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日記/山の辺の道

5月19日

 色々と生活がごたごたして、かなり悩んで、5月上旬はほとんど漫画が描けなかったが少しずつ描きだした。
 描けなかったときトーチwebで千葉ミドリさんの『緑の予感たち』を読んだら、これは上手いヒトが現れたと驚いた。 
 このチバさんというヒトは昔から相互フォローだった。たまに上がる絵も漫画も良かったがトーチwebで突然デビューしたので驚いた。ひとつ歳下だそうだ。
 妻は「海くんをおびやかす存在が現れた」と云う。
 このヒトは全体の流れのなかで適切な絵を描く才能がある。これはデッサンの上手さとはまた別の上手さで言葉にするのは難しい。 
 しかも自分より絵に色気もある。ますます上手くなるだろう。山中美容室さんやチバさんや、才能ある同世代がトーチでデビューしてくれるのはありがたいことである。

 またこのヒトもひとつ歳下なのだが、昔からよくTwitterで自分の漫画の話をしてくれていたLIQさんというヒトが、大阪に行くので一緒に喋りましょうと云うことで心斎橋で会うことになった。
 LIQさんは『頭部』というアックスのデビュー作を読んで、フアンになってくれたそうである。コーヒーを飲んで色々話した。よい青年だった。

5月20日

 妻が「ダヲコってあのDAOKO?」と云うのでどうしたのかと訊くとTwitterでフォローされたそうである。見ると11万人もフォロワーがいるヒトで、同世代のヒトだそうである。
 妻は大学のときから知っていたそうで、自分は失礼ながら知らなかった。「私はこの曲が好き」と云うのでYouTubeを開くと、とても再生されている。米津玄師との共同の歌など五億も再生されている。絶対聴いたことあるよと云うので聴くと、確かにどこかで聴いたことがあったので驚いた。

5月23日

 妻が鍋で石を煮ている。よい形の石を集めるのが好きなのだそうだ。自分も石が好きだ。
 最近は鳥ブームがきたそうだ。外から聞こえる鳥の鳴き声で、「あれはムクドリかな」なんて云うている。自分もその影響で、耳相撲やと云うて、無数の鳥の鳴き声を覚えようとしている。そういうことだけが漫画を描くために重要なことだ。

 自分には万葉集ブームが来た。奈良県民は万葉集の特権的な読者だ。気がついたら奈良のことばかり考えている。
 古代人の言霊を求めて、奈良にある日本最古の道、山の辺の道を歩くことにした。妻は双眼鏡と鳥図鑑を持っていった。
 天理教の本拠地から、石上神宮へ、そこから山の辺の道を歩いて、檜原神社、大神神社まで歩いた。昼から夕方まで二万八千歩も歩いた。

 大小さまざまな古墳、万葉歌碑、ウシガエル、かたつむり、猫三匹、太いミミズの死骸、カラスがほじくっていた蓑虫の蓑、沢山の時計草、エナガの巣、お気に入りの場所から離れないカワラヒワ、鳥の鳴き声を聴くうちに漠然と「鳥の鳴き声」だった音の概念は「モズのさえずり」や「コゲラの地鳴き」になった。
 鳥たちは、じっくり見ているとそれぞれに個性があることが分かった。
 山の辺の道の時間の流れは特別だった。あらゆるものが輝いていた。

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