誰にもそうなら許せる気持ち

2014/7/3 記
 新入は最初の10日間は、安全教育とかで毎日担当台に呼ばれ、作業の心得を読まされてはサインと指印をして作業場へ戻る。
 これで何が起きても教えを守らなかった自己責任となる。
 最終日にはハンドリフトの講習がある。新入にビデオを見せてハンドリフトを教えるのは俺の仕事らしい。そういえば俺も来た時、
「ハンドリフトを使ったことありますか」と聞かれて、前刑で使ったと答えると、それなら大丈夫とサインして終わった。だから同じようにして終わらせると、副担がすっ飛んできて
「ちゃんと本人にやらせて教えろ!横着してんじゃねえよ」
と。また、この言い方に腹が立つのだ。別に横着してねえよ。自分の時と同じにやっただけだ。何があるなら初めからそういえばいいじゃねえかと喉まで出かける。
 そして配食。
 おかずが均等に配食されてるかオヤジにチェックしてもらうのが懲役なのだが、副担は細かい。
 スプーン片手にあちこちを分配し直し、おかずがズタズタになるまでやる。
 そして一言。
「もっと慎重にやれ。いい加減すぎる。ダメだこんなんじゃ」
 この野郎調子に乗りやがって。
「チッ。いい加減かよ」と、反射的に口に出る。それもそうだろ。俺には全て均等に見えてるからチェック頼んだんだ。そしたら聞こえたんだな。
「おい、脅かすわけじゃないが前にいた係は配食でずけもりしてると言われて二人上がってるからな。」
何言ってやがる。俺はもう仮釈半分諦めてるからその話にはビビらないぜ。むしろ懲役にケチつけられる前にお前にケチつけられて上がりそうだよ。って感じだ。
 それからずっと気分が悪くイラついてんだけどこの副担は、工場内のあちこち捕まえちゃ細かいことをうるさく怒鳴り散らしてるのを見て、
「ああ、こいつは誰にでもうるせえんだな」と思ったら何だか少し許せたよ。
 明日からはこいつにグーの音も位わらぬように完璧にやったるぜちくしょう。

PS とにかくうるさい男だった。
この人とは随分戦ったよ。

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