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年老いた懲役

2014/11/8 記
 今回の懲役では、最初に降りた金属工場、訓練で行った佐賀少年刑務所、帰ってから降りた木工場と、平均年齢が若かった。
 常に上から2〜3番目に年配だったことで
「ああ、俺はいい歳してまだこんなところに」
 と絶望感と居心地の悪さを嫌と言うほど味合わせてもらった。
 これは俺にとって悲しいものの、良い刺激を与えてくれることにもなったよ。
 残りの人生、もう刑務所へ来ることは許されないぞという危機感を切実に脳みその中へ埋め込むことができたと思うからね。
 そういえば運動会の時に、年配の人たちばかりの工場も競技に参加していて、徒競走も、リレーも長距離もダントツに遅れ、なんとか完走する事に毎度拍手をもらっていた。
 年取っても頑張ってなんとか走り抜く姿は確かに立派だよ。
 しかし申し訳ないがここはシャバじゃない。シャバのマラソン大会とは違うのだ。
 進んで参加しているわけじゃない年配の人もいたと思う。
 あの時、ゴール寸前のふらふらのお爺さんに対して俺が送っていた拍手は、
「もう少しだ頑張れ」
というものではなく、
「かわいそうに…」
という同情の拍手に他ならなかった。
 こんな言い方は失礼かもしれないよ。頑張った人に対して。
 でも、他人に同情されながら懲役やるっていう事には俺は絶対耐えられない。

 この調査房の掃夫に年老いた懲役が一人いる。
 どうしてかな、作業している姿に気の毒さを感じてしまうんだよ。
 そしてまた自分に言うんだ。
もう絶対最後にしよう。
 あの歳になって刑務所はゴメンだぞって。
 でもさ、あの年老いた懲役も、今の俺の歳の頃そう思っていたのかもしれないな、
なんだか胸の奥が少し痛い。

PS
悲しいかな。
こんな決意はクソの役にも立たなかった未来に俺はいるよ。
でも諦めてないよ。人生わずがな残り時間になったけれどね。
(写真)
俺がお袋の老人ホームに送った絵葉書。みんなに見られるのにと怒っていたけど、何度も送るうち結構受けてるようで、しまいには、
もっと綺麗に写ってるのにしてよ。
なんて言ってたっけ。

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