「義務BUMP理論」とは

僕がギターを始めた理由。
それは、2017年にある男に出会ってしまったからである。

母が買ったままにしていた20年前のヤマハのアコギを手に取り、錆まみれの弦で半音下げのGフォームを鳴らした日のことは、まだ覚えている。僕の中学生時代は、BUMP OF CHICKENというバンドとともにあった。

それほどまでにBUMP OF CHICKENが好きな僕が、彼らを貶す理論を腹の内
に抱えている。

それこそが、「義務BUMP理論」である。

僕はBUMPを大きく4つの時代に分けて考える。

CD製作前、FLAME VEIN、THE LIVING DEAD:インディーズ時代
jupiter、ユグドラシル、orbital period:BUMPトラッド時代
COSMONAUT、RAY(一部)、Butterflies(一部):BUMPポップス時代
RAY(一部)、Butterflies(一部)、現在:義務BUMP時代

言いたいことはいろいろあると思うが、いったん話を聞いてほしい。そして、4つ目の時代区分に関しては皆承知してくれるはずだ。すなわち、今のBUMP OF CHICKENは、BUMP OF CHICKENを演じる4人のおじさんだと僕は思っている。

インディーズ時代から着々と人気を集めていたBUMP OF CHICKENは、3rd single「天体観測」で爆発的なヒットをつかむ。

その後のトラッド時代は、勢いだけの仲良しバンドから多少なりともプロ意識を持ったバンドへの変化はありつつも、根幹のナイーヴな部分がよく表れた時期だ(これを以て、僕はここがBUMPのトラッド時代だと思っている)。

大きな変化があらわれたのはCOSMONAUTだ。

15枚目のシングル「R.I.P./Merry Christmas」で、藤原基央の歌い方は大幅に変わる。それまでは「がなる」ような歌い方をしていたが(特にホームシック衛星のころの飴玉の唄の映像などは絶頂モノである)、orbital 末期、COSMONAUT期にはやさしくこなれた歌い方になる。ここに文句を言う人もいるが、僕は嫌いではない。ちなみにBUMPで一番好きなアルバムはCOSMONAOUTだ。

変化したのは歌い方だけではない。これはあくまでも印象の面も大きいが、COSMONAUT期の楽曲の歌詞は全体的に「リスナー」をすごく意識している気がするのだ。THE LIVING DEADの物語形式などもそれに近い気はするが、比較的に婉曲が減ってくる。

RAYやButterfliesの一部楽曲で、ついに彼らは一線を越えた、と僕は思う。
無責任な、自分の手を離れた応援ソングが多くなった気がする。一人ぼっちで河川敷でシクシク泣いていると隣に座ってきて、いつものGibson J-45を取り出して、ぼそぼそ温かい言葉をかけてくれて、帰りに一緒にラーメン食べて、あんまおいしくないけどまあそういう日もあるよな、じゃ、また頑張ろうな明日から、って言ってくれる、俺たちの藤原基央がいない。ステージの上から、「君たち、元気になあれ」ってヘンな言葉を放っているようにしか思えない。ちょっと言いすぎか。

ともあれ、彼らは「僕」への歌から「僕たち」への歌を描くようになったと感じるのがこの時期だ。それで終わればまあ、「年を取ったってことかな」と思える。


しかし、それでは終わらない。
それまで一切出演しなかったMステへ出たり、企画先行のタイアップを増やしたり、彼らはポップス街道を歩いていく。

そうして発売されたaurora arc のタイアップ楽曲率は11/14。のちに発表された結婚を匂わせる「新世界」の歌詞や、「Aurora」のラスサビ前のクソダサクラップ、「シリウス」に感じる「Hello,world!」のデジャヴ感。

僕に響いた「ジャングルジム」「流れ星の正体」は、やはり藤原基央の「1対1感」が如実に表れた楽曲だった。

はぁ。

それから先、僕はBUMP OF CHICKENの新曲をだんだんと気にしなくなった。最近は何かの主題歌とかそういうのがないと曲を出さない。もう、彼らにとってシングルを出すのは仕事でしかない。義務なのだ。スパイと殺し屋と超能力者が出てくるアニメのオープニングが流れたときは、顔が引きつった。

やさしい言葉で、みんなに向けて、何かの主題歌として曲を出す。
これがBUMP OF CHICKENのやることか、と言いたくなった。これじゃ、義務で音楽やってるだけじゃないか。

これが、義務BUMP理論だ。理論じゃないな。ただの感想だ。でも理論って呼んだ方が面白いからそうしとこう。
大事なことはひとつ。今のBUMPは「義務」だ。
僕はもう、彼らの新しい曲は聴かないだろう。

それでも、僕をめくるめく音楽の世界へと引きずり込んだのは間違いなく藤原基央だ。BUMP OF CHICKENがなければ、今ほど楽しい人生は歩んでいなかっただろう。

ありがとう、藤原基央。そして安らかに音楽をやめてくれ。

今日寝るときは、「ギルド」でも聞いてほしい。アレの歌詞を弦交換とたばこ休憩しながら書いていたあんたのこと、覚えててくれたら嬉しいな。

2023年11月1日

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