再犯の風呂はカラフル

2014.1.28
佐賀の少年刑務所から帰ってきて、ふろに入るとき思うのは、目に入ってくる色が違うね。
 再犯刑務所の風呂はカラフルだ。初犯とは一味違う。
 ただこの入れ墨ってのはさ、仕上がってる人は全体の一割ぐらいじゃないかなあ。
 「金、ひま、根性」って言うらしいよ。入れ墨を最後まで仕上げるために必要なものは。このうちどれか一つでも足りないと仕上がらないんだってさ。 昔、龍王太郎の入れ墨を全身びっしり入れたお父さんに聞いたんだ。
 俺には、金ヒマ根性の3点のうち、有るのはヒマだけか。
 俺がしつこく刺青の意味を聞くと、そのお父さんは背中の龍王太郎がなぜ鏡を持って龍と闘っているのか、なぜ鏡には女の顔が映っているのか、嫌がらずに物語を話してくれたよ。それからは俺も興味を持ってずいぶん調べたし、描いてもみたよ。

知人のひでさんは全身刺青で小指も欠損。ちんこは玉でぼこぼこのやくざ三点セットの揃ったうえ、これまた恐ろしい人相をしている。歩いてるだけで日に何度も職質にあい、子供はママの陰に隠れる。そんなひでさん、実は優しい人で、痛みに強いのも特徴の一つだ。
 ある日俺は、そんな秀さんの亀頭の真ん中にあざのようなものを発見。聞くところによると、少年院で我慢比べで入れた刺青だという。そんなとこまで入れてんのかよ。なにが入ってんのかのぞき込むも、秀さん絶対に見せないし、教えてもくれない。甲府の放免祝いに石和温泉の風呂でついにおれは、それが何のかつきとめた。こんな怖い顔してちんこの頭にハートマークだった。
「なんスか。柄にもないハートですか。似合わないなあ。」というと、あの怖い顔に薄笑いを浮かべてこうひとこと。
「若気のいたりだ。」

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