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EQの切り離しと押し上げ

今回は中級者から上級者へ向けて、
EQの切り離しと押し上げについて書いていきたいと思います。

Riverではその後のRun outsがないという性質があるため
TurnやFlopとは戦略構築の視点を変える必要があります。

多くの場合toygameというものを想定して均衡を解釈することになりますが、今回は均衡理解の少し難しいspotを理解するために、様々な知識を説明していこうと思います。

またその中でEQ graphやEQの読み取りに対する知見を取り入れます。

当記事では
GTOWizard 6max 100bb 50nl GTO-GTO
を採用しています。


Main Case

まずは今回取り扱うspotについて説明をしていきます。
筆者が友人と座学をしていく中で話題になったspotです。

BTN openにBBでcallをし
FlopはQ95tt
50%cbに対しcallを選択します。

TurnではQが落ち、50%ダブルバレルにXRを選択したとします。

さてRiverで8cが落ちた場合
BBはレンジ全体でどのような戦略をとるべきでしょう?
どの様なレンジをbetしますか?
どの様なsizeを選択しますか?
じっくりまず自分で考えてみてください。



このスポットを理解するためにまずは両者のEQがどのようになっているかを理解する必要があります。

・均衡状況の理解

まずBBはBTNのcbにFlopでcallしています
この時点で単純なtrashは放棄しています

さらにBBはTurn XRを選択しましたね。

この状況で9や5をXRすることはなく
valueとして最低でもQのtripsが必要です。
BluffとしてはFD及びSD(特にopen endもしくはcombo drawとなりますね)を選定しています。
色なしのハイカード系はFlop CBにcallしていないのでK4などのraiseはFDとなります。

さてこのrangeでraiseをしてRiverで8cが落ちるとどうなるでしょうか?
Bluffとして選択していたFD SDがすべて完成します。
Valueハンドはそもそも強いのでBBは持ちうるすべてのハンドが基本的にTrips+となっています。

一方でBTNはどうでしょう。
DBを打ってraiseを食らってcallしたので
trashは無いはずです。

もちろんFlushやQもありますがTurnではマージナルと判定された9やpocket pairがdefenceをしていることでしょう。

つまりRiverは完全な雑魚レンジはないですがBBのtrips onlyレンジに比べると弱いハンドが残っている状況です。

上のグラフはRiverのEQグラフです。
BBは圧倒的なrange EQを持っており
BTNのTurn時点マージナルは不幸にも相手の全てにまくられたためtrashとなっています。

さて、ではOOPがとるべき戦略はどうなるでしょうか?
今一度戦略を考えてみてください。
range EQがあるときはrange betを行う
ので最低限range bet(及び強いところを分岐してlargeも?)と考えるでしょうか?
実際筆者の周りでは
Range EQがあるのでrange betは最低限
という論調が多かったです。

ところが実際のOOPの戦略は

低頻度極小bet・ほとんどがチェックです。
BBはrangeの多くが強化され圧倒的なレンジEQがあるにもかかわらずほとんどbetを行いません。

前置きが長くなりましたが
今回はこの戦略を理解することが目標となります。
さてこのMain Caseを理解するためにいくつかのCaseを予習しましょう。

Case1 EQによるrange bet

さて今回
Range EQがあるのでrange betは最低限
という誤認がありました。
この点を訂正するため実際にrange EQがあるからrange betという場面を見ていきましょう

Case1 UTG vs BB KK5 cb

該当のspotではutgのレンジEQは63%を超えており
レンジEQを持って全レンジで33% betを行っています。

このような場面はFlopCBに限らずよく見られます
さて、どうして今回はRange betが使用できないのでしょうか?

それはRiverという特殊spotがFlopやTurnと異なることが要因です。
Riverでの相手のTrashはEQが真の0に近いです。
一方でFlopやTurnではまだボードが開ききっていないためtrashも一定のEQを持っています。
後者のような場面では相手のTrashを捨てさせる。すなわちEQを放棄させることに一定の価値があります。
Riverは良くも悪くもEQは確定していますのでEQを放棄させることを目的としたrange betを採用することはありません

range EQがあるからrange betというのは多くの場合正しいですが、
Riverというspotでは持ち込むべき考え方ではなく
相手のIndifferentをしっかり見据えて打つことが大切です。

Case2 01game

Riverでrange EQがある場合はどのように考えてbet sizeを選択するべきなのか。そのことを理解するために一度脱線し非常に基本的な01gameについてCase2として簡単に説明をします

Case2-1 01 toygame

このgameはtoy gameと呼ばれるものの中で基本的かつ実用的なmodel
OOP IPはそれぞれ0~1の乱数からひとつづつの乱数を渡されます。
0が一番弱く1が一番強いとします。

