伊東純也事案 加藤弁護士会見の意義(2024.07.02)

 本日、伊東純也選手の担当弁護士である加藤弁護士が、東京都内において記者会見を行った。
 これは、大阪府警が、伊東選手を準強制性交等致傷の疑いで、女性2人を虚偽告訴の疑いでそれぞれ書類送検したことを受けたものだという。
 今回の刑事事件は告訴事案であり、双方ともに告訴されている立場であれば、原則的に双方とも事件送致される。

 これまで、ゴールデンウイーク前に事件送致されるとか、5月末ごろに事件送致されたとか、大阪府警の刑事四課が担当しているとか、様々な情報がインターネット上に流れていたが、全て正確な情報ではなかった。
 ようやく、信頼できる情報が得られたが、この記者会見の意義を解説する。

その1 森保監督5月会見の趣旨

 森保監督は5月の会見の時に「結論から言うと、私の知っている限りでは3月から状況は変わらない。3月と同じで彼のために今回も招集をしなかった」と説明し、「ただ3月と状況は同じで、代表としてプレーする場合、また彼にプレッシャーがかかることが起こりうることと、彼の大切にしている人たちにもまたいろんな影響が出るということで招集を控えた」と言っていた。
 確かに、5月当時の状況としては、刑事事件は継続して捜査中のため未だに事件送致されず、民事事件は大阪から東京へ移送中との状態で、まだ、警察による刑事事件の捜査が終了していない状態であった。
 つまり、事件の結末はおおよそ予想できるものの不安定な状態であった。

 しかし、今回、大阪府警から検察庁宛に事件送致がなされたということが明らかになった。
 そしてこのことは、刑事事件捜査が最終段階に近づいたという意味になる。
 結論として、森保監督のいう3月・5月の段階から事態は大きく進展したのである。

 よくテレビに出ているコメンテーター弁護士が、この件を解説するのに、「警察が事件送致する際に、処罰に関する意見をどのように付するかが重要である」とか言っていたが、検察官が重要視するのは、そういう他愛もない点ではない。
 警察が起訴・不起訴を決定するのではないのだから、警察の意見が重要視されることはない。
 あくまでも、起訴して公判を維持できるか否か、客観的な物証がどの程度存在するかを再検討することになるだけだ。

 最終的に、本件刑事事件は不起訴となって終結することになるだろう。

その2 加藤弁護士記者会見の意味

 私は、事件送致された段階で、必ず、加藤弁護士が記者会見を開くと予想していた。
 その理由は、記者会見を開かないままの状態で、伊東純也選手がA代表等に選出されて試合に出場した場合、ここぞとばかりにマスコミの取材ラッシュを受ける可能性があるからだ。
 以前、加藤弁護士は、伊東純也選手の早期復帰が最大の目標と説明しておられた。
 しかし、加藤弁護士にしてみると、何の確信もないままに記者会見を行うということは、加藤弁護士ご自身の信用を失墜させることになりかねないのである。
 加藤弁護士は、これまで対応してきた感触としても、伊東純也選手の不起訴処分を十分に確信できたからこそ、今回の記者会見を開いたものと評価できる。
 つまり,この会見の意義は,
①伊東純也選手が国内外でサッカーの試合に出場することに関して、更に世論の支持を集める。
②伊東純也選手が代表に招集された場合や,日本代表として試合に出場する際,マスコミの取材からのストレスを軽減する。
というものである。
 そういう意味でも、この記者会見の意義は大きい。

その3 推定無罪の原則

無罪推定の原則とは、「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則である。
 広義では、有罪判決が確定するまでは、何人も犯罪者として取り扱われないことを意味し、その意味で、確定前に不利益な取り扱いを受けることは、基本的な人権を侵害することを意味する。
 本来、犯罪に問われた選手が、訴えを受けたという理由だけで試合に出場する権利を奪われるようなことは許されない。

 本件刑事事件も、さほど終結するまでに期間は必要ないと思われるが、このような状態になっているにもかかわらず、前回と同一の理由で代表招集を見送るとなると、森保監督は伊東選手の人権を私見で侵害するということになる。
 伊東純也選手の実力を認めるのであれば、代表に招集して、その判断を伊東選手に委ねるべきである。

以 上


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