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前々回、逮捕の瞬間

2014/10/4 記
 "何とか警察24時"とか、"警察密着"なんてテレビ番組もすげー多いね。
 特に薬物でパクられてる奴の映像見てると他人事とは思えなくって身に詰まる思いがするよ。もうこんなことしてられる時代じゃないなって。
 しかし、何日間もつけ回されてる奴は気が付かないかって?
 うん、わからないんだよな、これが。
 「まさか俺が」とか、
 あれっと思うことがあっても
 「気のせいだ」とか、つい自分に都合のいいふうに考えてしまうのだ。
 前々回の逮捕の時、8ヶ月間内偵入れられていたのに全く気づかず、俺の警戒心と注意力の無さが浮き彫りになる逮捕劇だったよ。

 今回の連休はそんな話をするかね。
 その8ヶ月間の内偵で俺たちの全ては調べ尽くされていて、あとは現行犯でパクるだけだったんだろ。
 横浜で、薬で商売している知人の手伝いを買って出て、時折俺も、現場に出ていた。
 他のやつには客と接触する時を含めて、警戒して車の外には絶対出るなとか言っておきながら、俺は受け渡しの際、平気で車の外に出る。
 ある日、ネタ元から売り捌く覚醒剤を受け取る時、待ち合わせ場所にヤマを張った私服の警察は27人。
 現場に待ち伏せた。

「後藤が来れば必ず車から降りてくるので逮捕のチャンスはあると思った」

 と、後に刑事が言っていた。
 待ち合わせ場所もドンピシャで、まんまとそこに、たまたま俺が一人で行ってしまったのもついてなかった。
 27人が待ち伏せる中に俺は車を止めて知人を待ってるわけだ。
 しばらくして薬を持って現れた知人に気付き、俺は車を降りて世間話でもしようと近づいたところに、二人の男が知人にタックル。 

「逮捕しろぉ!」

 と叫んだ。
 俺は、またまたぁ、知り合いの悪い冗談かと笑ったが、知人の顔は真剣そのもので、こりゃ、悪ふざけじゃないなと気づき、振り返ってダッシュした。

 するとどうだ。車の中で新聞を読んでた男、モスバーガーで並んでいた男、バス停でバスを待ってた男、弁当屋で並んでた男たち、そこらじゅうの男たちが俺に向かって走ってくる。
 なんだこの正義感に燃えた一般人は!
 全てがスローモーションに見えたよ。
逃げられるわけないな。走って来たのは一般市民ではなく、全員警察官なんだから。
 数人の刑事に抱えられるように現場に連れ戻された時、すごい人だかりになっていた。
 知人から薬を受け取る寸前にタックルされたことで俺には所持はない。この時麻薬特例法で俺は甲府に5年行ったが、知人は9年行った。

 その日から俺は27人に囲まれてて気づかなかった男。のレッテルをはられたよ。
 注意力も警戒心もない。
 こういうのがつくづく向いてないんだな俺は。

PS
この時、俺が現場に連れ戻された途中、10グラムのパケを自動販売機の下に投げ入れたんだ。
それを懲役で話したら、先に出所した奴が見に行っんだ。そしたらあったんだってよ。
現場で、少しでも所持してるものを減らそうと、知人が放り投げた50グラムの封筒は、野次馬に持っていかれたらしく出てこなかった。
 野次馬にいいねしたいな。

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