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8年前、アイドルマスターSideMと出会った人の話


前置き あるいは長い言い訳

※2024/5現在 随時加筆修正中
と書くとごたいそうな感じだが単に書き終わらないだけである。

 完全に自分の、モバエム終了の際にも何もできなかったなという後悔とか、ここ数年の質の高いお仕事コラボに関する感謝の念とか、そういった個人的な感情を整理するためだけの文章です。冷静な分析や統計なんかはまるでなく、言葉遣いも美しくないし、一部否定的とも取れるような感想もありますが(特に初期)、すべて正直な感想として残したく主観のみで書いています。

 今では315プロダクションの全員が好きと豪語して憚らないPですが、始めた当初はどちらかといえば苦手からのマイナススタートなので、担当を少しでも悪く書かれて貶された!と傷つく方は見ない方が良さそうです。私は当時の否定的な気持ちも経たうえですべてひっくるめて、今、49人みんなが本当に大好きです。

 また、おそらくものすごい文章量になると思います。人生にSideMが密接になりすぎているがゆえに自分語りも長く、年齢や副業、私生活にまつわる話も多くなります。
 以上を踏まえて、とにかく読むものがほしくて暇な方、読んだうえで反骨的に感想を書きたいなと目論む方などいらっしゃいましたらどうぞお付き合いください。





始めるまえのことなど

 SideMとの出会いはソーシャルゲーム版のリリースと同時なのでもう8年になります。なんだかんだ細々と継続プレイし、唐突に好きの感情が爆発したのが2017年頃からで、それまで頑なに観なかったリアルライブの円盤鑑賞会をしたのが最大のきっかけでした。(これに関しては半ば強引に見る機会を作ってくれた友人Pたちに感謝している)
 なのでリリースからの数年間はそこまでのめり込むというほどでなく、ただ何となく気になるものもあるから続けているといった感じでした。その後、人生の軸をSideMに支えられるなんて想像すらしなかったよね。


 リリース当時の自分は世界に対して相当なひねくれ者で(今でも根っこはそう変わらないのでしょうが)、元はと言えばある種「冷やかし」のような気概でモバエムに登録したあの日のことを今でもよく覚えています。


 当時はいわゆるアイドルゲームの隆盛期でした。リアルアイドルの人気定着に伴い、ゲームの世界においてもアイマスをはじめきらレボやアイカツなど、詳しくなくても耳にしない日はないほど数多のコンテンツがすでに独自の地位を築いていた頃です。
 この頃には『乙女ゲー/女性向けコンテンツ』もすっかり市民権を得ており、2・5次元○○も急成長中、男性アイドルものでは先駆けであるうたプリの人気はすでに確固たるものがありました。
 半端にオタクである私はそれらすべてを把握だけはしていたものの、そもそもアイドルというキラキラした存在があまり得意でなく、また一応は女性でありつつも乙女ゲーの基本スタンスがとんでもなく苦手であったため、まあ一生ハマるジャンルではないな…と斜に構えて眺めていたものです。
(※便宜上「女性向け」の流れで書いていますがアイドルマスターSideMは全人類向けです。対象年齢4歳以上。おはようからおやすみまで。)


 そんななか当時のモバゲーで遊びまくっていた私の目に、定番の『男性アイドルもの』でありつつもどことなく風変わりなとあるゲームのリリース告知が飛び込んできました。

それが【ソーシャルゲーム版「アイドルマスターSideM」】です。

 なんたって、煽り文句が「医者!フリーター!自衛官!理由あってアイドル!」ですよ。どんな理由やねん。そして『ドラマチックアイドル育成カードゲーム』ってなに。気にならないわけないじゃないですか。今となってはもう懐かしいこのネタですが、結果として私はこれのおかげでSideMと出会うことができたわけですから、運命とは数奇なものです。
 絵柄が比較的キラキラしすぎていなかったことも受け入れやすかった。前述のとおりアイドル概念からして得意ではなく、また女性向けにありがちな耽美過ぎるテイストも苦手だったので、アイマスのよく言えば程よく落ち着いた、悪く言えばやや地味なデザインテイストが自分にはマッチしたのだと思います。(言い方が適切ではないかも知れませんが当時の素直な感想です。)

 「アイマスってなんか深夜に見たことあるような?女の子がなんか頑張ってたアニメ?でもこれは男性だけ?しかも理由アリ?ぱっと見の年齢層高くない?そもそもメインっぽい人の隣はヒゲヅラだし後方の男めちゃ見下し顔だしその隣はやる気ない顔してるし、いやアイドルって何??」

 そんな「???」の謎の感情がむしろ好奇心を刺激し、ああまた奇を衒ったコンテンツ始めるのね、くらいのニヒルな感覚で事前登録を済ませました。そこから本登録(サービスイン)まではご周知の通りすったもんだがあったため多少の出遅れはありましたが、2014年7月、私はいちプロデューサーとなったのです。



始めた当初の思い出

 例のメンテを経て、なんだか締まらないローンチですねと半笑いで開始したプロデュース業。とはいえアイマス文化の基礎を全く知らなかったため、プロデューサーという立場や担当という感覚(当時はまだ推しという単語も今ほど一般的ではなかった)も分からず、とりあえずまぁよくあるポチポチ育成ゲームなんだなという程度の知識からのスタートでした。
 すっかり忘れていましたが、モバエム終了に際しP手帳を確認したところ私は初めてのアイドルに「柏木翼」を選択していたことが分かりました。おそらくは「天道輝は暑苦しそう」「桜庭薫はそもそも感じが悪すぎる」で、消去法的にてゅばさを選んだのだと思います。わりとひどい。あと顔面でいえば単純に二次元男性ではタレ目キャラが好きだったからです。

