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日記/円空作

六月九日

 テレビ番組を一人で見ていると「ヲㇿヲㇿヲㇽヲㇿ…ヲㇿ…」と音が聴こえてきた。その音は自分の口から聴こえていた。どんなことばだったか、内容は忘れたが、なにやら自分はそのテレビ番組の中で「ぼくはそうは思いません」
 「なに……てるんですか」などと出演者たちと一緒に喋っている。
 外を歩いていると、丼から溢れるように連想が広がっていった。そのうちに「ヲㇿヲㇽヲㇿ…」ときて、昔のことを思い出すと「くそッ」とくる。それも音になって口から出ている。
 その次には「人間というものは……」ときた。また人間というモノがどうあるべきか、人の道というものは、そんなことを考えている。
 いまのところ確かなことは、金を稼いだ奴や、権力のある奴、大勢から愛される奴よりも、さかなを上手にサバける奴と、小鳥の声を聴き分けることのできる奴のほうが大統領になるべきだ。それはもはや間違いのないことだ。
 風呂に入っていると、「円空作……円空作……」
と云うていた。連想は展開していくうちに、思わぬところからことばで出る。
 何のことかと思ったら小学生の時の彫刻刀のことだ。周りの子らは皆、青や緑やピンクの柄でプラッチックのケースに収められた彫刻刀を購入していたが、自分一人だけはジャケットが円空仏の彫刻刀を買っていたのを思い出した。なぜそんなことを思い出したのか分からない。

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