OOP 0.91
IP 0.23
が与えられたとしましょう。
Bet sizeは100%までが許されており
raise SizeはAll inのみ
かつSPRは1とします。

この時OOPはどのように戦略を組むべきでしょうか?
このToy gameを知らない人はいったん考えてみてください。

強い数字を持ってるときはValue betを打ちたいですし
弱い数字を持ってるときはBluff betを打ちたいでしょう。
マージナルはチェックでSDを目指したいですね。

このモデルを理解するため以下のようにSolverにinputします。

ボードをAAA23としてKQから64までハンドをお互いがスートを被ることがないようにレンジ構築します。(KQ64gameと呼ばれることもあるようです。ほかの実装としては22233ボードでAA~44のポケットとしてもかまいません。)

Hi card同士の勝負となり強いハイカードが01 gameでいう1の役割を果たしています。

EQ graphは完全に一致しておりいろんな強さのハンドがありますね!

ではRunして実際の戦略を大まかにみると

EQ75%over : 全サイズ混合
EQ75% : 80%betonly
EQ70% : 60%betonly
EQ65% : 40%betonly
EQ60% : 20%betonly
EQ25%~55% : checkonly
EQ25%under : 全サイズ混合(bluff)

となっています。
Nutsを各サイズのnodeにおけるTrapに残し、bluffは全サイズ。残りはEQに従順に特定のsize(checkは0%betとみなす)をマストで打ちます

このような構成にすることでEVを最大化しつつすべてのbetにBluffとtrapを含めて打つことができています。

Case2-2 実践的01構築

BTN vs BB SRPで上のボードがFull checkで回った場合を考えてみましょう。

お互いいろんな強さのハンドを持っており01gameのような分布になっていることが分かります。
もちろんここでOOPは01likeにbetを行います。

01らしさを見るには以下の図が分かりやすいかもしれません。

このマンハッタングラフでは左側にEQの低いハンド、右に強いハンドと整列しています。

EQ75%over : 全サイズ混合
EQ75% : 80%betonly
EQ70% : 60%betonly
EQ65% : 40%betonly
EQ60% : 20%betonly
EQ25%~55% : checkonly
EQ25%under : 全サイズ混合(bluff)

という01likeな構成が見て取れるのではないでしょうか?

このcase2を通じて01likeな戦略というのが理解できたでしょうか?
ここからCase3へと入りますがこれまでの知識が必要となりますので再度確認をお願いします。

Case3 EQの押し上げ

さて話を戻してMain Caseを理解するためにRiverでrange EQがある場合はどのように考えてbet sizeを選択するべきなのかを考えていきます。
(FlopやTurnではrange betすることが多いのでしたね!!)

そのために次のCaseを使用して説明しましょう。

Riverでrange betを行えるくらいrange EQがある例として
Riverより前でrange EQがあるにもかかわらずcheckで進行した場合があります。

Case3 3bp full checked River

上のspotを考えてみます。

SB vs BTN 3bp
Q86AQ
Flop Turn full check

このスポットでSBのTurn戦略は以下の通りです

AとQという3bettorのトラッシュを強化するようなカードが2枚落ちたことによりTurnのCB頻度は高いです。
一方でマージナルももちろんあるためチェックも選択します。
IPはこのチェックに対してpolarなレンジで75%程度のbetを選択しますがcheckで進むこともあるでしょう。
このような場合RiverではTurnのrange EQを持ち越しているため

range EQを持っています。Main Caseに近く相手のTrashも多く存在していることが分かりますね。

ここでもOOPはこのrange EQをもってEQを放棄させるためのrange betを採用していないことが分かります。

上の図はこのスポットでのマンハッタングラフです。
01likeな構築をしていることが読み取れませんか?

このスポットはEQをおしつけたrange betをするというよりむしろ
01 likeな打ち出しをしているわけです。

さて、今一度EQ graphを確認してください。
EQ graphは01とは似ても似つかないです。なぜこのrange EQが出てくるspotで01likeに打つのでしょうか?

これを理解するためEQの切り離しEQの押し上げという概念について説明をしましょう。

・EQの切り離し

さてEQ graphにおけるEQが真0に近いレンジに目を向けてあげましょう。
これらのIPハンドはbetに直面した際、どのようにアクションをしますか?

