寳かさね ふくみ天平

「たからかさね ふくみてんびん」と読むお菓子を食べた。
すこぶるおいしかったので、ここに記しておきたい。

このお菓子は、奈良県の信貴山朝護孫子寺の限られたところでないと買えない。
朝護孫子寺は、寅にゆかりがあるお寺である。
今年は寅年、しかも1月1日は寅の日でその最も縁起が良い日に売り出したという。
縁起が良いのは大好きなので、寅年(2022年)の寅の月(2月)の寅まつり直前に朝護孫子寺で買ってきた。
(まつりというと混雑。混雑は大嫌いなので、その前に買ってきたのだ。)

手がけたのは、クラブハリエなども展開する滋賀のたねや。
もともとあった「ふくみ天平」というお菓子をベースに、寅年の朝護孫子寺に合わせ特別な仕様にしたようである。

買ってびっくり。
思ったより重い。
ずっしりである。
朝護孫子寺の後も数日旅をしてから帰宅する予定だったので、少し気が滅入ったが仕方あるまい。

さて、もともとのふくみ天平を食べたことが無いので、寶かさねとの食味比較はできないが、とにかくおいしい。

最中のようなクッキーサンドのような、はさむお菓子である。
はさんであるのではない。自分ではさむのである。

ほろほろとした食感の細長いサブレ2枚、粒餡に覆われた硬めの羽二重もち1つが別々に包装されている。
サブレの1枚を取り出し、袋から取り出した餡もちを載せ、さらにもう1枚のサブレを載せ、パクリと食べる。
1口では食べられない。私の口では3回に分けて食べられるくらいの大きさだ。
餡もちとサブレの絶妙なハーモニー。甘すぎない。お茶にも珈琲にも合う味なのだ。

なお、味とは別に、このお菓子は、その外装にも注目すべきだ。

購入して数日経って帰宅後、のしのような紙が掛けられた箱と対峙する。
その紙には大きく「寅」と、これも筆で書かれている。
横長の赤い紙を、大きく白い扇形がくり抜くような図柄で、その白い部分に寅という筆文字。
側面には「貴晶」という落款があり、誰やねんと突っ込みたくなる。
まさかたねやの社長?と失礼なことを思いながらも、そののしのような紙を外す。

こののしのような紙の裏には、これまた筆文字で大きく「福」と書いてある。立派な文字である。
その左隣に「福を招くには日々感謝の心がけ 貴晶」と筆文字。
また出たよ、貴晶さん!
一体あなたは誰なんだとネット検索すると、なんと朝護孫子寺の管長さまでした。朝護孫子寺内におられる方々の序列は存じ上げませんが、きっと最も偉い方なのだろうと思い、それまでの無礼な思いを恥じたりもする。
さらにその左には次の文章が印刷してあった。

「寅」には伸びる、成長するという意味が籠められています。
草木が芽吹くように、ものごとが新しくはじまり動きだす寅年。
左側にこの一年に懸ける願いをしたため、大切に保管してください。

「寶かさね ふくみ天平」の掛け紙裏左

捨てられないどころか、一年に懸ける願いを書いた挙句、保管せよという。
どうやら大変なものを買ってしまったらしい。
知らずにひと様に差し上げなかったことを喜ぶしかない。

のしを外した後は、包装紙を取り除かねばならない。
包装紙は、寅をイメージした黄色と黒のデザインで、実に縁起が良さそうである。
かと言って包装紙に描いてあるのは寅ではない。
ムカデである。
黄色の背景に黒い筆でムカデが描かれているのである。
寅年だからといって、寅そのものではなく、朝護孫子寺の毘沙門天の使いであるムカデを出してくるあたり、心憎い演出である。

箱は、ふたが包装紙と同じデザイン。
本体は、いたって普通の白いもの。
丈夫な感じなので、何か大事なものを入れて使いたい。

こうして我が家に、またひとつ空き箱が増えてしまった。

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