 2018年頃?チュートリアル系が改修された気がしますが、開始当時は確かそれほど親切な案内はなかったとうっすら記憶しています。なんだかよくわからぬまま山村(こいつの顔だけはメンテ中にたくさん見たから覚えてるぞという気持ち)に言われるがまま営業し、街角でスカウトをし、オーディションバトルをしました。オーディションバトルって結局なに?
 比較的ヘルプをきっちり読むタイプではありますが、読んでもそもそも「このゲームの趣旨がよくわからん」。というのも私はゲームとは本筋となるストーリーをまず強制的に読ませるところから始まると思っていたので、モバエムを始めてしばらくはいつメインストーリーが始まるのか?と不思議に思ったままひたすらポチポチしていました。また、本筋をしっかり読んでからイベントに参加したりイベストを読みたい派だったため、最初の数回のイベントは普通に見送ってしまいました。哀れなり無明の民。


 そんなこんなでだいぶ時間が経ってから、自主的に各アイドルの履歴書を見たり、雑誌を見ることでそれぞれのキャラクターを深堀りしていけるんだということにようやく気付きました。そこまで真剣にやっていなかったせいでもあるけれど、ここまでを理解するまでが長かった。この辺は周囲に布教する際にやはり相当なハードルとなった部分でもあります。
 とりあえずはこれにより一連の流れが掴めてきて、アイドルそれぞれに目を向けることができるようになりました。

 そうなると一番最初に気になったのは「山下次郎」です。どう見ても、『アイドル』向けのビジュアルとキャラクター設定じゃない。
 一応言い訳のようにお断りしておくと、私は昔から二次元キャラクターにおいては長らく「タレ目、ヒゲ、猫背、不遇、くたびれたおっさん、厭世家、でも決めるときは決める男」が大好物でした。こう書くとちょっと気持ち悪いくらい合致している。
 しかしそれを差し引いても、アイドルというキラキラしたものを目指すはずのゲームにこのキャラクター設定はいくらなんでも難しくないか?と若干不安にもなるくらい、最初に次郎ちゃんを見たときのインパクトは強かった。しかもなんか不労所得がどうとか言ってるし、趣味は競馬ってそれ公言していいやつなのかい。あとステージ衣装がすごい。
 そこから彼のバックグラウンドを紐解き、きっかけの人「硲道夫」と巻き込む人「舞田類」を知り、彼ら3人がつくるS.E.Mの物語に引き込まれていくことになったのでした。



モバエムのストーリー描写について

 ご存知の通りモバエムは、詳細に個々の感情やその背景を文面で語ることはしませんでした。言葉の端々やわずかな動きの間、そういった些細な事象をプレイヤー自身の手でかき集めながら、それぞれのキャラクター像を組み上げていく作業が必要なスタイルだった。これがまた、人物プロファイリングが好きという(悪趣味な)私の性格に非常にマッチしました。

 わかりやすい表面上だけをさらえば、「山下次郎」という男はモチベ低めの守銭奴で、事なかれ主義で、まあでもやるときはやれちゃう余裕ある大人、という感じに見えるよう作られているのでしょう。
 けれどイベントストーリーなどにおいて硲先生やまいたるとのやりとりを通して、それだけではない彼の複雑な生い立ちや心理が透けて見えてくる。それがとても興味深かったのです。

 実在の人間の人生の一端を見ているようだ、というのはモバエムを8年プレイして最終的に帰結した感想だけれど、この感覚は当初から強く感じたものでした。
 彼ら自身が語らない限り、『プロデューサー』という私はその過去や心境を知る術を持たない。都合のよい天の声や、315プロの他のアイドルがそれを聞き伝えてくることもない。モノローグさえもかなり控えめだったように思う。
 更には終了間際になってようやく気付いたことでしたが、モバエムのストーリーにはほぼ「回想シーン」がありませんでした。現在進行形の、今から先を語っていくことしかしなかったのです。(すべてのイベントを読めたわけではないので、自分の担当範囲においてとなりますが。)
 これはソシャゲにおいて、ひいては昨今のゲームのストーリー描写においてなかなか珍しいのではないでしょうか。キャラクターの秘められた過去や思いを描写するのに、回想シーンを挿入するのはとても効率的です。短い表記でわかりやすく、その人物に何があって、どうして今こうなっているのか、を想像しやすくできる。モバエムはそれを、おそらくは「敢えてしなかった」。

 「彼」を知りたいと思ったならば、その言動にある機微を気にして読まなければ永遠に分からないし、逆に言えば、注視してさえいれば見えてくる気付きがたくさんあった。それがとても興味深かったのです。

 特に次郎ちゃんは年齢的にも落ち着いている世代だし、世間一般的にはおそらく苦労人であろう自らの過去とその苦悩を、誰にでもぺらぺらと喋るような性格ではない。そこに、何事も真正面から真摯に受け止める硲先生と、フランクに見えて不躾に他者の領域に踏み込むことをしない絶妙な感覚のまいたる、この二人との関係性が構築されたことで、
ものすごく、バランスのよい構成だと今でも思う。




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