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天才っているんだ

2014.2・22
 今日も狭い部屋に閉じ込められたままのつまらない一日なので昔話を。
「天才」ってのを身近に見た経験があるかい。俺は一人知ってる。
甲府の 8工場で務めていた時、応接椅子をつくってたんだ。俺はミシンの班長で革張りの皮を縫い合わせる仕事をしていた。
 椅子一つとってみてもデザインをがいろいろあって、いろんな革を縫い合わせていくが、ひとつ順番を間違えて縫っても出来上がらない。
 そのうえ、肘付き、両肘、コーナーなんてものもあって、おまけに一人掛けから三人掛けまである
 セットも異なれば、ステッチ入れたり、ギャザーを入れたり、ボタン付けたりチャック付けたり、内側にパイプを通したり、その種類は17種類に及び、独自にマニュアルを作りながら全てを覚えるのに、俺は6カ月かかった。
 それでも毎回作業するときはマニュアルが手放せない。
 向き不向きもあるが、一つも覚えられないでギブアップしていくのも多い。
 そんなときカジノの店長ばかりを狙った強盗団。中国人のユウってのが強盗殺人で11年の刑で入ってきた。この時!天才ってのを俺は見た。
  この中国人。複雑なこの作業を、一度縫っただけで完璧に覚えた。
 ちなみに5点セットx17種類
少なくとも90種類以上ある革のカバーを。一度縫っただけで完璧に。 一カ月も経たないうちに俺がこいつにきくようになっちっまった。
 これを天才って言うんだろ。
おまけにヒマを見つけては図面書いて、中国に帰ったら、自分で作るんだとさ。ひと月で全てマスターしたから、今度は本体の組み立てに作業場移動させろと願い出ていた。
 まだ早えよ。だってお前まだ10年有るんだぞ。

本当にすごい奴だったな。
ああいうやつは、なんでもできるんだろうな。毎日毎日腹減ったと言ってたけど。

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