3415 TOKYOBASE2015.1月期のシナリオ考察


今回はこれまでのTOKYOBASEの説明や苦戦しているかのように見える現状を踏まえて推測される今後のシナリオを考察していきます。
今後のシナリオを考える上では今まで説明されてきたことを拾ってつなげていく必要があります。そこで、今までどのようなことが言われてきて、現状をどうしようとしているのかを考えていきます。


事前にされていた説明①新業態の立ち上げ

2024.1月期の通期決算説明において、2025.1月期に新業態を2つ稼働させることが示されました。
その内1つはセレクト業態でSTUDIOUSよりもさらに若い年齢層をターゲットに展開するとされており、もう1つはレディースのオリジナルブランドで元ギャルが出産などのライフステージの変化によりコンサバにシフトするという前提で作られるものです。
2015.1月期のシナリオを考察するうえで、まず欠かせないのがこの計画になります。

事前にされていた説明②低価格帯マーケットには展開しない

以前から谷社長は、安い価格帯では勝負しないと話していました。
EC事業を行うにあたっても、EC専用の安い商品を展開することがセオリーだけれども目指してるブランドの方向性とは異なることから、そうはしない、説明されてきました。

このこともシナリオを考察するうえで大事なことになります。

事前にされていた説明③実店舗で稼ぐビジネスモデル

誤解を恐れず言えば、谷社長は、ECで売れるものとは結局安いものである、というような考えを示しています。
そして、今のECの在り方を俯瞰して見ても、実店舗がライセンスブランド化しており、ECで売上を刈り取っているだけではないか、としています。そして、高いEC化率は異常ではないか、とも考えています。

確かに、実店舗で商品を見て、その場でネットでどこが安いかを検索して、店舗では買わずに1番安いサイトや使い慣れたサイトで購入するという流れは多くのユーザーがやっていることです。

一方で谷社長は、実店舗でしっかり稼ぐことを重視しています。また、10年ほど前にどうやって高い価格の服を売るのかについても少し触れていて、その時には、
付加価値を最大限に伝えるため品質だけでなくデザイナーの歴史や思想まで価値として提供しなければならない
としています。


これらはつまり、
TOKYO BASEで扱うものは高いものであり、ECやユニクロのように黙っていても売れるものではない。だから社員が客に商品の魅力を伝え
、価値を理解してもらうことで価格を納得させるプロセスが必要である。
というような思想があるのではないでしょうか。

さらに言えば、ブランドロイヤリティを高めていくには、実店舗に加えてブランド価値や商品価値を伝える営業マン(販売員)が必要だと考えているはずです。
営業マンに求められていることはこのほかにも多岐に亘ることが有価証券報告書にも書かれていますが、だからこそ、優秀な社員は重要な存在であり高い給料水準で社員に報いているのでしょう。

長くなりましたが、ブランドロイヤリティを高めていくにはECではなく実店舗と営業マン(販売員)が重要な役割を果たす、という考えを持っているということが、今期のシナリオ考察に大事な視点になります。

事前にされていた説明④2025.1月期は翌期以降の成長基盤を盤石にする期間

2025.1月期というのは、決算説明資料によるとこう書かれています。
案外さらっと読まれそうな、さりげない一言に思えます。
ですが、ただ新規出店を行い、中国の不採算店舗を退店したら翌期以降の成長が盤石になるでしょうか。

なぜ、翌期以降の成長が盤石になると説明したのでしょうか。

おそらく、次期以降の成長を盤石にするために行ったことは値上げです。

この値上げも今期のシナリオを考察する上での要因となります。

事前にされていた説明⑤STUDIOUSを起点として展開する

全ての道はローマに通ずる、みたいな考えなのですが、STUDIOUSには若くファッション感度が極めて高いお客が集まります。
これを長期間育てていくと、例えば顧客の年齢がSTUDIOUSと合わなくなっていく、ある程度の規模に成長すると年齢層を広げないと頭打ちする、STUDIOUSで得た資金でSPA業態が本格的に稼働できるようになる、といったことで事業に自ずと広がりが生まれてきます。
個人的にSTUDIOUSとは、