まれにbluff raiseに走ることはありますが基本的にFoldを選択します。
(なぜなら基本的に負けているからですね。)

上の頻度はOOP10%betに直面した際のIPのレンジアクション頻度です。
22.3%をfoldしておりMDFを守っていないことが分かります。

つまりIPはこの真0EQに近いtrash帯をそもそも抵抗する気力はなくどうせ捨てるというような心構えで対抗してきます。

OOPはこのことを念頭に戦略を組む必要があります。

IPは黄色部分を切り離したレンジを抵抗してきます。

OOPから見れば、IPの真0EQ部分を切り離した右側のレンジが相手の拮抗レンジでありこのレンジを相手が持っていると判断して戦略を組む必要があったわけです。
切り離し後のEQgraphは拮抗レンジを切り離した左端をレンジ下限と見直し描きなおすため

figure 1

黄線のレンジが近いでしょう。これをFigure1としておきます。
つまり相手の拮抗レンジを想定して戦略を立てるということですね。

さてこのEQ graphにはさらなる修正を加える必要があります。
それがEQの押し上げです。

・EQの押し上げ

先ほどまで緑線の訂正について議論してきましたが
今度は赤線について着目します。

赤線は相手のrange EQに対しplotされています
実際は拮抗レンジに対するEQのplotを持って戦略を組む必要があります。
拮抗レンジはもちろんnode突入時のレンジより強いです。

つまり切り離し部分のレンジが赤線を不当に押し上げ、見かけ上のEQを高めているわけです。
拮抗レンジに対するEQgraphはこの押し上げの分下降します。

Figure 2

Figure 2に書いた黄線は赤線のEQ押し上げ分を差し戻したgraphです。

RiverはEQを持って戦略を組みますが、そのとき
Figure1 vs Figure2のgraphを持って戦略を組みます
(頭の中や紙とペンでイメージしてください。)

するとお互いに様々な強さを持ったハンドが強いところから弱いところまで分布しているので01likeな戦略を組むわけです。

これがCase 3の実態でした。

このEQ押し上げによる不当なEQの向上はハンドEQを見る事にも影響を与えます。
上の表ではEQを表示しています。
AhitのようなEQ60%を超えるハンドがBlock betを打っていないのは
相手の拮抗レンジに対してはここまでのEQがないから
です。

Main Case へ立ち戻る

さて、すべての準備が整いました。
Main Caseへと立ち戻り戦略を理解しましょう。
(今一度Main caseを思い出してください。)

上のグラフの真0EQ部分を切り離し
押し上げ分を下降してみてください

すると緑線がpolarを持ち
赤線はマージナルの集合です。

このことからRiverはBBがrange EQを持つにもかかわらず
IP polarのAKQgameが近いということが分かります。

であればOOP check IP polarとなりますね。

実際IPはOOPのチェックに対し

tripsまでBluffに変えたJamを選択しています。

Case4 亜形Donk Jam

最後にもう少し難しいspotを見てみます。

UTG vs BB のダブルバレルにcallしRiverでFlush comp かつ1枚Straightとなったシチュエーションです。

このスポットではOOPはDonkでJamを選択します。

OOPは2度callしたのちにDrawすべてが完成したので

trashがなくrange EQがあります。
しかし切り離しと押し上げ修正をした後は
BBがPolarなレンジを持つ
ことが分かると思います。
このcaseはメインCaseと対称にOOP polarのAKQが近いわけですね。

実際OOPは20%以上EQがある2 pairをbluffに変えDonk Jamをしているわけです。

総括

ここまで様々なcaseを見てみました。
Case1は誤解の修正
Case2はCase3への前提知識として持ってきましたが
Case3,4とMain Caseは全てEQの押し上げにより直感的でない戦略が提示されています。

其々のCaseにおける発生要件と修正後modelを見てみましょう。

発生要件
Case3
 Turn時点でのRange EQをRiverへ持ち込んだ
Case4
 River Cardの影響によりtrashが消えた
Main Case
 River Cardの影響によりtrashが消えた

修正後model
Case3
 01game
Case4
 OOP polar AKQgame
Main Case
 IP polar AKQgame

このようにRiver range EQがあるというだけではRiverの戦略は決まりませんし、よしんば発生条件が同じでもその戦略は全く対照的である場合まで存在します。

Riverはこれらの概念をすべて理解し、正しいrange構築をすることで初めて均衡が理解できるわけです。

余談ですがCase3のようなTurn range EQの持ち込みは均衡ではレアです。
Turnまででrange EQがあればrange betを採用していることが多いので。

最後に

ここまでお読みくださりありがとうございました。
これらのspotは各種友人のプレーラインやレビューをみて筆者が指摘したものになります。
今回は少し毛色をかえて実践のレビューでの難しい点から知識をinputしていくような形態でした。

このような整理をしながら行う座学は単純な均衡レビューより圧倒的に力になると信じています。

皆さんの座学ライフに彩りを!!

今回もかなりの長文でした。
有料にするか悩みましたが今回も全編無料公開となっています。知らない視点が得られたという方は少しでもいいのでお布施などして頂けると励みになります。無料で記事を出すモチベーションが保てるのは偏に応援して下さる皆さんのおかげです。

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