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【『アメリカンヒーロー』から『ヴァン・ヘイレン』まで・・・。マイク・ポスト、その仕事。】

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〜イントロダクション〜

実に良い時代になった。

韓国やアメリカ、イギリスやタイ、中国やロシアなどなど・・・
その国で放送されている人気ドラマが、大したタイムラグも無く、インターネットを通じ、直ぐにお茶の間で鑑賞出来るのだ。

これが昔なら、版権やら翻訳やら吹き替えやら諸々の事情で、本国放送から一年以上経ってからの日本放送なんてザラの事。

それが今や、ベッドルームに居ながら手元の端末で、地球の裏側のドラマを気軽に楽しめる様になったなんて・・・

昔ならとても考えられない、まさに絵空事。

今や忘れ去られてしまった言葉を、敢えて引用するなら『UFO時代』と云うべきだろうか・・・


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〜『UFO時代のときめき飛行・アメリカンヒーロー』の事〜


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『アメリカンヒーロー』

1981年(日本放映は1982年より)


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丸のなかに『』という、あまりにもキャッチー過ぎるコスチュームが目を引く、所謂『スーパーヒーロー』ドラマだ。

他のヒーローモノと違うのは、へんなコスチュームだけでなく、主人公が宇宙人から貰ったスーパースーツの取説を無くしてしまった為に、まともに飛べなかったり、ちゃんと着陸出来なかったり、建物を破壊してしまったりと、毎回大騒動を巻き起こす羽目になってしまっている事だ。

これがスーパーマンのクラーク・ケントなら、『電話BOXの中で最強のヒーローに変身!!』てな感じで、ヒーローモノのカタルシスを味わえるのだが、我等の高校教師ラルフ・ヒンクリーは上記の理由により、カッコ悪い事この上なし。

主役のウィリアム・カット(日本語吹き替えは富山敬さん)が、また良い感じのドジっぷりを好演していて、毎回本当に笑わせてくれた。
(このお笑い要素というのはとても大切な事で、当時、人類滅亡の危機とまで言われた、冷戦状態に晒された私達の緊張感を緩和してくれる、薬の様な存在を果たしてくれていたのだ。)

放送が日曜日の夜という事もあり、学校嫌いな私にとって、翌日から始まる憂鬱な学校生活を、少しでも忘れさせてくれる、まさにヒーローの様な番組だった。


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〜ジョーイ・スキャベリーの事〜


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『Greatest American Hero 』1981年
ジョーイ・スキャベリー

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1981年全米第2位の大ヒットナンバーだ。
日本でのヒットはテレビ放送が始まった82年だが、本国アメリカでは前年に当たる81年のヒットナンバーになる。

歌うジョーイ・スキャベリーは日本では全く無名だが、そのキャリアは非常に長く、13歳の頃には、あの偉大なるシンガーソングライター『ジミー・ウェッブ』と曲を作り、レコードをリリースしていたという。

ダンディな歌声に漂う大陸的な大らかさは、その優しい人柄を映し出す鏡の様なものだ。

全米第2位の大ヒットシングル『アメリカンヒーローのテーマ』を収録したアルバムも、シングル曲に負ける事のない、実に充実したAOR的楽曲と歌声をパッケージングしているのだが、そのジャケットが良くなかったのか、まさかのアルバムチャート102位という、残念な結果になってしまったのだった。

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〜アメリカに於ける劇伴大物作家〜

『マイク・ポスト』

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テレビ番組やドラマなどの音楽を担当し、数多くの作品を残している、アメリカを代表する音楽家の一人だ。

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アメリカンヒーロー』の他に、日本でも放送されていて人気だった『ロックフォードの事件メモ』、『特攻野郎Aチーム』、『天才少年ドギーハウザー』を、覚えている方も沢山いらっしゃる事だろう。

『ロックフォードの事件メモ』

『特攻野郎Aチーム』

『天才少年ドギーハウザー』

そんな傑作テーマ曲を次々と生み出す、マイク・ポストのレコーディングメンバーは実に豪華だ。
ラリー・カールトン
リーランド・スクラー
マイク・ベアード
・・・などなど。

錚々たるメンバーにより紡ぎ出される、洗練されたサウンドで、ドラマは更に完成度を高めていくのだ。


そんなマイク・ポストの仕事ぶりに白羽の矢を立てた男がいた。

エドワード・ヴァンヘイレン』だ。


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〜『VAN HALEN III』の事〜


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サミー・ヘイガー脱退、そしてデイヴ・リー・ロス再離脱後に加入したゲイリー・シェローンとの唯一のアルバム『VAN HALEN III』(1998年)が、他のVAN HALENのアルバムと、一線を画した作品になっている理由は、そのプロデュースにある。

ドラマなどで培った『ダイナミックなプロデュース能力』を持つマイク・ポストが携わった事で、『コンセプトアルバムの様なドラマティックな作風』に仕上がっているのだ。

成る程。舞台俳優の様な高い表現スキルを持つゲイリーは、まさに適任というしかないだろう。

しかしファンや各方面からの評価は余り芳しくなく、セールス的にもアルバムチャート最高4位と、1位になる事が出来なかった。
(アルバム『1984』以前を考えれば、充分に素晴らしい結果だと思うが。)

そんな私も、日本リリース前にハワイでカセットテープを購入し、滞在中から帰国するまでの間、ずっと聴き込んでいたのだが、当時の印象は『地味』と、あまりピンときていなかった。
しかし最近漸くこのアルバムの真価が分かり、今では好きな作品の一つになっている。

惜しむらくはエディのギターがミックスの段階で、少し小さくなってしまった事と、シンガロング出来そうなキャッチーな曲が少なかった事だ。


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〜エンディング〜


ウィリアム・カット演じるヒーローは、なかなか上手く空を飛ぶ事が出来ない、ドジでダメな男だ。

でも、いつかは絶対に上手く飛べる様になる事を我々視聴者は知っていた。

何故って?

マイク・ポストが作った主題歌の持つポジティブな響きが、全てを物語っている。アメリカンヒーローは大切な事を思い起こさせてくれるのだ。

ハードな日常だからこそ、ユーモアと夢が必要な事を。


昨年、人類を襲った未曾有の危機は、今も我々の生活を脅かしている。

だが、私達はホームステイの最中でもテクノロジーの進化により、ベッドルームに居ながら手元の端末で、地球の裏側の世界へ飛んで行く事が出来るのだ。

昔ならとても考えられない、まさに絵空事。

『UFO時代のときめき飛行』

主題歌は勿論、マイク・ポストのあの曲で。

さあ、世界へと。

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