Q1:完全制覇家はどのような日常を送っているのか?

御山人:日常と言えば、まあ、やつがれ(注:このマガジンにおける御山人の一人称)は勤め人ですから、平日はサラリーマン仕事ですわな。社内SEの仕事。しかしこれは、面白くない訳ではないですが、日々の糧を得る為にやっているだけですな。

じゃあ休日とか夜遅くとか、仕事をしていない時間は何をしているかというと、研究、取材、執筆に集約出来るでしょう。やつがれは、生計という観点を別にすれば、本業は「神話伝説研究家」でして。殊に、朝廷に従わず歴史の表舞台から消えて行った「まつろわぬ民」と、その信仰の痕跡を探り、それを再度掘り起こして後世に伝える事を天命としております。その為に、13年前、二十代半ばに、WEBサイト「邪神大神宮」を立ち上げ申した。

ですから、研究というのは、そのための読書やネットサーフィンによって、情報を収集・整理する。気になる所はさらに掘り下げる。そしてやつがれは、神話伝説伝承地の「現地に赴く」事を非常に重要視しております。「邪神大神宮」の創建当初から忠実に守って来たコンセプトとして、伝承地に実際に行ったものしか取り上げない、ということがあります。だから、研究の次は、そこで得た情報を元に旅に出て、現地取材するということになる。それを材料に、今度は執筆する訳ですな。執筆していると、資料不足の点が出て来て、再度研究、取材となる。その繰り返しですな。

それと「完全制覇」と何が関係あるのかと言えば、当然なら伝承地は全て網羅した方が良い訳で。代表的なところ数ヶ所しか見ないのと、全て網羅するのとでは、まるで全体像が違って来ます。全て網羅すると、世にある一般的な解説とは異なる、「真実」の姿が浮かび上がって来ます。その「神託」を、世に伝えるのが我が天命という訳ですな。

だから、例えば古代の土蜘蛛伝承については、小学館「新編 日本古典文学全集」の「風土記」に出ている比定地は全て回った。福島県から長崎県までありますな。佐賀県の馬渡島(まだらしま)とか、島での交通手段が徒歩しかないようなところまで足を運んだ。しかし、そうした背景があってこそ、「月刊ムー」の記事が書けた訳ですな。

今取り組んでいるのは、「日本全市町村踏破」でござる。先に述べたように、全部網羅すると、全体像が違って見える。やつがれは神話伝説という、土地に根差したものを研究しているのでござるから、「真の日本の全体像」を得たい。その為にやっておる訳です。例えば京都府の最南端に近いところに、和束町(わづかちょう)という山間の町がござるが、そこに行ってみると、一面茶畑で、宇治茶最大の生産地だったりする。全市町村踏破を実行せねば、和束町の存在自体知らずに終わったでござろう。こういうのが少しずつ積み重なって行くと、全体像が変わってくる訳ですな。

このように完全制覇をしていると、驚きの連続でござる。また、マラソンをしているようなものでござるから、それ以外の事は些末な事になる。例えばやっている最中に、仕事で物凄く嫌な事があったとしても、完全制覇を基準にして、そのまま会社にいた方がいいのか、転職した方がいいのか、経済性やストレスなどを総合的に鑑みて、より完全制覇の妨げにならない選択をするだけ。研究、取材、執筆なども、やつがれにとっては「作品を作り上げる」点で完全制覇の一環であり、そういう意味で、完全制覇以外の事は些末な事象に過ぎない訳ですな。

好きでマラソン走ってる最中の奴が、元気でない訳がない。まあコンディションが悪くてリタイヤしたりすることもござろうが、好きな奴は回復したらまた走る。医者が止めたとしても。完全制覇というのはそういうものでござろうな。自分で鼻先にニンジンを付けて、自分で追っているのでござる。

サポート頂けると、全市町村踏破の旅行資金になります!また、旅先のどこかの神社で、サポート頂いた方に幸多からんことをお祈り致します!