旅5日目 美術工芸作家 竹内洪さんに会う
出会いのきっかけ
茨木市に移動。友人宅を拠点に動いた。
まずは茨木市立キリシタン遺物資料館へ
資料館の隣にかの有名なザビエルの心臓に十字架が刺さってる絵が見つかったとのこと。今年がキリシタン遺物発見100周年ということで、冊子をいただいた。布教の中心になったようです。
その後、お隣のポピーという喫茶店で、ママさんから「竹内洪さんの公房が近くにあるから行ってみたら」と勧められました。「シャッターが閉まっていたら居ってないかもしれへんけれど、その横にあるインターホンを押して居ってやったら話が聞けると思うわ。おしゃべり好きの人だから(笑)」と言われ、突撃だけど訪ねてみることに。
事前にどのような人なのかネットで調べてみた。☞ウィキペディア、茨木市産業情報サイト、講演の達人サイト
なんだかすごい人のようだ。サンドブラストの世界的なジャンルを確立した開発者とのこと。どのような経緯があって開発したのかなど、お会いして聞いてみたいという気持ちがどんどん膨らんでいく。
あっ。閉まってた・・・
車を降りてみたら、中からラジオなのか、テレビなのか音が聞こえてくるってことで、その横のインターホンを押してみたら。
『はいはい、どちらさま?』
私の素性なんて全く分からないはずなのに、竹内さんはわざわざ外まで出てきてくださって、工房の中へ招き入れてくださった。
まずは簡単に自己紹介をして、Goodwill Forestを創るためにヒントを探す旅に出ていることをお伝えした。芸術家と聞いていたので、こだわりが強そうな頑固な人をイメージしていたら、とってもお話が面白くて笑顔が素敵なおじさまでした。
サンドブラストとは?
最初に見せてくださったのはこちら
これがサンドブラスト。砂を打ち付けてガラスにデザインを施す。とっても繊細できれい。よく見かけるこの手法を開発されたというのだからすごい。世界にお弟子さんがたくさんいらっしゃるという。
実はこれ、割れたコップとのこと。
今は、壊れてしまったら捨てるだけ。けれどこのようにデザインを施すと、新しい価値が生まれるでしょう。
ここにも物を大切にする心があるなぁと、私はこの考え方がとっても好きだ。捨てて新しいものを購入するのではなく、直して使う、別のデザインを施す、別の役割を与えるなど、新しい命を吹き込むことを聞いていると、嬉しくなってしまう。
冒頭で、お人柄と価値観に引き込まれてしまった。
サンドブラスト開発に至るまでの話
もともとカメイガラスでデザイナーとして活躍されていたとのこと。新しい商品の開発の事ばかりを考える毎日。ずーっとそればっかり考えていたら、ある日、照明屋に入ったときにヒントを得て閃いた。テスト的にタンブラーにデザインを施したら、それが大ヒットしたとのこと。
その技法をさらに極めようと、海外へ。多くの国の工場を渡り歩き、イタリーにある工場でヒントを得て、ガラスの外被せ(そときせ)を何層にも重ねて色をグラデーションにすることを可能にされたとのこと。
(外被せとは、江戸切子などにみられるガラスに一層色を付ける技法)
そうしてできたのが、冒頭の写真
何層も重ねた後、丁寧に削っていくとこのようにグラデーションで色が生まれてくるとのこと。なんて美しいのだろう。
これに成功して、その後、作家として独立。
デザイナーと作家は似て非なるもの
デザイナーはユーザーの求める物を創り出す。
作家は自分の満足するものを創り出す
竹内氏が創り出すのは美術工芸品。
美術工芸品は、美術=鑑賞に堪え、工芸品=日常的に使うモノであること
『これを私は作っているんですよ。』
文字の小さな取扱説明書の冊子を手渡してくださって、このデザイナーはユーザーの事は考えていないと。便利な道具を使うのは、若者だけでなく、お年寄りも多いことが分かっていないとおっしゃる言葉は、納得がいく。
デザイナーに必要なコトは、情報を取りに行くこと~人の話を聞くこと~
竹内さんがされたことは、お勤めされていたデザイナー時代に、多くの工場に足しげく通われて話を聞きに行ったとのことでした。それぞれの得意とするものが各工場にはあって、工場で働く人が何を求めているか聞いて、カットなど工場で体験させてもらって、どのようにしたら工場の人達が能率よく良い製品を生み出すことができるかを理解して、負担がかからないようにデザインを起こすことをされていたそうです。大きな工場では、デザイナーは職人任せ手にしていることが多くて、それをやらないデザイナーが実は多いんですよと。
人と関わり話をし、情報を拾っていくこと。相手のためにどのように自分が振舞えるかを考えて、協力して作り上げていくことの大切さを教えていただきました。
素敵な紳士は、時間の許す限りお話してくださいました。
有難い出会いに感謝。
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