Dream バイバイ。1話目

［推しの夢が見たい！推しの夢売ってくんないかな？なんてそんな会話からヒントを得て思いつきで描き始めました。オムニバス短編にしようかと思っております。］

『時代は西暦2072年、今より少し未来のお話。
私達は夢を売り買いする、夢制作会社
『Dream buy bye』
私はその映像制作の編集者の一人、山口梅子（やまぐちうめこ）。25歳。この会社に入って3年目。

今日も、夢を買いに来られたお客様がいらっしゃいました。
まずはどの様な夢をお求めか、お聞き致しましょう。』

ーー早川智子（40歳）主婦の場合ーー

智子「あのー。私、どうしても、推しの夢を見たいんです。最近、夢すら余り見なくなって。
やっと見た夢も全く関係ない夢ばかり。
せめてもの夢の中で、推しに会って、お話ししたり、楽しい時間を過ごしたいんです。
そんな、夢、売って頂けませんか？！」

この早川さんはとある俳優を推しとして、応援されてるそう。
ただなかなか、地方にお住まいなのもあって舞台や、映画の舞台挨拶なんかのイベントにも参加出来ず、心のモヤモヤが貯まる一方。ましてや、小学生の男の子のお子さんがいるとなれば、泊りがけで推しを見に行くわけにもいかず。
せめてもの思いを夢で楽しめないだろうか？
そう言うご依頼だそうです。

梅子「私も大好きな俳優さんがいますし、仕事で忙しくて、全然会いに行く事も出来ない。そのお気持ちめちゃくちゃ分かります。お引き受け致します。
因みに推し様の好きなビジュアルや役柄など教えて頂けましたら、それに沿ってお作り致しますので、詳細をお願い致します。」

私達の仕事は夢を見させてると言うよりかは、ご依頼に沿った約１時間の映像を作る。
そして、それを特殊な小さいチップに映像データとして埋め込む。

お客様にはそのチップを寝る時におでこに付けてもらって眠りについてもらう。
人は、レム睡眠とノンレム睡眠と言う時があり、ノンレム睡眠はいわゆる深い眠りの時。
人はレム睡眠の浅い眠りの時に夢をみると言われているので、このチップは脳波を読み取り、レム睡眠の時だけ、脳裏に映像を再生させる（正確には映像情報の電波を直接脳に送り込む）事で、夢を見た様な感覚になると言う仕組み。

ただ、脳波にも負担がかかる。
レム睡眠の度に映像が再生されるが、途中目が覚めてしまったら、次またレム睡眠の時に続きが見れる。
ただし、レム睡眠でもノンレム睡眠でもない時間が１時間経つと、それは覚醒したとみなされ、映像は一旦終了。オデコからチップが外れても終了。そしてそれを1回とする。
一回覚醒すれば次にまた見る時は最初からの再生となる。
身体の事も考えて、後、無限に見れたら、コチラも商売上がったりなので、合計10回まで見れると言うルール。
誰にでも使うことはできるが、10回終了した時点で、それはもう映像が再生される事はない。

これらの事を事細かく説明して、注釈など書かれた契約書にもサインしてもらい、約1カ月の時間を貰った。
作品によっては一週間や、数ヶ月要する物もあるが、今回は少し長めに一ヶ月のお時間を頂いた。

さぁ。有名な俳優の夢映像。
どう作ろうか。俳優に直接演じてもらえる程制作費は無いので、既存の映像から抜き出したり、声を拾ってサンプリングして、ボカロみたいにコチラで音を合成して、台詞を言わせると言うように、創作する。
ただ、今の映像や、音の技術は50年前とかに比べても数段進化してるので、ソフトさえ有れば、ボタン一つで可能で、すぐ出来ちゃうだろう。
一ヶ月を要すというのは、まだサンプリングの量と映像の、アーカイブの量が未知だった為、念のため長めに設定している。

案外、待ってるお客様も、待ってる間に楽しみが膨らんで、一ヶ月楽しみにお待ち下さるのです。

一ヶ月後、さぁ、早川様。
お待たせ致しました。早川様の商品が出来ましたので、取りに来て頂けますでしょうか？！

continue…

Dream バイバイ。2話目に続く。