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じいちゃんの戦争

2014/8/14 記
 お盆だからね。昨日に引き続き、やはりばあちゃんから聞いた戦時中のじいちゃんの話をするよ。
 俺はじいちゃんをどちらも知らない。いつも話をする母方の祖父は海軍で戦地に赴いていたらしい。
 実家にいたばあちゃんは
ある日、昼寝をさせていた、まだ幼いお袋が急に大声で泣きながら玄関で何やら探し出したと言った。
 どうしたのか聞くと、父が帰ってきたのにすぐに見えなくなってしまったので、また出掛けてしまったのかと靴を探してると言ったらしい。
 ばあちゃんは小さなお袋を諭すように言った。
 「お父さんは今、お国のために戦争に行ってるんでしょ。この前皆で見送ったよね」
 しかしお袋は聞かない。
 お父さんは帰ってきて私を布団から抱き上げて、
「紀代江ーっ」と叫びながら強く抱きしめたのだと言って、痛い痛いと泣き止まない。
 その様子を見て、ばあちゃんは自然と涙が溢れ出し、心の中で諦めたように覚悟を決めて、お袋のことを泣き疲れて眠るまで抱いていたという。
 そして何日かが過ぎた頃、じいちゃんの戦死を知らせる通知が届いたが、その日付も、時間もまさにあの時、小さなお袋がお父さんが帰ってきたと泣いた日時と一致した。

 じいちゃんは命を落とす瞬間に愛しい娘の名を叫んだのだろうか。
 心霊も幽霊も信じないけれども、肉親の愛は時にこのような形で伝わるものなのかもしれない。
 やはり戦争って悲しいね。

PS  実は武二郎ってのはこのじいちゃんの名前なんだ。このブログ、初めはアメブロで出してくれてたんだけど、日記を掲載するにあたって本名でいいかという問いにオーケーしたのだが、電話のそばで聞いてたお袋が、内容が内容なのだから絶対本名はやめろと口を挟んできた。
 まずいことを聞かれたが、じゃ、どんな名前ならいいんだよ。と譲歩すると、武二郎にしろと。
 なんだそりゃ、と聞くと、あんたのおじいちゃんの名だよ。って。

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