見出し画像

このことが無かったら五足のくつはできなかったに違いない その6.

サグレスの岬
エンリケ航海王子の肖像画
サグレスの岬。私はこここそが「ここに地果て、海始まる」のように感じる

『サグレスの国民宿舎』

ポルトガルにはポサーダ、 スペインにはパラドールと呼ばれる国営のホテルがある (現在、ポサーダは、ペスターナグループという民間会社の運営)。 国策として観光産業を振興させるために 国が模範となるべきホテルを各地につくったという。
中世から残るお城や、貴族の館など をあるものは豪華に、またあるものは、興味深く手をいれて仕立ててある。
立地は、その土地特有の産業遺産跡や、手つかずの自然の中などであり、 まさにそのホテルそのものが、 その土地の観光資産ともいえるべきものである。

私はいくつかのポサーダをまわった。

あるポサーダでは、中世の囚人室を客室にしているのには驚いた。 なんと部屋には足枷などもそのまま残されており、 中世の雰囲気などではなく、まさに中世そのものであった。
ポルトガルの西南端にサグレスという小さな町がある。 バス停を降りると、あたりには何もなく、 荒涼とした断崖と海だけの「最果て」を感じさせる町だ。
少し歩くと、ポサーダがあった。 白い壁と赤茶色の屋根。 これだけが人工物であり、他は素っ気ないほどに大自然が勝っている。
私は、どこかでこの風景を見たことがあると思った。
そう、それは今の五足のくつがある山の下に 国民宿舎があった頃の風景そっくりだった。

エンリケ航海王子が 「ここに地果て、海始まる」と書いたのはロカ岬であり、 たしかにそこはユーラシア大陸の西の端には違いないのだが、 「最果て」を感じさせてはくれない。
リスボンから近く、交通の便もいいので、訪れる人は多いが、 いや、それ故に、ようやくここまでやってきた、 という旅が人に与えてくれる素敵な感情が沸き起こらないのである。

だが、サグレスは違っていた。
交通は不便で、訪れる人も少なく、 荒涼とした断崖のその前に広がる大西洋の彼方にロマンを感じさせるのだ。
ここは、「終わりと始まり」のインスピレーションを人に与えてくれる。
私は、エンリケ航海王子が、 ここに航海学校をつくった意図がわかったような気がした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?