いわゆる手段の目的化を繰り返している

やりたいと思っていることがたくさんある。
3DCGにゲーム開発。色鉛筆、万年筆インク、書写、筋トレ、文章、物語、などなどなど。

好奇心旺盛と言えばいいのか、刺激に弱いと言えばいいのか。
とにかくやりたいこと、できるようになりたいことがたくさんある。

あるはずなのだけれど、最近あることに気づいた。
やりたいことが一向に進んでいない感覚、常に不足を感じているのだ。

きっかけはほぼ日5年手帳に書いている日記。
使い始めて2年目に入り、1年前の日記を目にするようになった。
そこには、まるで今書いたかのような内容が書かれている。

つまりは、進めていないということだ。
この1年、何もしていなかったわけではない。

3DCGではUdemyで学んだことを活かしてオリジナル作品を作った。
書写を続けて多少は字がうまくなった(と思いたい)し、ゲーム開発に向けてUE5も使い始めている。

子どもが生まれ、夜泣きなどで消耗しながら育児生活を満喫している身としては、それなりに行動できているとも思っている。

それでも、なんだかうまくいっていない感覚がある。

それはなぜかを考えてみた。
結局、やりたいと思ったきっかけに対し、遠回りをしていることが原因だと思われる。

僕は万年筆インクが好きだ。
パイロットの色彩雫が特に好み。
その色合いに興味を惹かれ、字を書こうとしたり、絵を描こうとしたり、ゴムはんこを作ろうとしたり、いわゆるインク沼にはまろうとしていた。

しかし素直にはまればいいものを、僕というやつは余計なことをする。
楽しむ前に、必要以上に調べ事をしてしまうのだ。

万年筆にインクを入れて字を書こう。せっかくだから綺麗な字を書きたいな。ペン字ではどんな字が好みかな。どういう風に練習すればいいかな。インクを活用するならカリグラフィもいいかもしれない。これも字の一種だし。だとすると道具が必要だな。ペン先の幅はどれくらいがいいのだろう。初心者向けの字体はどれだろう。どうやって練習すればいいのだろう。

いいからさっさとやれ!と言いたくもなる。
極端な話、インクで線を引くだけでワクワクする。実際、今日もした。
なのに、そのワクワクするほど楽しいことを差し置いて、どうやって取り組んでいくかを延々と調べている。

これは蟻地獄だ。
現代、ネットサーフィンと呼ばれるほど、ネットでの情報検索は楽しめる。
新しい情報を知ることは楽しいのだ。
しかも、スマホをポチポチするだけで無限にできる。
簡単にできて、それなりに楽しい。ついやってしまう条件が見事にそろっている。

さらに個人的に厄介なことは、どの分野にも優れた先駆者がいることだ。
いや、そのこと自体は素晴らしい。分野の発展は喜ばしい。
厄介になる原因は、その先駆者と今の自分をおこがましくも比べてしまうことだ。

先駆者の優れた技術で生み出された結果を再現できている自分を、想像してしまう。
空想や妄想と言ってもいいかもしれない。

先駆者の行動の積み重ねも考えず、先駆者の技術レベルで自分のやりたいことが実現できている様を想像する。
脳内で膨らんだやりたいことが高いレベルで達成できていると妄想する。
情けないことに、これでちょっとした満足感を得てしまう自分がいる。

苦しくなるのはここからだ。
先駆者の技術を身に着けた自分と、現在の自分。
当然ながら大きな乖離がある。

すると、やりたいことのハードルがすげ変わっている。
先ほどのインクの例でいうなら、線を引くだけで楽しめるはずのものが、綺麗な字を書いたり、素敵な絵を描けないと楽しめないものになってしまう。
なぜなら、想像した自分はそれができているから。
できていないと、やりたいことではなく、楽しくないから。

すぐそこ、足元にある楽しさを見ず、想像だけで先に先にと進んでしまった欲求だけが暴走し、自身への要求を強めていく。

つまりは、インクを楽しむためには、字や絵の練習をたっぷりして、ぼんやりとしたイメージの「できている自分」にならなくてはいけない、と思い込んでしまうのだ。

こうなるともはや趣味ではない。
楽しいという気持ちを味わう手段ですらなくなる。
いつの間にか、「インクを楽しむ」が「インクを楽しむために字の練習をすする」に変わり、「字の練習をする」だけが意識に残ってしまう。

こうして、自分を苦しめる手段の目的化が完了する。
しかも目的がぼんやりとしているため、終わりがない。
ずっと、目指す先もなく練習をし続ける。
だから、先に進めた感覚が乏しいのだ。

じゃあどうすればいいのかというと、先述したように「さっさとやれ!」という結論に至る。
調べ事しなければいい。
そもそものきっかけを思い出せばいい。
字の練習をするなんてルーチンを作らず、ただインクを使って遊べばいい。

ちなみに、このnoteだってそうだ。
ノートにつらつらと頭に浮かんだことを書き出すことが心地よかった。
いつの間にか出てきた考えに自分で驚き、ウンウンと頷くのが楽しかった。
だから文章を書きたいと思った。
だというのに、ここ1年は文章力を高める!文章で仕事をする!という本ばかり読んでいた。
なんとびっくり、文章を書いていない。

誰かからの評価のためでなく、自分が楽しい、やってみたいと感じたきっかけのために、行動する。
そのためにも、感じたことが濁る前に、「さっさとやれ!」ということになる。

だから、この文章も本で読んだ書き方なんて気にせず、思ったまま書いている。
インクも、つい先ほどお手本を見ずにただ字を書いてみた。

なんと頭がすっきりと、楽しいのだろう。
没頭できている感覚がある。今まさに。

自分自身の心の健康のためにも、ネットに触れすぎないように。
優れた先駆者には、健全に憧れよう。

自分のやりたいことを実現するために、本当に必要な最低限のことを学んで、あとは実際に挑んでみよう。
技術の追及は、やりたいことの実現に困ってからだ。

不慣れで大変なことも多いだろうけれど、ぜひ頑張ってほしい。自分よ。

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