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アナロジー思考でアイデアを組み合わせる

メンバーズグッドコミュニケーションズカンパニー(GC)の山根です。今回は、日々の業務に広く応用できる「アナロジー思考」について紹介したいと思います。

アナロジー思考とは

「アナロジー」は「デジタル大辞泉」によると「類推」と定義されています。

そして、『アナロジー思考(細谷功 著)』での説明をざっくりまとめると、すでに知っていることや経験したことを抽象化・法則化し、未知の事象を当てはめて応用するのがアナロジー思考です。一見関係やつながりのない事象から「類推」します。

こう聞くと抽象的でよく分からないと思われるかもしれませんが、意識的あるいは無意識的に日常や仕事で使っている思考法なのではないでしょうか。

喩え話をよく用いるような方は、アナロジー思考を駆使していると言えます。よくある例としては、「失敗してもトライするのが大事」といったメッセージを伝えるにあたり、野球に喩えて「まずは打席に立て(打席に立たないとヒットは打てない、結果が出ない)」といったところです。

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また、やや狭義のアナロジー思考ではありますが、転職した際に新しい職場の申請周りやワークフロー等を理解するために前職までの経験を当てはめる(この場合、「参照する」に近いですが)方も多いのではないでしょうか。転職に限らず、新しい環境に直面すると似たような経験を参照し、未知の事象に対してパズルのように当てはめることでスムーズに適応できます。


アナロジーは「関係」や「構造」を当てはめる

アナロジーは、一見すると似ていないものごとから「類推」することですが、「一見すると似ていない」という部分がポイントです。見た目が似ていて表面的に真似するのは「パクリ」ですが、アナロジーでは目に見えない関係や構造を応用します。

表面的な「パクリ」では、単に成功事例を真似しても前提条件等が異なるので失敗に終わる可能性が高くなりますが、「関係」や「構造」レベルで分析(その過程で抽象化)することで、どのように「当てはめる」べきかが見えてきます。

『アナロジー思考』では、例として「かばん」と「予算管理」のアナロジーを挙げています。一見すると何のつながりのない両者ですが、それぞれの構造に目を向けるを「(空間なりお金なりを)区切って収納・管理する」という共通点が浮かびます。かばんのスペースの区切り方に応じたメリット・デメリットを考えることで、予算管理方法への気づきを得ることが可能になります。


アナロジー思考を用いる目的

ビジネスでアナロジー思考を用いる目的としては大きく以下の3つに集約されると『アナロジー思考』のなかでも述べられています。

①新しい事象に対して、自分の理解を深める
②相手への説明を分かりやすく行う
③新しい発想に役立てる

それぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

①新しい事象に対して、自分の理解を深める
こちらはあまり説明する余地もないでしょう。理論上、インプットや経験が多い人ほどアナロジーの引き出す元となる「ベース領域」が多くなり、新しい事象に対して効果的に応用する精度も上がると思います。

②相手への説明を分かりやすく行う
個人的にも難しいと思う使い方がこちらです。特に管理職など部下をたくさん抱える方にとって、重要度の高い使い方と言えるかもしれません。

何らかのターゲット領域に関して他者への説明にアナロジーを用いて理解を深めてもらうのが目的ですが、応用する元(ベース領域)の選定によって目的を達成できるかどうかが大きく変わります。説明する相手に馴染みのあるベース領域を選ばなければ、余計に混乱してしまうかもしれません。

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つまり、理解してもらいたい内容と「相手の知識や経験を加味して何に喩えるべきか」の最適な組み合わせを判断する必要があるという意味で、難易度が上がるのだと思います。

③新しい発想に役立てる
斬新なアイデアも、ほとんどが既存のアイデアの組み合わせであることはよく知られているところです。情報社会で良いサービスであるほど真似されやすい環境の中で、”遠い世界”からアイデアを借りることができれば、真似されにくくて価値のあるアイデア創出につながります。


アナロジー思考の活用法

これまでの内容を踏まえながら、日々の生活や業務で活用するイメージができるよう、もう少し具体的な活用法について紹介してみたいと思います。

アナログからデジタルにアイデアを”輸入”する
Webサイトやアプリによるサービスが盛んになり、そのUXについて考える方も増えているのではないでしょうか。ユーザーが流入してくる状況や心理などを踏まえながら、どんな情報や導線を設けるべきか、といった一連の体験を検討するあたり、リアルな店舗にまで視野を広げてみると、新しい発見を得られるかもしれません。

自社のWebサイト上で様々な機能やコンテンツがあり、ユーザーが混乱しているという課題があったとします。似たようなWebサイトを参考にするのも一つですが、たとえば取り扱い製品の多い大型のスーパーやドラッグストアなどを分析してみると、何か有効なアイデアにつながる可能性があります。

リアル店舗だと建物の制約を受けるという相違点も踏まえながら、

・入口付近にはどのような製品や案内があるのか
・どのようにカテゴリを整理し、入口からの導線が設計されているか
・そのカテゴリの製品は、目的買いの顧客が多いのか、ついで買いの顧客が多いのか

といった観点で整理してみると、Webサイトやアプリの設計に応用できそうなポイントを抽出できるかもしれません。

※ここでは「アナログからデジタル」という視点で書きましたが、逆に「デジタルからアナログ」という使い方もあるでしょう。

競合(他社)調査の対象を広げて考える
何かサービスを作ったり、施策を考えたりする際に避けて通れないのが競合や他社の調査です。ベンチマークや提案内容を裏付けるものとして、情報を収集して分析することも多いのではないでしょうか。

ネットには様々な情報が溢れ、直接的な競合の施策や成功事例が載っていることも珍しくありません。しかし、プロダクトそのもので差別化を図るのが難しくなっている時代に、直接的な競合をベンチマークにすると、なおさら同質化が進んでしまいます。

そこで「アナロジー思考」の出番です。共通点の抜き出し方を工夫することで、参考にできる対象が広がります。

例えば、「アパレルのECサイトでユーザーが買いたい商品を選びにくく、離脱が多い」という課題に対する改善施策を考えるとします。ストレートに行けば、分析の一環で上手く行っている直接競合のアパレルECサイトを分析することになりますが、一時的に改善される可能性はあるものの根本的な解決にはなりにくく、改善の効果も長続きしないかもしれません。

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一方、「(デジタル空間で)コンテンツを選ぶ」というように抽象化してみると、近年勢いのあるNetflixを始めとしたVOD(ビデオオンデマンド)サービスやYoutube、音楽配信・音声配信サービスなどが視野に入ってきます。

自社や分析対象のサービスが「目的買い(指名検索)」が多いのか、ザッピング的な要素も含まれるのかなど、ユーザー嗜好の違いなども意識しながら、共通点と相違点を明確にすることで、アナロジーとして「応用」が可能になるでしょう。

まとめ

ここまで、「アナロジー思考」について色々と述べてきましたが、私自身もまだまだ使いこなせている実感はありません。しかし、アナロジー思考を理解し、意識しておくだけでも日々の生活や仕事での”発見”が増えると思います。

今までは自分の業務や業界に全く関係がないと思ってスルーしていたような事象やニュースでも、抽象化したり構造化することでアナロジーとして転用できるかもしれません。そう思うと、アンテナの張り方も変わってくるでしょう。

使いこなすのは難しいですが、日々少しずつでも意識して実践してみてはいかがでしょうか。

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