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それを吸ったらダメゼッタイ

2014/12/11 記
 今日もマメセンの1日。昨日のハーブの続きをしようか。
 俺の草の師匠は数多かれど、やっぱり1番の先生は古田くんだ。
 20歳の頃、丁度、営業出るための試験講習してる頃、10歳年上の先輩が古田くんだ。
 成績も良く、スポーツ万能、スタイル良くってダンスのプロ。
 当時イレブンpmなんて深夜番組のディスコ大会に飛び入りで優勝するようなブレイクダンスの達人だ。
 ツアーコンダクター上がりで英語もペラペラ。友人には外国人が多かった。
 そこから古田くんは色々な草を入手する。
 古田くんは他の人とは草の楽しみ方が違っていた。
 良くってディスコ(今のクラブ)に連れて行ってくれて踊りや、ブラックミュージックを教えてくれた。
 とにかくかっこいい人だったな。
 そればかりでなくユーモアに溢れ、一緒にいるだけで楽しい人だった。
 「今度は俺がいい草持ってきますよ」
なんて適当なこと口走ると、
「よせ、男は一度口に出したら必ずやらなきゃダメだ。不確かなことは口にするな」
 何て、約束事にも厳しい人だった。
 「シャブならいつでも」
と言いたいところだが俺は黙っていたっけ。
 不思議と薬関係には厳しい人で、コカインやLSDが手元にあっても、
「これは薬だからゴトーにはやらせられない」
 と、言っていた。
 今思うと、草と違って、ハマったら大変だと俺のことを気遣ってくれていたのかも知れない。
 ある日ハシシを持っていた古田くん。ハシシというのは大麻樹脂のことだ。黒い粘土のようなもので、やはり煙にして吸うのだけれど、この、何でもスマートな古田くんは唯一、手先が器用じゃなかった。
 アルミホイルを使って作った自作のパイプはヘンテコで、会社の帰り、物陰に隠れて所々で吸うのだが、やりにくくて仕方がない。
 2人ともいい感じになると古田くんはコーヒを飲みたがる。
 喫茶店の梯子が始まるのだ。

「何飲む?」

「自分はブレンドで」

「毎回それだな、ブルマン飲めよ。
お姉さんすいません、ブルマン二つ」

ウェイトレスにそう頼むと気分がよさそうだ。道端で踊り出すとみんなが足を止めて古田くんのダンスを見ようと人の輪ができた。

「お待ちどうさま。ブルマンです」

ウェイトレスが立ち去ると、古田くんはコーヒー一口啜り、

「やっぱコーヒーはブルマンだなあ」

とか言って目を閉じて息をひとつ。
 するとさっきのウェイトレスがやってきて、

「すいません、それモカでした」

なんて言ってたくらいだからほんとはコーヒーの味なんてわかってなかったと思う。
 古田くんがツアーコンダクターの時、海外旅行にいっても、女も買わない、酒も飲まない、なんて人がいると草をすすめたりしてたってんだからよくパクられなかったよ。

 喫茶店を出て、最後にもう一服と、会社のあった西新宿の小田急百貨店のトイレにはいり、個室に2人で入った。
 鼻くそほどのかたまりを、緻密なパイプに乗せて火をつける古田くん。

「あっ」

パイプの先からハシシが落ちてしまった。パイプの出来が悪いのだ。

「まいったなあ」

と言いながら汚れた床から、なんとか落としたハシシをつまみあげ、再びパイプに乗せて火をつけた。
 息を吸い込んだその瞬間、

「うっ!臭え」

と言った途端に、狭い個室にうんこ臭が漂った。
 古田くんはうんこに火をつけて吸っちまったんだな。
気分の上がってる古田くんは笑いながら指先のうんこを壁になすりつけていたが、俺は死ぬほど笑ったよ。
 あいつ今何してるって番組に出れたら、俺は必ず古田くんを指名する。
 会いたい人ナンバーワンだ。

PS
かれこれ40年も昔の話になる。
俺はこの間に一体何を築いたのか。
そして何を残したのか。
妻子を不幸にさせ、母を悲しませた後悔だけが、今の俺に残っているものだ。
愛した、かけがえのない人をも、見えなくさせる。それが麻薬だ。
 絶対に手を出してはいけない。
この日記を読んでくれてる人に、それが伝われば、馬鹿な奴と思われてもいいかも知れない。

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