ファッションに関心があり勉強して感度が高まってファッションに対する価値に深い理解がある客が通過するチャネル

だと考えています。

2025.1月期の6月までの状況

2024.7.4現在6月度の月次速報までが確定しております。

ここまでで分かったことは、

  1. 値引き抑制しかつ値上げにより客単価、値入率が向上した

  2. 1を踏まえて実店舗は売上高が増加している

  3. 一方でECの売上高は50%まで低下している。また客数も40%まで低下した。

  4. 3のような状況ではあるが値下げはしないし、値引き抑制は継続

ということです。

それでは事前の説明と繋げていきます。

シナリオ考察

まず新業態を考えますと、セレクトの方はSTUDIOUSより若い年齢層がターゲットであることが説明されています。
したがって価格帯はブランドの中で1番低いところに据えるはずです。
しかし、②にあるように低価格帯マーケットには展開しない、という方針があります。

ではどうしたか。

④で少し触れましたが、既存業態は値上げをしました。
つまり、既存業態は今までより高い価格帯のマーケットにシフトしたことになります。
その結果、先ほど触れたように、特にECで客離れが起きているのですが、これから先はひとつ上がった価格帯で新規客を獲得していくことになります。

一方で、今まで展開していた価格帯のマーケットに空白地帯ができますので、そこに新業態を展開する、ということになるでしょう。
そこで、既存ブランドから離れた客を再度取り込んでいく。これが当面の新業態の果たす役割だと推察します。

そして、④を深掘りします。

なぜ次期以降の成長が盤石になるのか。

③で触れたようにTOKYOBASEは実店舗は異様に優れた販売力を確立しています。
そのため、客は実店舗のファンになりリピートして顧客へと姿を変えていきます。
今期値上げしたことで既存ブランドはより高い価格帯マーケットにシフトしたことで客の絶対数はより限られます。
しかし、レベルの高い人材を集めることで優れた実店舗を構築してきたことを考えれば、これからの成長も可能であると考えられます。

一方で、今まで成功してきた価格帯で新業態が動くのだとしたら、成長していくノウハウは蓄積されていると言えます。

このように考えると②で触れた低価格帯マーケットには展開しないという話とも矛盾が生じないと言えます。
既存ブランドを格上げする戦略を実現させれば確かに低価格帯マーケットに手をつけなくても事業拡大の余地は生まれます。

シナリオまとめ

今期はクーポンやタイムセール、ポイント還元の抑制に加えて値上げもしたことで客単価が増加する一方で客数が減少しています。
実店舗は高い販売力によって前年対比二桁増を維持していますが、ECは客数が40%まで低下する月も出るといった状況です。
しかし、会社側はECにおいて減収減益を織り込んでいることから、ある程度は想定済みだと考えられます。
そして、価格帯が高くなったことでより厳しいマーケットへシフトして既存ブランドはこれから成長していくことになりますが、実店舗ではそれが実現できる可能性があります。
一方でECにおいては、値上げしたことで空白地帯となった従来の価格帯に新業態を展開することで離れた客を再度取り込んでいくことが考えられます。
つまり、実店舗はより高い価格帯のマーケットに挑戦し成長を実現し、ECは事業領域を広げることで離れた客を再度取り込んでいくことや、未開拓の新規客を獲得することで成長していく、という構図が考えられます。
また長期的に見れば、新業態の顧客はSTUDIOUSに移行し、さらにSTUDIOUSからTHE TOKYOへ移行していくというビジネスモデルも回るかもしれません。

そうした国内実店舗とECの両輪で成長を図るのが次期ということになりますが、ECはさらに構造改革も進んでいくことになります。
ドメブラのモールのようなイメージの構想が紹介されていました。

これらを照らし合わせると新業態が始動するタイミングでECで離れた客の取り込みや新規客の獲得が始まり少しずつでも回復の兆しが現れるはずです。一方で実店舗は今までのノウハウを高い価格帯マーケットにぶつけて成長を続ける。

すなわち新業態が始動すると考えられる2025年10月頃から業績面での特にECの流れは変わりだす、と考えています。

今回は以上です。
随時、資料などを添付して見やすいようにしていきますので、よろしければたまに覗きに来てください。

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