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袴田事件の無念

2014、4、12
先週「袴田事件」の犯人が再審請求が通り東京拘置所から釈放された。
 俺が東京拘置所に勤めていたころ死刑囚15人のファイルの中に彼の名はあった。作業上、毎日目にしていので、なんとなく他人事とは思えずニュースに耳を傾けていた。45年ぶりの娑婆じゃあ世の中未来都市のように変化しているはず。
 お金も変わった。駅で切符を買っている人も見かけなくなったし携帯電話なんか見て触ってどう思うのだろうか。俺が生まれてすぐに収監されて昨日出てきたって感じだぜ。
 全く想像がつかない。しかも警察のでっち上げによる冤罪という話だ。いくらもらおうが彼の人生は取り戻せるものではない。いつの間にか老人になってしまったんだろうな。
 自白を強要し、証拠をでっち上げた刑事は、一人の人間の人生を奪っておいて、ただで済まされるのだろうか。殺人と同じだろ。彼は45年間殺されていたんだ。

でもさ、警察はそんなことしないと思うだろ。市民を守るヒーローなんだと。
・・・・違うね。もちろんそんな奴もいるかもしれないが、そうじゃないやつも確かにいる。現に俺の前刑は、奴らに作り上げられたものだ。それによって4年半の実刑を食った。
 無罪だったとは言わないがやってないことを自白させられたのは事実だ。一緒に逮捕された女を助けたい気持ちを逆手に取った汚いやり方でね。
女を助けてやる代わりにこれにサインしろ。
それを信じた俺が馬鹿を見ただけだった。取り調べなんてないよ。夜中に呼び出されてただサインするだけだ。内容なんて見せないよ。
「女は助けるんだな」「大丈夫だ。約束する。」そんなの大嘘だ。平気で言嘘をつくんだよ。
 俺には、あの袴田の無念が痛いほどわかる。

だから警察は信用できねぇ。


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